2 / 11
2.
しおりを挟む
正門脇にある案内板前には、一般来場客の対応に追われる係員テントがあった。案内板前で貴音を待つ友也は、慌ただしいテント内を眺めながら、自分がこの先、仕事だとしてもあのように作業に追われる姿を想像できずにいた。仄かな社会生活への不安である。視界に黒い人影が見えた。今日は黒の丈の長いトラベルコートだ。
「早めに来る姿勢は誉めるけど、そう気だるげだと声をかけたくなくなる」
貴音は無表情で声をかけてくる。友也としては多少は表情を作ってくれたらと常々思っている。
「すいません、気を付けます。最初に武井さんのとこに挨拶に行きますか?」
「いや、昼前は忙しいだろう。一周他をまわろう」
慎吾の露店は安定どころのお好み焼きで、確かに昼前は稼ぎ時だろう。学園祭ののぼりには、さまざまなメニューが軒を連ねていて、お好み焼きのような王道メニューもあれば、どこぞの郷土料理などもあり、バリエーションに富んでいる。友也は手始めに、無難なフライドポテトを提案した。貴音は渋々といった表情で同意してくれた。貴音はきっとなにを提案しても渋々の対応だと思われたので、特に気を止めずに買いに行った。味を二種類購入し、二人でつつきながら歩いた。
「佐切くんは先日のトラック襲撃事件を知っているか?」
友也は話題のチョイスが殺伐としていると思いながらも慣れた様子で応える。
「確かドラッグストアで襲われたんでしたっけ?」
「そうだ。ドラッグストアに商品を配送しようとしたトラックが狙われた。店舗側に裏口のチャイムで到着を知らせている間に何者かが運転席に乗り込んで、そのままトラックを乗り逃げしたらしい」
「運転手が無防備でしたね」
「いや、誰もそこを狙われるとは思わなかったんだろう」
「まあ、金銭を運んでいるわけではないですしね」
「その後、乗り捨てられたトラックからは積載していた商品の多くが運び出されていたそうだ」
「はあ、売りさばくんでしょうかね」
「足はつかないだろうが、大した儲けにはならないだろうな」
「早めに来る姿勢は誉めるけど、そう気だるげだと声をかけたくなくなる」
貴音は無表情で声をかけてくる。友也としては多少は表情を作ってくれたらと常々思っている。
「すいません、気を付けます。最初に武井さんのとこに挨拶に行きますか?」
「いや、昼前は忙しいだろう。一周他をまわろう」
慎吾の露店は安定どころのお好み焼きで、確かに昼前は稼ぎ時だろう。学園祭ののぼりには、さまざまなメニューが軒を連ねていて、お好み焼きのような王道メニューもあれば、どこぞの郷土料理などもあり、バリエーションに富んでいる。友也は手始めに、無難なフライドポテトを提案した。貴音は渋々といった表情で同意してくれた。貴音はきっとなにを提案しても渋々の対応だと思われたので、特に気を止めずに買いに行った。味を二種類購入し、二人でつつきながら歩いた。
「佐切くんは先日のトラック襲撃事件を知っているか?」
友也は話題のチョイスが殺伐としていると思いながらも慣れた様子で応える。
「確かドラッグストアで襲われたんでしたっけ?」
「そうだ。ドラッグストアに商品を配送しようとしたトラックが狙われた。店舗側に裏口のチャイムで到着を知らせている間に何者かが運転席に乗り込んで、そのままトラックを乗り逃げしたらしい」
「運転手が無防備でしたね」
「いや、誰もそこを狙われるとは思わなかったんだろう」
「まあ、金銭を運んでいるわけではないですしね」
「その後、乗り捨てられたトラックからは積載していた商品の多くが運び出されていたそうだ」
「はあ、売りさばくんでしょうかね」
「足はつかないだろうが、大した儲けにはならないだろうな」
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
就職面接の感ドコロ!?
フルーツパフェ
大衆娯楽
今や十年前とは真逆の、売り手市場の就職活動。
学生達は賃金と休暇を貪欲に追い求め、いつ送られてくるかわからない採用辞退メールに怯えながら、それでも優秀な人材を発掘しようとしていた。
その業務ストレスのせいだろうか。
ある面接官は、女子学生達のリクルートスーツに興奮する性癖を備え、仕事のストレスから面接の現場を愉しむことに決めたのだった。
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
女子高生は卒業間近の先輩に告白する。全裸で。
矢木羽研
恋愛
図書委員の女子高生(小柄ちっぱい眼鏡)が、卒業間近の先輩男子に告白します。全裸で。
女の子が裸になるだけの話。それ以上の行為はありません。
取って付けたようなバレンタインネタあり。
カクヨムでも同内容で公開しています。
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
校外学習の帰りに渋滞に巻き込まれた女子高生たちが小さな公園のトイレをみんなで使う話
赤髪命
大衆娯楽
少し田舎の土地にある女子校、華水黄杏女学園の1年生のあるクラスの乗ったバスが校外学習の帰りに渋滞に巻き込まれてしまい、急遽トイレ休憩のために立ち寄った小さな公園のトイレでクラスの女子がトイレを済ませる話です(分かりにくくてすみません。詳しくは本文を読んで下さい)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる