アリスドラッグ

うめこ

文字の大きさ
上 下
26 / 50
インセスト~ヘンゼルとグレーテルによる悲喜劇~

3(3)

しおりを挟む

 椛がそろそろと起き上がって、ヘンゼルに臀部を向けて四つん這いになる。そして上半身を伏せて、臀部を突き上げるような格好をとった。僅か脚を開いていることもあってか、その孔はくっきりと姿をあらわしている。空気とヘンゼルの視線に撫でられて、孔はぴくぴくと細かく動いていた。


「はぁ……」


 なんでこんなことになったんだっただけ、と現実から目を背けたくなりながらもヘンゼルは自らの人差し指を軽く舐める。そして、臀部の割れ目を指の先でなぞった。


「はぁぁ……ん、」


 椛はため息のような声をあげる。何度か往復してやると、今度は孔の周囲をくるりと円を描くように撫でてやった。孔の動きは一層はやくなっていき、椛はぎゅっとシーツを掴んで快楽に耐えている。


「あぁ、あっ、やぁー……」

「いい?」

「いい、兄さん……きもち、いい……」

「あ、……っそ」


 指先に、椛の先走りがまとわりつく。ぬるぬるとしたそれを孔に塗りたくるようにして、しつこくそこを弄ってやった。 


「はぁ……あぁあ……」


 指の腹で孔の入り口を塞ぐようにしてぐりぐりと触ると、椛がたまらないと言うように首をふる。その髪をぱさぱさと揺らしながら頬を枕に押し付けて、つま先でシーツを引っ掻いた。かさかさとシーツの擦れる音が妙に生々しくヘンゼルを責め立てる。


「やあぁん……だめ、だめぇ……」

「……いつもこの奥にぶっといの挿れられている癖に」

「あっ……」


 ヘンゼルが罵倒にも似た言葉を吐いた瞬間、椛の孔がきゅうっと締まった。なんとなくその理由を察したヘンゼルは呆れ顔でぐいぐいと指を動かしてやる。


「……今のでおっさんにヤられている時のこと思い出したわけ?」

「あッ……ち、ちがう、の……」

「じゃあなんだよ」

「……、ほし……ほしく、なっちゃった……兄さん……」


 椛が振り向いて、肩越しに見つめてくる。濡れた瞳がランプに照らされて、ゆらゆらと光と泳がせている。



――こうやって、いつも誘惑してるんだ



「――あぁッ!」


 なにかが気に障ったヘンゼルは苛立ちに任せてそのまま指を中に押し進めた。つぷぷ、と小さな音をたてて指が沈んでゆく。


「おまえさぁ、俺のところ嫌いなんじゃないの?  俺とセックスしたいって?      頭おかしいの?」

「あっ、あっ……!  だっ、て……にい、さん……やぁっ……!」

「おまえとヤッて俺になんのメリットがあるんだよ」

「っ……に、いさん……」


 ヘンゼルが言葉を発するたびに肉壁はきゅうきゅうとヘンゼルの指を締め付けた。ほんの少し中で指を動かしてみれば、椛が身体をくねらせて甘い声をあげる。


「にいさん、だって……にいさん、やさしいの……」

「は?   おまえに優しくしたおぼえないけど」

「あっ、んぁ……ううん、にいさん……いつも、僕のこと、気にかけてくれる……」

「はっ……今更なんだよ、そんなこといつも言っていないくせに。あと、別におまえに優しくしようとなんて思ってない。同じベッドで寝るのに言葉も交わさないのもアレだと思って、適当な言葉かけてるだけだから」

「だって……じゃあ、なんでこんなに優しく触るの……!」


 こり、と中の小さな膨らみに指先が触れると、椛は甲高い声で啼いた。びくんっ、と身体が跳ねる。


「はぁ……何を勘違いしてんだかしらねぇけど……こういうことするのに抵抗あるからベタベタ触りたくないだけだよ」

「だったら……あっ、断って、よ……」

「そうするとおまえがまた落ち込むんだろめんどくせえな」

「……いやなのに、僕のためにしてくれてるんだから、にいさんは優しいんだよ」

「……」


 ウザい。手のひら返したように、急になんだってんだ。
 

「あっ……!  ひゃあぁっ……!」


 椛の反応が良かったところを、強く押し込むように掻いた。さっさと終わらせよう、そんな気持ちでヘンゼルは手の動きをはやめる。


「やっ、あっ、い、いっちゃ……」

「イけよさっさと。はやく俺は終わりたい」

「あぁ、ん、に、にいさん……」

「なに」

「……きす、キスして……」

「……」


 ほんとわけわかんねぇ。

 ヘンゼルは眉をひそめ、椛を見下ろした。潤んだ瞳、朱に染まる頬。唇から発せられた望みは本物だと、その表情が示している。


「兄さん……はやく……」

「……はいはい」


 ぐずぐずと泣きながら請われて、なんというか情を動かされて。まるで苛めているかのような心地に陥って、ヘンゼルはそれが嫌で、やれやれと椛に口付けた。


「んっ……んん……!」


 椛が、嬉しそうに鼻から抜けるような声をだす。ヘンゼルの首に腕を回して、そっと抱きしめてきた。


「……」


 ぎゅうっ、と指がなかで締め付けられる。びくびくとしなった身体、腕に込められた力。ようやく、椛がイったようだった。 



「はぁ、……、っ、あ」


 椛がヘンゼルのシャツを掴みながら荒く呼吸する。そのあまりにも苦しそうな様子に思わず抱きしめてやったものの、彼への疑惑が解けたわけではない。彼が突然態度を変えてきた理由は、いくらヘンゼルが思案したところでわかるわけもなかったのだ。


