誰の目にも輝きを

ヨージー

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 弥伊子は駅に帰りついたとき、自分が学校に荷物を置いてきてしまっていたことに気づいた。それまで歩き続けていた弥伊子は立ち止まった途端に涙をながした。とめどなく涙がこぼれた。どうしよう、どうしたら。弥伊子はその場にしゃがみこんでしまった。
「ほらほら何してるの」
弥伊子は後ろ首を捕まれた。正確にはワイシャツの襟を捕まれて立たされた。振り向くとそこには芦屋恭子がいた。
「ああ、もう、泣きやがって、せっかくのメイクが」
「どうして、、」
「獅童に聞いたのと、クラス戻ったらお前が逃げ出したって言うから追ってきた」
「ごめん、メイクが」
「ばかだね、メイクはまたすればいい。それに私はまだまだ弥伊子の可能性を試したい」
「可能性?」
「さぁ、そしたら、まずはそのどろどろメイクを落とすよ」
弥伊子は腕を引かれるままベンチに座らせられた。
「メイクと一緒に全部流してしまうといい」
芦屋恭子はそう言うと、メイク落としのペーパーで弥伊子の顔をぐいぐいともみくちゃにした。
「まって、もう、痛いよ芦屋さん」
弥伊子はもみくちゃにされることで、なんだか気持ちがすっきりしていくのを感じた。
「まったく、私のメイクを半日ももたせずダメにしやがって」
やはり芦屋恭子は根にもったようだ。
「ま、評価は上場だけどな」
「評価って?」
「お前の派手な立ち回りのお陰で"なぞの美少女"の話がかなり盛り上がっている」
「え、なにそれ」
「もちろん私が関与していることも含めてだ。これは忙しくなりそうだ」
弥伊子は芦屋恭子から端末を奪い取った。そこには隠し撮りされた自分が拡散されていることがわかる内容が写し出されていた。
「な、なんなのこれ!」
弥伊子が飛び退くと芦屋恭子が弥伊子の手から端末を奪い取ってこちらへ向けた。
「弥伊子には私の広告塔になってもらうわ」
「そんな、そんなの聞いてない」
「今さら引き下がれないよ、きっとあなたが南洞弥伊子だってことはそのうち知れわたるはずよ」
「そんな、、」
「悪いことばかりじゃないわ。またメイクしてあげるから」
そう言うと芦屋恭子はニヤリと笑顔を見せた。
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