44 / 170
第3章 仲間ではいられない(3日目)
3ー2 ひとり部屋
しおりを挟む
「殺され……ってそんな! 酷過ぎる!」
コマラが咎める。カマリは動じなかった。
「多分今夜は私が殺される。だから気付いた」
目を伏せたスティーブンを隣からアッバースが気遣う。
「ヤトヴィックは昨日ひとり部屋だった。サントーシュとシュルティのどちらかを私が守るって会議で決めたでしょ? あなたはそこから漏れるひとりになった」
その後の投票→処刑で同室のバドリが死んだからだ。
「さっき言ってたよね。人狼の立場になって考えるって話。二分の一で武士が守っているかもしれないサントーシュよりあなたを襲う方が楽じゃないの。何故あなたが襲われなかったの?」
「そんなの知らねえ。おれにだってわからないんだ」
ヤトヴィックの声が震える。
「気が付かなかったってことはない?」
マリアが口をはさむ。
「わたしカマリが教えてくれるまでヤトヴィックも昨日ひとりになってたって気付かなかった」
「あんたは人狼じゃないんでしょう。だからのんきなことが言える。人狼はもっと綿密に考える。この中の大多数が敵でバレたら処刑にあげられるんだから」
「そこをはっきりさせて皆が正しく判断するためにも今夜ヤトヴィックを占った方がいいと思う」
コマラが言えばスティーブンも頷く。
「ヤトヴィック自身も希望しているんだ、それがいいね」
ヒートアップしていく空気をなだめるように確認する。
「今夜殺しに来た時にはわかるんだろうけど。それじゃ意味ないし。私、のたれ死にね」
無にするようなカマリの皮肉なセリフ。
「何で死ぬなんて言うの!」
マリアが抗議する。
「スティーブン、配役の紙こっちにくれる?」
ラミネートされた配役表を手元に持ってきてマリアに突き付ける。
「よく読んで。私は昨日シュルティを守り、ダウドはおそらく私を守った」
「ああ」
ダウドが肯定する。つまり昨夜の武士の仕事は、
カマリ→シュルティ
ダウド→カマリ
「自分は守れない。同じ人間を連続しても守れない。私は今夜ダウドを守るつもり。だけどー」
カマリを守れる武士はいない。スティーブンが顔を歪めた。
会議で提案した時にはその翌日のことまで考えが及んでいなかったのだろう。
今夜のひとり部屋はカマリを除くと、
「シュルティとヤトヴィック。ダウド、あんたまさかヤトヴィック守るとか言わないでしょうね?」
まだわからないと首を横に振る。
「おれだって守ってほしいよ。シュルティよりとは言えないけど」
「それ人狼の余裕っぽく見える」
ナイナにナラヤンが、
「止めろ」
と投げつけるが、
「なら今聞いとく。ヤトヴィック、あんたサントーシュを殺したの?」
今度はカマリだ。
「してない!」
「ハルジートは?」
「そんなことしてないっ!!」
ヤトヴィックは叫んだ。
「一緒のクラスの人間を殺すなんて絶対に出来ない。おれは違う。ラーマに誓う」
片手をあげる。
「なら誰が殺したか知ってる?」
ナイナだ。
「知らない! 何を言うんだ!」
「あなたは手を下していないかもしれないけど、人狼仲間の誰かが殺したのを知っているかもしれないでしょ? どうなの?」
人狼はひとりではない。そうだ人狼なら殺人犯だと決めつけるのは違うとスティーブンが加えるが、
「知らない! 最初から人狼じゃない。おれは村人だ! 何も知らないのは皆と同じだって言ってんだろっっ!!」
ヤトヴィックは絶叫した。
〈注〉
・ラーマ ヴィシュヌ神の化身のひとつ
コマラが咎める。カマリは動じなかった。
「多分今夜は私が殺される。だから気付いた」
目を伏せたスティーブンを隣からアッバースが気遣う。
「ヤトヴィックは昨日ひとり部屋だった。サントーシュとシュルティのどちらかを私が守るって会議で決めたでしょ? あなたはそこから漏れるひとりになった」
その後の投票→処刑で同室のバドリが死んだからだ。
「さっき言ってたよね。人狼の立場になって考えるって話。二分の一で武士が守っているかもしれないサントーシュよりあなたを襲う方が楽じゃないの。何故あなたが襲われなかったの?」
「そんなの知らねえ。おれにだってわからないんだ」
ヤトヴィックの声が震える。
「気が付かなかったってことはない?」
マリアが口をはさむ。
「わたしカマリが教えてくれるまでヤトヴィックも昨日ひとりになってたって気付かなかった」
「あんたは人狼じゃないんでしょう。だからのんきなことが言える。人狼はもっと綿密に考える。この中の大多数が敵でバレたら処刑にあげられるんだから」
「そこをはっきりさせて皆が正しく判断するためにも今夜ヤトヴィックを占った方がいいと思う」
コマラが言えばスティーブンも頷く。
「ヤトヴィック自身も希望しているんだ、それがいいね」
ヒートアップしていく空気をなだめるように確認する。
「今夜殺しに来た時にはわかるんだろうけど。それじゃ意味ないし。私、のたれ死にね」
無にするようなカマリの皮肉なセリフ。
「何で死ぬなんて言うの!」
マリアが抗議する。
「スティーブン、配役の紙こっちにくれる?」
ラミネートされた配役表を手元に持ってきてマリアに突き付ける。
「よく読んで。私は昨日シュルティを守り、ダウドはおそらく私を守った」
「ああ」
ダウドが肯定する。つまり昨夜の武士の仕事は、
カマリ→シュルティ
ダウド→カマリ
「自分は守れない。同じ人間を連続しても守れない。私は今夜ダウドを守るつもり。だけどー」
カマリを守れる武士はいない。スティーブンが顔を歪めた。
会議で提案した時にはその翌日のことまで考えが及んでいなかったのだろう。
今夜のひとり部屋はカマリを除くと、
「シュルティとヤトヴィック。ダウド、あんたまさかヤトヴィック守るとか言わないでしょうね?」
まだわからないと首を横に振る。
「おれだって守ってほしいよ。シュルティよりとは言えないけど」
「それ人狼の余裕っぽく見える」
ナイナにナラヤンが、
「止めろ」
と投げつけるが、
「なら今聞いとく。ヤトヴィック、あんたサントーシュを殺したの?」
今度はカマリだ。
「してない!」
「ハルジートは?」
「そんなことしてないっ!!」
ヤトヴィックは叫んだ。
「一緒のクラスの人間を殺すなんて絶対に出来ない。おれは違う。ラーマに誓う」
片手をあげる。
「なら誰が殺したか知ってる?」
ナイナだ。
「知らない! 何を言うんだ!」
「あなたは手を下していないかもしれないけど、人狼仲間の誰かが殺したのを知っているかもしれないでしょ? どうなの?」
人狼はひとりではない。そうだ人狼なら殺人犯だと決めつけるのは違うとスティーブンが加えるが、
「知らない! 最初から人狼じゃない。おれは村人だ! 何も知らないのは皆と同じだって言ってんだろっっ!!」
ヤトヴィックは絶叫した。
〈注〉
・ラーマ ヴィシュヌ神の化身のひとつ
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる