誰の目にも輝きを

ヨージー

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「おはよう」
弥伊子は挨拶する。真澄も藤田飛鳥も他のみんなとも普段より明るい声で話しかけることができた。弥伊子の気持ちは爽快だった。弥伊子は放課後が待ちきれない気持ちだった。短い休み時間にほかのクラスへ出向いて話に行くのは目立ちすぎる。須藤綾の話を思いだし、気がきでない時間帯もあったが、昨日の獅童宰都との電話を思いだし心を落ち着かせた。今の二人を割ける出来事などあるだろうか。弥伊子は図書室へ直接向かおうと考えていたけれど、やはり待ちきれない思いが時間がたつほどに感じられた。獅童宰都のほうから会いに来てくれないかと、思い描いた。
 やっと迎えた放課後、今日は一日が本当に長かった。弥伊子は今日一日まともに板書することができなかった。あとから真澄にノートを貸したら驚かれてしまうだろう。弥伊子は早々に荷物をまとめると、挨拶もまばらにクラスをあとにした。弥伊子は気持ちを高ぶらせて教室移動するこの瞬間に、芦屋恭子からメイクを施されて登校した日のことをおもいだした。
「…」
クラスを覗いた弥伊子は絶句する。獅童宰都がそこにいた。そして、
「おお、弥伊子ひさしいな」
芦屋恭子がそこにいた。

「今回は長めだったがいい経験になったよ」
「恭子は言葉が通じたの?」
「いやあ、ほとんど無理だったね。ボディランゲージってやつ」
「恭子らしいね、僕にはとても」
「宰都は話せるだろう?」
弥伊子は言葉を挟めない。放課後になってからしばらくたつ。久しぶりに会った獅童宰都と芦屋恭子はノンストップで話続けている。クラスには弥伊子と三人しか居ない。もしかしたら、須藤綾も一日こんな状況を目の当たりにしていたのかもしれない。少し同情する。こんなのって、耐え難い。目の前にいるのに、こちらに関心がないなんて。話しかけることもできないなんて。弥伊子は自分の自信を失いそうになっている。今まで、自分が獅童宰都と積み重ねてきたものは芦屋恭子とのものに比べれば、そう大したものではなかったのではないか、そんな疑問が頭のなかをめぐった。
「弥伊子、今日は泊めてもらうね」
芦屋恭子のとっぴな一言に反応できなかったのもきっとそのせいだ。
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