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インセスト~ヘンゼルとグレーテルによる悲喜劇~
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しおりを挟む椛がそろそろと起き上がって、ヘンゼルに臀部を向けて四つん這いになる。そして上半身を伏せて、臀部を突き上げるような格好をとった。僅か脚を開いていることもあってか、その孔はくっきりと姿をあらわしている。空気とヘンゼルの視線に撫でられて、孔はぴくぴくと細かく動いていた。
「はぁ……」
なんでこんなことになったんだっただけ、と現実から目を背けたくなりながらもヘンゼルは自らの人差し指を軽く舐める。そして、臀部の割れ目を指の先でなぞった。
「はぁぁ……ん、」
椛はため息のような声をあげる。何度か往復してやると、今度は孔の周囲をくるりと円を描くように撫でてやった。孔の動きは一層はやくなっていき、椛はぎゅっとシーツを掴んで快楽に耐えている。
「あぁ、あっ、やぁー……」
「いい?」
「いい、兄さん……きもち、いい……」
「あ、……っそ」
指先に、椛の先走りがまとわりつく。ぬるぬるとしたそれを孔に塗りたくるようにして、しつこくそこを弄ってやった。
「はぁ……あぁあ……」
指の腹で孔の入り口を塞ぐようにしてぐりぐりと触ると、椛がたまらないと言うように首をふる。その髪をぱさぱさと揺らしながら頬を枕に押し付けて、つま先でシーツを引っ掻いた。かさかさとシーツの擦れる音が妙に生々しくヘンゼルを責め立てる。
「やあぁん……だめ、だめぇ……」
「……いつもこの奥にぶっといの挿れられている癖に」
「あっ……」
ヘンゼルが罵倒にも似た言葉を吐いた瞬間、椛の孔がきゅうっと締まった。なんとなくその理由を察したヘンゼルは呆れ顔でぐいぐいと指を動かしてやる。
「……今のでおっさんにヤられている時のこと思い出したわけ?」
「あッ……ち、ちがう、の……」
「じゃあなんだよ」
「……、ほし……ほしく、なっちゃった……兄さん……」
椛が振り向いて、肩越しに見つめてくる。濡れた瞳がランプに照らされて、ゆらゆらと光と泳がせている。
――こうやって、いつも誘惑してるんだ
「――あぁッ!」
なにかが気に障ったヘンゼルは苛立ちに任せてそのまま指を中に押し進めた。つぷぷ、と小さな音をたてて指が沈んでゆく。
「おまえさぁ、俺のところ嫌いなんじゃないの? 俺とセックスしたいって? 頭おかしいの?」
「あっ、あっ……! だっ、て……にい、さん……やぁっ……!」
「おまえとヤッて俺になんのメリットがあるんだよ」
「っ……に、いさん……」
ヘンゼルが言葉を発するたびに肉壁はきゅうきゅうとヘンゼルの指を締め付けた。ほんの少し中で指を動かしてみれば、椛が身体をくねらせて甘い声をあげる。
「にいさん、だって……にいさん、やさしいの……」
「は? おまえに優しくしたおぼえないけど」
「あっ、んぁ……ううん、にいさん……いつも、僕のこと、気にかけてくれる……」
「はっ……今更なんだよ、そんなこといつも言っていないくせに。あと、別におまえに優しくしようとなんて思ってない。同じベッドで寝るのに言葉も交わさないのもアレだと思って、適当な言葉かけてるだけだから」
「だって……じゃあ、なんでこんなに優しく触るの……!」
こり、と中の小さな膨らみに指先が触れると、椛は甲高い声で啼いた。びくんっ、と身体が跳ねる。
「はぁ……何を勘違いしてんだかしらねぇけど……こういうことするのに抵抗あるからベタベタ触りたくないだけだよ」
「だったら……あっ、断って、よ……」
「そうするとおまえがまた落ち込むんだろめんどくせえな」
「……いやなのに、僕のためにしてくれてるんだから、にいさんは優しいんだよ」
「……」
ウザい。手のひら返したように、急になんだってんだ。
「あっ……! ひゃあぁっ……!」
椛の反応が良かったところを、強く押し込むように掻いた。さっさと終わらせよう、そんな気持ちでヘンゼルは手の動きをはやめる。
「やっ、あっ、い、いっちゃ……」
「イけよさっさと。はやく俺は終わりたい」
「あぁ、ん、に、にいさん……」
「なに」
「……きす、キスして……」
「……」
ほんとわけわかんねぇ。
ヘンゼルは眉をひそめ、椛を見下ろした。潤んだ瞳、朱に染まる頬。唇から発せられた望みは本物だと、その表情が示している。
「兄さん……はやく……」
「……はいはい」
