良い子の為の絶望学

春川信子

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キャバクラより愛をこめて

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まぁ、楽な人生じゃなかった。
母親は、統合失調症、父はAV大好きな躁鬱病。
私は、自分の人生をゆるい不幸が最初から覆っているのに気がついていた。
幼心に、ここには頼れる大人はいないと悟っていた。
不幸をつらつら書き連ねたらそうとうな量になるから止めておく。
まぁいーや、おっぱーい!!
私は叫ぶ。
おっぱいはいい。キチガイ女にも、聖母のような女にも、等しくおっぱいは、ある。
ただふたつの白い双丘。
頂点には乳首。
最初働いたキャバクラで、よたんぼうが乳首をちちくびといっていて、私は吹いた。
そのおっさんの顔めがけて、口に含んだ酒が盛大に飛んだ。
おっさんは幸せそうに、にこにこしていた。
私もにこにこしていた。
あー、なんかお父さんみたいだなと思った。
そのおっさんは、私が好きでもないくまのプーさんのキーホルダーをくれた。
私は、クリスマスに玩具をもらった子供のように従順に喜んでみせ、家に帰ったらぽいっと捨てた。
まぁ、水商売の女の子に贈り物するなら、高い貴金属にしとけということだ。
その他、ぬいぐるみやらマグカップやら色んなものをもらったが、好物の光り物はなかった。
まぁ日比野さんはその程度の女ということである。
日比野さんは今日もその社会の大変遺憾な扱いを一瞬でも忘れたいので、Amazonにティファニーと打ち込む。
もちろん買わない。
手作りサイトで似たデザインを探すのである。
そんな無駄な努力で日比野さんはできている。
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