学園祭

ヨージー

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7.

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 学部塔のなかでは、各教室で催しが行われている。三部屋に一部屋は体験講座や、研究発表、作品の展示会などに利用されているようだ。友也は、教室をまわりながら、一部屋ずつざっくりと見ていった。七色ジュースなる出店で、自然の物からつくれないであろう複数の原色が層をなした飲み物を購入した。味は、まあ飲めなくはない。数学の考えに基づいた水彩画の展示などは説明を見てもなんの事だがわからない。貴音ならわかるのだろうか。教室を巡りながら貴音を探していると、いつの間にか三階にまでたどり着いていた。催しの行われる教室の間、人気のない暗い教室を通りすぎてゆく。
「…!」
 立ち止まったのは、具体的な何かに気づいたのではない。何か、違和感があったのだ。友也は少し戻って教室を眺める。
「あ、カーテンが開いてる」
 使われていない教室はカーテンが閉めきられていて、催しのある教室とは明らかな明るさの差を感じていた。しかし、この教室を通りすぎたとき、木漏れ日を感じたのだ。日が沈む時間が早くなってきているため、すでに西日となった穏やかな日が教室を照らしていた。友也はさらに違和感を感じた。教室の窓際、窓から入る西日を遮る影がある。カーテンが開けられているにも関わらず、他の未使用教室のように暗く感じられるのはそのせいだ。友也は教室の扉に手をかける。解錠されていた。
「…」
 教室に入ると、風が吹き込んできた。窓も開いているようだ。教室には大きな装置が設置されていた。見た目では二つのタンクと大きなファンの三つから成り立つように見えた。ファンの両脇にあるタンクは水色の蓋の閉められたポリバケツだ。
「?」
 ポリバケツの底からそれぞれ塩ビ管が取り付けられている。ポリバケツの下部についた管は、ファンのあたりに両側から伸びていた。足元で管が小さな箱のようなものを通して繋がっていた。小さな箱はちょうどファンの手前にあるようだ。小さな箱も何かの装置のようで、ボタンやメーターが見られた。時刻表記があり、タイマーのようだ。
「この時間って」
 友也は学園祭の冊子を思い出す。その間もなく物音がした。友也は一瞬びくついたものの、そちらへ向かうことにする。音はファンの裏側、教室の窓の手前からだった。友也は恐る恐る顔をファンの縁からだした。
「本庄さん…!」
 友也はファンにもたれかかりながら横になる貴音を発見した。
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