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10.再接近
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周防は犯人たちが、使用した装置を回収するのかどうかを考えていた。装置を販売するのであれば、その構造は社外秘、製造増方法を隠さなくてはならないだろう。爆弾と異なり、再利用可能な兵器となる今回の超音波爆弾だが、仮に戦地で利用したとして、敵に回収されて、利用されてしまったら元も子もない。解決策としては装置を破壊する機構を自身に盛り込むことだ。音波発生と別に起爆装置を付けることになる。自爆機構を搭載させた超音波爆弾どちらに意義があるだろう。自爆機構には作動不良のリスクもある。そう考えると、作動後の装置を破壊するのは愚策といえる。そんなもの買い手がつかないだろう。ではどうやって装置に販売価値をつけるのだろう。遠隔起動だけで言えば、この時代携帯電話の通話機能、ネットワークの利用、世界の裏側で起爆させることも可能だろう。それにもかかわらず、一企業と大学の取り組みが狙われた。遮蔽物を介しても安定した通信を実現するシステムと超音波を利用した視覚の届かない範囲での空間把握…。超音波による空間把握は、障害物からの反射を利用して、装置から投射され、戻るまでの経過時間を利用する。それだけであれば視覚による観察と変わらない。光源が不要というメリットが異なる点が魅力となる。今回の装置で見えない部分の疑似的観察が可能なのは、反射して返ってくる音波の質を観察するからだ。物の素材、密度によって、反射具合が異なる。それを精密感知することで、見えない部分、例えば瓦礫の下の状況を推測して可視化させて、伝えることができる。そう、この装置の利点は音波を出せることではなく音波回収の質だ。単に強力な音波を発生させるためだけであれば無駄となる機能、部品が搭載されていることになる。つまりそれが無駄ではなく活用されるのか。人には感知できない超音波。つまり相手に気づかれずに、状況を確認できる。例えばどうだろう。周囲に一定以上の人間が観察されたときに自動起爆する装置というのは、仕様としては可能なはずだ。しかし、それでは遠隔操作の機能が不要だ。待て、遠隔操作というのは装置本来の利用予定だった災害救助の移動操作を受け付けるものだろう。透の見た装置は移動する機構が見られなかったという。価値は、そこではないのか。考え直そう。そう、通信機能という意味はどうだろう。装置が回収したデータを無線通信で遮蔽物があっても安定して観察できる点だ。テロの成功を確認する?違うな。データの収集こそが武器なのか。仮に戦争利用で、敵地の情報収集として複数の装置を弾頭に仕込んで放つとする。複数の装置のデータ収集によって、相手の兵器、兵の数を把握する。精度高く利用できることだろう。それに加えて有事には超音波による殺戮も行える。どうだろうか、魅力的な商品といえるのだろうか。衛星を持たない国家、テロリストには魅力的かもしれない。そうなると、犯人たちが伝えなくてはならない商品価値は、殺戮の結果ではない。殺戮のオンライン配信ではないか。今もどこかで、仕掛けられた爆弾の周辺状況を買い手に宣伝放映しているかもしれない。犯人たちにあった時間はどれほどだろう。周防たちより数時間前にアジトを離れた彼らは、すぐに校舎に装置を仕込んだだろうか。その上で警察を手にかけて、別のアジトでゆっくり送られてくるデータをモニターしているのか。いや、殺された警察が学校の傍でいずれ発見されるような形でずさんに隠されていた。そもそも、警察に見つけられている。周辺にいるはずだ。装置は少なくとも今回、回収するのではないか。そう考えると、学校に残した二人が心配になった。装置に近づいた時点で、犯人たちに筒抜けだからだ。
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