102 / 167
gâteau basque~甘いブラックチェリーのジャムを~
3
しおりを挟む
「う、うわ……」
怪しい店が立ち並ぶ通りを歩いて行って俺が連れてこられたのは、アダルトショップだった。以前友達と店の前を通りかかって「やばい店」と笑いあったことがある。
店の中はいかにもな外装と特にギャップはなく、激安雑貨なんかが売っている某チェーン店のような雰囲気だった。AV女優のポスターやアダルトグッズのポスターが壁に貼ってあって、所狭しと商品が並んでいる。
「な、なんかすごいですね……」
入る前こそは、アダルトショップという卑猥さに怖気付いていたものの、入ってしまえば案外心は落ち着いてしまった。アダルトグッズ自体に恥じらいを覚えるような性分でもないし(自分が使うなら別だけど)面白くなってまじまじと商品を眺めてしまう。
「どういうのが好き?」
「知りませんよ!」
近くにあったバイブのコーナーをみていると、にゅっと白柳さんが覗き込んできた。問われて慌てて否定したけれど、俺の右側にあるものがオナニーで使ったことがある奴だ。白柳さんはそんな俺の嘘を見破っているのかいないのか、意地悪そうに笑っている。
「そうそう、これ。これさ、すごいんだって。前彼女に使ったらイキまくってて大変なことになってさ」
「な、……えっ……」
「イッても抜けないんだよ。どんどんなかに入り込んでくるんだって」
白柳さんが指差したのは、極太で長い、えげつない形をしたバイブ。チンコの形状をしたなかにいれるバイブのほかに、「クリ用バイブ」とパッケージで説明されている小さなローターがくっついている。イボイボとした丸いローターがぶるぶると振動するらしい。
「はい、梓乃くん」
「……えっ?」
「これ買おうか」
「なっ、なんで!?」
「梓乃くんの健全なオナニーライフのために」
「い、いやいやいやいや」
何言ってるんだこの人は。俺は逃げようと後ずさるも、しっかりと手を掴まれてそれは叶わない。白柳さんはいやいやと首を振っている俺に顔を近づけてきて、真面目な顔つきで話し出す。
「マスターベーションは積極的にするべきだよ、梓乃くん。快楽を得ることで精神の衛生も保たれる」
「なにわけのわからないことを言っているんですか!」
「それに考えてもみるんだ、智駿を喜ばせたいだろ?」
「~~っ」
早口でまくし立てられて、俺は思考力が低下し始めていた。白柳さんの言っていることは正しい……?なんて思い始めて頭がぼーっとしてくる。白柳さんの医者という肩書きもずるい。
気付けば俺はもう一つアダルトグッズを手に持たされて、レジに向かって背を押されてしまった。男性店員が淡々と商品を透けない無地の袋に入れてくれていたあたりで、「俺なにやってるんだ!?」と我に返ったけれど、遅かった。
怪しい店が立ち並ぶ通りを歩いて行って俺が連れてこられたのは、アダルトショップだった。以前友達と店の前を通りかかって「やばい店」と笑いあったことがある。
店の中はいかにもな外装と特にギャップはなく、激安雑貨なんかが売っている某チェーン店のような雰囲気だった。AV女優のポスターやアダルトグッズのポスターが壁に貼ってあって、所狭しと商品が並んでいる。
「な、なんかすごいですね……」
入る前こそは、アダルトショップという卑猥さに怖気付いていたものの、入ってしまえば案外心は落ち着いてしまった。アダルトグッズ自体に恥じらいを覚えるような性分でもないし(自分が使うなら別だけど)面白くなってまじまじと商品を眺めてしまう。
「どういうのが好き?」
「知りませんよ!」
近くにあったバイブのコーナーをみていると、にゅっと白柳さんが覗き込んできた。問われて慌てて否定したけれど、俺の右側にあるものがオナニーで使ったことがある奴だ。白柳さんはそんな俺の嘘を見破っているのかいないのか、意地悪そうに笑っている。
「そうそう、これ。これさ、すごいんだって。前彼女に使ったらイキまくってて大変なことになってさ」
「な、……えっ……」
「イッても抜けないんだよ。どんどんなかに入り込んでくるんだって」
白柳さんが指差したのは、極太で長い、えげつない形をしたバイブ。チンコの形状をしたなかにいれるバイブのほかに、「クリ用バイブ」とパッケージで説明されている小さなローターがくっついている。イボイボとした丸いローターがぶるぶると振動するらしい。
「はい、梓乃くん」
「……えっ?」
「これ買おうか」
「なっ、なんで!?」
「梓乃くんの健全なオナニーライフのために」
「い、いやいやいやいや」
何言ってるんだこの人は。俺は逃げようと後ずさるも、しっかりと手を掴まれてそれは叶わない。白柳さんはいやいやと首を振っている俺に顔を近づけてきて、真面目な顔つきで話し出す。
「マスターベーションは積極的にするべきだよ、梓乃くん。快楽を得ることで精神の衛生も保たれる」
「なにわけのわからないことを言っているんですか!」
「それに考えてもみるんだ、智駿を喜ばせたいだろ?」
「~~っ」
早口でまくし立てられて、俺は思考力が低下し始めていた。白柳さんの言っていることは正しい……?なんて思い始めて頭がぼーっとしてくる。白柳さんの医者という肩書きもずるい。
気付けば俺はもう一つアダルトグッズを手に持たされて、レジに向かって背を押されてしまった。男性店員が淡々と商品を透けない無地の袋に入れてくれていたあたりで、「俺なにやってるんだ!?」と我に返ったけれど、遅かった。
10
お気に入りに追加
191
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
執着攻めと平凡受けの短編集
松本いさ
BL
執着攻めが平凡受けに執着し溺愛する、似たり寄ったりな話ばかり。
疲れたときに、さくっと読める安心安全のハッピーエンド設計です。
基本的に一話完結で、しばらくは毎週金曜の夜または土曜の朝に更新を予定しています(全20作)
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる