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01 決意
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突然だが、俺こと影山藍斗には学校でもトップクラスの美しさを誇る彼女がいた。
同じクラスの姫川綾音だ。
高校一年生のとある日の放課後、俺は姫川さんに呼び出され告白をされた。
「影山くん……私と付き合ってくれない……?」
告白の言葉は今でも一言一句覚えている。……というか、忘れたくても忘れられない。
あの時は夢のようだった。
教室の隅でただボーッと過ごしているだけの暗い毎日が、突如として明るくなった。
迷いなく告白を受け入れた俺は、その日から一見幸せに見える日々を送り始めた。
放課後に待ち合わせて一緒に帰ったり、手を繋いで街中を歩いたり。
傍から見れば、その姿はごく平凡な彼氏彼女以外の何物でもないだろう。
事実、俺も姫川さんとは嘘偽りのない恋人のつもりだったし、俺は姫川さんのことが好きだった。
……だが、世の中にそんな都合のいい話はない。姫川さんは俺のことなんて何とも思っていなかったのだ。
その疑念は時間を掛けて確信へと変わっていった。
まず違和感を覚えたのは付き合ってすぐのこと。
それは俺たちが付き合う上で作ったルールの中にあった。
ルール……と言っても別に法律じみた堅苦しいものではなく、ずっと愛し合う!とか…浮気しない!…みたいなバカップルが考えそうな物ばかりだった。
イチャイチャしながらそれを考える俺らの姿は、今となっては思い出すだけでも吐き気がする。
そんな一見甘々なカップルが作っただけに見えるルールの中に一つだけ異彩を放つものがあった。
『私たちが付き合っていることは絶対に誰にも言わない』という内容のそのルールは、一見何の違和感もなさそうだが、他のルールと比べるとどこか本気度を感じるというか……とにかく俺には少しひっかかりを感じた。
なぜ言いたくないのか理由を問うと、周りに広まるのが恥ずかしいからと言う姫川さん。
確かに俺自身も、自分なんかと姫川さんが付き合っているという現状を周りに知られて、似合わないだとか文句を言われるんじゃないかという不安はあった。
だからそのとき、俺はそれ以上言及するのをやめた。
この他にも付き合いながら感じた違和感は沢山あった。
プレゼントとしてあげたはずの装飾品を、彼女が身につけているところを一度も見たことがなかったり、俺といる時の彼女の笑顔がほとんど作り笑いだったり。
まあ、そんな日々が続くうちに薄々気づき始めてはいた。ただ、俺がその事実を受け入れたくなかっただけだ。
だがそんなある日、ついに俺はその現実を目の当たりにする。
その日はクリスマスだった。
彼女をデートに誘うも、他に予定があるからと断られたその日、俺は一人ブラブラと行く先も決めず歩いていた。
普通の人なら、クリスマスに恋人の約束を断る時点で察するのかもしれない。
でも姫川さんが初彼女である恋愛初心者の俺にとっては、デート所じゃない余程大切な予定があるんだろうなくらいにしか考えていなかった。
だから目を疑った。
向こうから見知らぬ男と手を繋ぎながら歩いてくる姫川さんを目撃したときは。
そこは人の多い商店街。
最初は見間違いではと思ったが、距離が近づくにつれてそれが姫川さんであることが明確になった。
俺は思わず足を止めてしまった。
そして、声をかけることなく、彼女の姿が見えなくなるまでただひたすらにその姿を目で追っていた。
もうこれはそういうことなんだろうなと、さすがの俺でも分かった。
翌日――つまり今日、俺は姫川さんを呼び出し、問い詰めることにした。
案の定、姫川さんは何事もなかったかのように俺の前に姿を現した。
問い詰めると言っても、質問一つだけ。
俺が「昨日何してた?」と聞くと、家族と予定があって――と饒舌に語り出す姫川さん。
確定だな。
俺はついに、信じたくなかった現実を受け入れた。というか、ここまできたら受け入れるしかなかった。
姫川さんの口から語られている話が全部作り話なのだと思うと、本当に気味が悪い。
よくもまあこんなにベラベラと嘘をつけるもんだ。昨日姫川さんを目撃していなかったら、この話が嘘だということに気が付かず、すっかりと信じ込んでしまったに違いない。