ぐずぐずと泣きながら請われて、なんというか情を動かされて。まるで苛めているかのような心地に陥って、ヘンゼルはそれが嫌で、やれやれと椛に口付けた。
「んっ……んん……!」
椛が、嬉しそうに鼻から抜けるような声をだす。ヘンゼルの首に腕を回して、そっと抱きしめてきた。
「……」
ぎゅうっ、と指がなかで締め付けられる。びくびくとしなった身体、腕に込められた力。ようやく、椛がイったようだった。
「はぁ、……、っ、あ」
椛がヘンゼルのシャツを掴みながら荒く呼吸する。そのあまりにも苦しそうな様子に思わず抱きしめてやったものの、彼への疑惑が解けたわけではない。彼が突然態度を変えてきた理由は、いくらヘンゼルが思案したところでわかるわけもなかったのだ。
「……おまえさぁ……何考えてるの? 俺のことなんだと思っているわけ?」
「……兄さん……兄さんも、僕と、一緒だなって……そう思うんだ」
「はい?」
「僕が仕方なく体を売るのと同じ。兄さんも、好きで盗んだりしているわけじゃない」
椛がヘンゼルの手をとって、するりと指を重ねる。そして、ナイフや銃を使っているわりには綺麗なその指を、そっと頬にすり寄せた。
「……こんなに、優しく触れることができるんだもん」
「……あのですね、さっきも言いましたけど、」
「僕は兄さんが他の人を傷つけて生きていることが嫌で、兄さんのことが嫌いだったから……ちょっとからかってやろうって思って、誘ったんだ。……でも、こんなに優しくされてびっくりした。兄さんは僕に触りたくないからだって、そう言うでしょう。それでも……兄さんは優しい人。そうじゃなければ、あんなふうに人を触れない」
「……」
何を、分かった風に。そうは思ったが、その穏やかな表情に文句は口からでてこない。椛は安心しきったようにヘンゼルに身を任せ、背に腕を回してくる。
「……兄さんのやっていることに賛同したわけじゃないよ。僕は人を傷つけなくない。……でもちょっと、兄さんのことを誤解していたかなって」
「今まさに誤解してるだろ、俺は別におまえに優しくした覚えもないし、自分の行いが間違っていることくらいわかっている。俺がやっていることは避けようと思えば避けられること、ただ俺が自分が傷つくのが怖くてそれを選んでいるだけ」
「……じゃあ、聞いていい? 兄さんは、誰かを傷つける時、辛い?」
椛がヘンゼルを見上げて、聞いてくる。純粋な黒い瞳はきらきらとしていて、本当にこの少年が淫売をしているのかと疑いたくなるほど。
「……昔は……怖かった。でももう慣れた」
「……僕といっしょだね」
「は?」
「……汚い男に身体を触られるのがいやでいやで仕方なかったのにもう、この身体が淫乱になって……誰に触られてもよがるようになった僕と」
「……」
「……兄さん、僕たちは兄弟だ。……やっぱり、似ている。そして、離れることなんて、きっとできない」
違う、そう言えなかったのはなぜだろう。あまりにも椛が淡々として言ったからだろうか。似ているなんて、こじつけじゃないか。根本的な理念からして違うというのに。
「……ねろ!」
「……わ」
怖い、と思った。このまま椛の言葉を聞いていたら飲み込まれそうになったのだ。反射的にヘンゼルは椛を突き飛ばしていた。
ぼふ、とまぬけな音をたてて椛が布団の上にたたきつけられる。びっくりした顔で見つめられて、ヘンゼルはふいっと顔を逸らす。
「そうだよ俺達は兄弟だ、縁をきることなんてできやしない。だから、今までどおり距離をおくのがいいと思う、俺とおまえはどうしたって分かり合えないんだから」
「……兄さん、」
「もうこういうことはコレっきりだ、ヤりたいならいくらでも相手いるんだろ、俺にあたらないでくれ」
ヘンゼルは椛に背を向けて布団をかぶった。後ろから、小さく「兄さん」と呼ばれたような気がしたが、それは無視した。やがて、椛も諦めたように布団に入ってくる。
「……!」
後ろから、そっと抱きしめられる。どくりと鳴った心臓の音は聞かなかったことにした。目を閉じ、夢の世界にいけと自分に言い聞かせる。
「……、」
しずかな、寝息が聞こえてきた。人をここまで動揺させておいて勝手な、とイラッとしたが、その安心したような寝息にどこかほっとする。さっきは一人で泣いていたから。彼の中の苦しみとか、辛さとか、そういったものが少しでもなくなったのかと思うと、素直に嬉しい。
「……おやすみ、椛」
きゅ、とシャツを胸元で握られる。その手を、軽く撫でてやった。
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