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第6章 狼はすぐそこに(6日目)

6ー20 最後のスピーチ

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『本日処刑されるのは18番と決まりました。18番。何か言い残すことはありますか』

 足枷が外れる音が収まって少ししてようやくヴィノードは口を開いた。
「どうなってんだよ……」
 呆然とした声が響く。
「まだ人狼は過半数を超えてねえんだろ?」
「ああ」
 アッバースが答える。
「どうしてオレに票が集まるんだ? オレは村人……数の上から言えば、だぞ」
 と一転。
「こんなことなら3日目脱出権を使っときゃよかった!」
 激しく吐き出す。
「親父がの会社が倒産したんだ。オレも退学して公立に転校しなきゃって言われたんだけど今更ヒンディー語で授業なんか受けたきゃねえよ! ルクミニー先生が駆け回って見つけてくれて、書類をうちまで持ってきてくれて、今は三カ所から奨学金をもらってる。先生のお陰でこの学校を卒業出来ました! ってお礼を言いたかったのに! こんなところでオレが殺されたら何にもならねえよっ!」
 震え声を張り上げる。
「残って勝ったら賞金が貰えるって。そうしたら大学も普通に行けて親父もお袋も安心する。何だよ、オレには死神が憑いてるってのか!?」
 叫びは泣き声に近くなる。
「3日目脱出権で出てたら穴だらけで殺されて、さっきはこのスパイ野郎に閉じ込められて、とうとう会議で選ばれちまった!……」
 と声が低く戻る。
「金がないからもう遊べねえ。言ったらもう駄目だろうと思った。けどな、ラケーシュもガーラヴも変わらずオレとつるんでくれた。お前ら悪口言いやがるけどよ、あいつらいい奴だったんだぞ!」

 一呼吸おいてヴィノードが問いかけた。

「ところでオレ、いつまでしゃべってていいんだ?」
 始めの沈黙は長く、その後の話す時間だけでも明らかに1分間を超えていた。
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