俺は姫川さんの話を止めると、昨日商店街で目撃したことを話した。
それに対して姫川さんは、はぁ~と深いため息をつき、「バレちゃったか~」と笑みを口元に浮かべた。
「いつから……浮気していたの?」
「浮気……?バカね!あんたのことなんか最初から何とも思ってないわよ!」
あっさりと認める姫川さん。
「え……でも、姫川さんが付き合おうって……」
「付き合う……?もしかしてあんた、本当に私に好かれてるって思ってたの??」
姫川さんはゲラゲラと大声で笑い出す。
俺は、別人のように豹変した姫川さんの姿に言葉を失い、暫くの間黙り込んでしまった。
「まったく……。あんたは大人しく私の財布として働いてるだけでよかったのよ……」
「……え?」
「まーくんにあげるアクセサリー代が浮いてたのに……これからは私が払わなきゃいけないじゃない……」
「な……何を言ってるの?」
意味の分からない姫川さんの言動に困惑する俺。
その後分かったことだが、どうやら姫川さんはプレゼントとして俺があげていた装飾品を、そのまま、まーくんという男にあげていたそうだ。
姫川さんが身に付けているのを見たことがなかったことや、男物っぽいデザインが好きと言っていたことも、全てそのためだったのだと分かった。
その後も、姫川さんによる俺の侮辱は止まらなかった。ダサいだとか、一緒にいて楽しくないだとか、散々の言われようだった。
そして、好き勝手言ったあげく、姫川さんは「あんたと違って暇じゃないの」と一言残して立ち去ってしまった。
俺は想像以上の事態に困惑していたが、その戸惑いは次第に怒りへと変わっていく。
今まで俺が楽しいと思っていた時間は、全て嘘だった。
わざわざ貯めたお小遣いも、思い出に撮った写真も、全て無駄だった。
そう考えると姫川さんに怒りを覚えずにはいられなかった。
人の気持ちを弄んで、本性を見せたと思ったら悪口ばかり…。
俺は喪失感から思わずその場に崩れ落ちる。
なんだ…? じゃあ、最初から遊びだったって言うのかよ。
考える度に俺の怒りは増すばかり。
俺は地面に手を打ち付け怒りを露わにする。
どうにかしてあの女に仕返しをしたい…。なんらかの方法で痛めつけたい…。
俺の怒りは最頂点に達する。
だったら俺が……この手で…。
……姫川さんに捨てられたその日。
俺は彼女に復讐することを決意した。
同じクラスの姫川綾音だ。
高校一年生のとある日の放課後、俺は姫川さんに呼び出され告白をされた。
「影山くん……私と付き合ってくれない……?」
告白の言葉は今でも一言一句覚えている。……というか、忘れたくても忘れられない。
あの時は夢のようだった。
教室の隅でただボーッと過ごしているだけの暗い毎日が、突如として明るくなった。
迷いなく告白を受け入れた俺は、その日から一見幸せに見える日々を送り始めた。
放課後に待ち合わせて一緒に帰ったり、手を繋いで街中を歩いたり。
傍から見れば、その姿はごく平凡な彼氏彼女以外の何物でもないだろう。
事実、俺も姫川さんとは嘘偽りのない恋人のつもりだったし、俺は姫川さんのことが好きだった。
……だが、世の中にそんな都合のいい話はない。姫川さんは俺のことなんて何とも思っていなかったのだ。
その疑念は時間を掛けて確信へと変わっていった。
まず違和感を覚えたのは付き合ってすぐのこと。
それは俺たちが付き合う上で作ったルールの中にあった。
ルール……と言っても別に法律じみた堅苦しいものではなく、ずっと愛し合う!とか…浮気しない!…みたいなバカップルが考えそうな物ばかりだった。
イチャイチャしながらそれを考える俺らの姿は、今となっては思い出すだけでも吐き気がする。
そんな一見甘々なカップルが作っただけに見えるルールの中に一つだけ異彩を放つものがあった。
『私たちが付き合っていることは絶対に誰にも言わない』という内容のそのルールは、一見何の違和感もなさそうだが、他のルールと比べるとどこか本気度を感じるというか……とにかく俺には少しひっかかりを感じた。
なぜ言いたくないのか理由を問うと、周りに広まるのが恥ずかしいからと言う姫川さん。
確かに俺自身も、自分なんかと姫川さんが付き合っているという現状を周りに知られて、似合わないだとか文句を言われるんじゃないかという不安はあった。
だからそのとき、俺はそれ以上言及するのをやめた。
この他にも付き合いながら感じた違和感は沢山あった。