「……おまえさぁ……何考えてるの? 俺のことなんだと思っているわけ?」

「……兄さん……兄さんも、僕と、一緒だなって……そう思うんだ」

「はい?」

「僕が仕方なく体を売るのと同じ。兄さんも、好きで盗んだりしているわけじゃない」


 椛がヘンゼルの手をとって、するりと指を重ねる。そして、ナイフや銃を使っているわりには綺麗なその指を、そっと頬にすり寄せた。


「……こんなに、優しく触れることができるんだもん」

「……あのですね、さっきも言いましたけど、」

「僕は兄さんが他の人を傷つけて生きていることが嫌で、兄さんのことが嫌いだったから……ちょっとからかってやろうって思って、誘ったんだ。……でも、こんなに優しくされてびっくりした。兄さんは僕に触りたくないからだって、そう言うでしょう。それでも……兄さんは優しい人。そうじゃなければ、あんなふうに人を触れない」

「……」


 何を、分かった風に。そうは思ったが、その穏やかな表情に文句は口からでてこない。椛は安心しきったようにヘンゼルに身を任せ、背に腕を回してくる。


「……兄さんのやっていることに賛同したわけじゃないよ。僕は人を傷つけなくない。……でもちょっと、兄さんのことを誤解していたかなって」

「今まさに誤解してるだろ、俺は別におまえに優しくした覚えもないし、自分の行いが間違っていることくらいわかっている。俺がやっていることは避けようと思えば避けられること、ただ俺が自分が傷つくのが怖くてそれを選んでいるだけ」

「……じゃあ、聞いていい? 兄さんは、誰かを傷つける時、辛い?」


 椛がヘンゼルを見上げて、聞いてくる。純粋な黒い瞳はきらきらとしていて、本当にこの少年が淫売をしているのかと疑いたくなるほど。


「……昔は……怖かった。でももう慣れた」

「……僕といっしょだね」

「は?」

「……汚い男に身体を触られるのがいやでいやで仕方なかったのにもう、この身体が淫乱になって……誰に触られてもよがるようになった僕と」

「……」

「……兄さん、僕たちは兄弟だ。……やっぱり、似ている。そして、離れることなんて、きっとできない」


 違う、そう言えなかったのはなぜだろう。あまりにも椛が淡々として言ったからだろうか。似ているなんて、こじつけじゃないか。根本的な理念からして違うというのに。


「……ねろ!」

「……わ」


 怖い、と思った。このまま椛の言葉を聞いていたら飲み込まれそうになったのだ。反射的にヘンゼルは椛を突き飛ばしていた。

 ぼふ、とまぬけな音をたてて椛が布団の上にたたきつけられる。びっくりした顔で見つめられて、ヘンゼルはふいっと顔を逸らす。


「そうだよ俺達は兄弟だ、縁をきることなんてできやしない。だから、今までどおり距離をおくのがいいと思う、俺とおまえはどうしたって分かり合えないんだから」

「……兄さん、」

「もうこういうことはコレっきりだ、ヤりたいならいくらでも相手いるんだろ、俺にあたらないでくれ」


 ヘンゼルは椛に背を向けて布団をかぶった。後ろから、小さく「兄さん」と呼ばれたような気がしたが、それは無視した。やがて、椛も諦めたように布団に入ってくる。


「……!」


 後ろから、そっと抱きしめられる。どくりと鳴った心臓の音は聞かなかったことにした。目を閉じ、夢の世界にいけと自分に言い聞かせる。


「……、」


 しずかな、寝息が聞こえてきた。人をここまで動揺させておいて勝手な、とイラッとしたが、その安心したような寝息にどこかほっとする。さっきは一人で泣いていたから。彼の中の苦しみとか、辛さとか、そういったものが少しでもなくなったのかと思うと、素直に嬉しい。


「……おやすみ、椛」



 きゅ、とシャツを胸元で握られる。その手を、軽く撫でてやった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

双葉病院小児病棟

moa
キャラ文芸
ここは双葉病院小児病棟。 病気と闘う子供たち、その病気を治すお医者さんたちの物語。 この双葉病院小児病棟には重い病気から身近な病気、たくさんの幅広い病気の子供たちが入院してきます。 すぐに治って退院していく子もいればそうでない子もいる。 メンタル面のケアも大事になってくる。 当病院は親の付き添いありでの入院は禁止とされています。 親がいると子供たちは甘えてしまうため、あえて離して治療するという方針。 【集中して治療をして早く治す】 それがこの病院のモットーです。 ※この物語はフィクションです。 実際の病院、治療とは異なることもあると思いますが暖かい目で見ていただけると幸いです。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

処理中です...