学園祭

ヨージー

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 正門脇にある案内板前には、一般来場客の対応に追われる係員テントがあった。案内板前で貴音を待つ友也は、慌ただしいテント内を眺めながら、自分がこの先、仕事だとしてもあのように作業に追われる姿を想像できずにいた。仄かな社会生活への不安である。視界に黒い人影が見えた。今日は黒の丈の長いトラベルコートだ。
「早めに来る姿勢は誉めるけど、そう気だるげだと声をかけたくなくなる」
 貴音は無表情で声をかけてくる。友也としては多少は表情を作ってくれたらと常々思っている。
「すいません、気を付けます。最初に武井さんのとこに挨拶に行きますか?」
「いや、昼前は忙しいだろう。一周他をまわろう」
 慎吾の露店は安定どころのお好み焼きで、確かに昼前は稼ぎ時だろう。学園祭ののぼりには、さまざまなメニューが軒を連ねていて、お好み焼きのような王道メニューもあれば、どこぞの郷土料理などもあり、バリエーションに富んでいる。友也は手始めに、無難なフライドポテトを提案した。貴音は渋々といった表情で同意してくれた。貴音はきっとなにを提案しても渋々の対応だと思われたので、特に気を止めずに買いに行った。味を二種類購入し、二人でつつきながら歩いた。
「佐切くんは先日のトラック襲撃事件を知っているか?」
 友也は話題のチョイスが殺伐としていると思いながらも慣れた様子で応える。
「確かドラッグストアで襲われたんでしたっけ?」
「そうだ。ドラッグストアに商品を配送しようとしたトラックが狙われた。店舗側に裏口のチャイムで到着を知らせている間に何者かが運転席に乗り込んで、そのままトラックを乗り逃げしたらしい」
「運転手が無防備でしたね」
「いや、誰もそこを狙われるとは思わなかったんだろう」
「まあ、金銭を運んでいるわけではないですしね」
「その後、乗り捨てられたトラックからは積載していた商品の多くが運び出されていたそうだ」
「はあ、売りさばくんでしょうかね」
「足はつかないだろうが、大した儲けにはならないだろうな」
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