プレゼントとしてあげたはずの装飾品を、彼女が身につけているところを一度も見たことがなかったり、俺といる時の彼女の笑顔がほとんど作り笑いだったり。
まあ、そんな日々が続くうちに薄々気づき始めてはいた。ただ、俺がその事実を受け入れたくなかっただけだ。
だがそんなある日、ついに俺はその現実を目の当たりにする。
その日はクリスマスだった。
彼女をデートに誘うも、他に予定があるからと断られたその日、俺は一人ブラブラと行く先も決めず歩いていた。
普通の人なら、クリスマスに恋人の約束を断る時点で察するのかもしれない。
でも姫川さんが初彼女である恋愛初心者の俺にとっては、デート所じゃない余程大切な予定があるんだろうなくらいにしか考えていなかった。
だから目を疑った。
向こうから見知らぬ男と手を繋ぎながら歩いてくる姫川さんを目撃したときは。
そこは人の多い商店街。
最初は見間違いではと思ったが、距離が近づくにつれてそれが姫川さんであることが明確になった。
俺は思わず足を止めてしまった。
そして、声をかけることなく、彼女の姿が見えなくなるまでただひたすらにその姿を目で追っていた。
もうこれはそういうことなんだろうなと、さすがの俺でも分かった。
翌日――つまり今日、俺は姫川さんを呼び出し、問い詰めることにした。
案の定、姫川さんは何事もなかったかのように俺の前に姿を現した。
問い詰めると言っても、質問一つだけ。
俺が「昨日何してた?」と聞くと、家族と予定があって――と饒舌に語り出す姫川さん。
確定だな。
俺はついに、信じたくなかった現実を受け入れた。というか、ここまできたら受け入れるしかなかった。
姫川さんの口から語られている話が全部作り話なのだと思うと、本当に気味が悪い。
よくもまあこんなにベラベラと嘘をつけるもんだ。昨日姫川さんを目撃していなかったら、この話が嘘だということに気が付かず、すっかりと信じ込んでしまったに違いない。
俺は姫川さんの話を止めると、昨日商店街で目撃したことを話した。
それに対して姫川さんは、はぁ~と深いため息をつき、「バレちゃったか~」と笑みを口元に浮かべた。
「いつから……浮気していたの?」
「浮気……?バカね!あんたのことなんか最初から何とも思ってないわよ!」
あっさりと認める姫川さん。
「え……でも、姫川さんが付き合おうって……」
「付き合う……?もしかしてあんた、本当に私に好かれてるって思ってたの??」
姫川さんはゲラゲラと大声で笑い出す。
俺は、別人のように豹変した姫川さんの姿に言葉を失い、暫くの間黙り込んでしまった。
「まったく……。あんたは大人しく私の財布として働いてるだけでよかったのよ……」
「……え?」
「まーくんにあげるアクセサリー代が浮いてたのに……これからは私が払わなきゃいけないじゃない……」
「な……何を言ってるの?」
意味の分からない姫川さんの言動に困惑する俺。
その後分かったことだが、どうやら姫川さんはプレゼントとして俺があげていた装飾品を、そのまま、まーくんという男にあげていたそうだ。
姫川さんが身に付けているのを見たことがなかったことや、男物っぽいデザインが好きと言っていたことも、全てそのためだったのだと分かった。
その後も、姫川さんによる俺の侮辱は止まらなかった。ダサいだとか、一緒にいて楽しくないだとか、散々の言われようだった。
そして、好き勝手言ったあげく、姫川さんは「あんたと違って暇じゃないの」と一言残して立ち去ってしまった。
俺は想像以上の事態に困惑していたが、その戸惑いは次第に怒りへと変わっていく。
今まで俺が楽しいと思っていた時間は、全て嘘だった。
わざわざ貯めたお小遣いも、思い出に撮った写真も、全て無駄だった。
そう考えると姫川さんに怒りを覚えずにはいられなかった。
人の気持ちを弄んで、本性を見せたと思ったら悪口ばかり…。
俺は喪失感から思わずその場に崩れ落ちる。
なんだ…? じゃあ、最初から遊びだったって言うのかよ。
考える度に俺の怒りは増すばかり。
俺は地面に手を打ち付け怒りを露わにする。
どうにかしてあの女に仕返しをしたい…。なんらかの方法で痛めつけたい…。
俺の怒りは最頂点に達する。
だったら俺が……この手で…。
……姫川さんに捨てられたその日。
俺は彼女に復讐することを決意した。
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