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第2章 これは生き残りのゲーム(2日目)
2ー17 猿
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ドア付近に違和感が生じた。
部屋の電気は点けたまま、壁の時計は12時22分。サントーシュはベッドから這い出して陰に隠れた。
いなくなった同室者たちのベッドを全部ドア前に動かした。三台を奥から順に、最後自分のベッドを少しずらして置いた。
それから各自の机をドアすぐのベッドの上に重ね椅子も組み合わせた。パソコンはどうしようかと思ったが、ディーパックが奴らに殺されたのはPCの電源を抜いて動かそうとしたからではとの話があったのを思い出し、机から下ろしてその場に置くだけにした。
これで襲われた時に寝てしまっていても音で起きるだろう。
横には簡易トイレ。ペットボトル五本分の水が入れてある。予備のミネラルウォーターは他に三本。
それだけの作業を終えると腕は見事な筋肉痛になった。
1時間も経たず寝付かないうちに本当に来た。
ドアが小さく手前に動くが、ベッド三台分の重みで開かない。
更に力が加わったのかドアがゆっくりと動き出した。向こうは1人ではないらしい。
(ぼくを襲いに来たの?)
まだ現実を把握しかねている。
ベッド横を回り少しの開口から簡易トイレを投げつけた。
ドン。簡易トイレは手前ベッドに落ち、恐る恐るで近くに行けなかったため水はあまり外にかからなかった。だがドアの動きは少しの間止まった。
サントーシュは最奥の自分のベッド脇まで舞い戻る。
またドアが動き出したのに対し体重をかけて自分のベッドから押すことで対抗する。
少しまた少し開口が広くなるがしばらく扉は開きそうにはない。次はどの手を使うべきか。
「!」
ガラガラと音を立てて机と椅子が転がる。
細い隙間から1人、身を滑らせた影がベッドの上を飛んでこちらに迫って来る。
(しまった!)
後からもう1人。顔に片方は猿・もう片方は虎の面をすっぽりと着けている。黒く安っぽいコート、白い手袋に見慣れない白い靴。
異様な姿に引き下がるが見る間に接近してきた猿面に片手を握られ、
「痛えっ!」
(うっ!)
急に呼吸が苦しくなる。首に何か巻かれて締められている? そういえばハルジートもー
投げつけようと思っていたミネラルウォーターのボトルは届かない。
右手側の虎面を蹴り付けた。予想より力が入らない。が少し首が緩む。右手でそちら側の縄を掴んで抑える。左の猿面の顎にパンチを浴びせた、つもりが撫でるほどにしかならない。抑える右手を叩き落とされ再度急速に締め付けられる。
苦しい、苦しい、嫌だ!
滅茶苦茶に暴れ首輪の上の縄を押さえようとするが手は滑り周りが霞んでくる。
(嫌だよ! ぼくハヌマーン様大好きなんだ)
猿には殺されたくない!
と顔を背ければ右手虎面の目の開口部、確かにひるんだ色が浮かんだ。
それが見えた最後の光景だった。
覚えがあるが誰の目かー直後、意識が闇に落ちた。
力を失ったサントーシュの首を猿と虎はその後もしばらく締め続けた。
〈注〉
・ハヌマーン インドで人気の高い猿の姿の神
部屋の電気は点けたまま、壁の時計は12時22分。サントーシュはベッドから這い出して陰に隠れた。
いなくなった同室者たちのベッドを全部ドア前に動かした。三台を奥から順に、最後自分のベッドを少しずらして置いた。
それから各自の机をドアすぐのベッドの上に重ね椅子も組み合わせた。パソコンはどうしようかと思ったが、ディーパックが奴らに殺されたのはPCの電源を抜いて動かそうとしたからではとの話があったのを思い出し、机から下ろしてその場に置くだけにした。
これで襲われた時に寝てしまっていても音で起きるだろう。
横には簡易トイレ。ペットボトル五本分の水が入れてある。予備のミネラルウォーターは他に三本。
それだけの作業を終えると腕は見事な筋肉痛になった。
1時間も経たず寝付かないうちに本当に来た。
ドアが小さく手前に動くが、ベッド三台分の重みで開かない。
更に力が加わったのかドアがゆっくりと動き出した。向こうは1人ではないらしい。
(ぼくを襲いに来たの?)
まだ現実を把握しかねている。
ベッド横を回り少しの開口から簡易トイレを投げつけた。
ドン。簡易トイレは手前ベッドに落ち、恐る恐るで近くに行けなかったため水はあまり外にかからなかった。だがドアの動きは少しの間止まった。
サントーシュは最奥の自分のベッド脇まで舞い戻る。
またドアが動き出したのに対し体重をかけて自分のベッドから押すことで対抗する。
少しまた少し開口が広くなるがしばらく扉は開きそうにはない。次はどの手を使うべきか。
「!」
ガラガラと音を立てて机と椅子が転がる。
細い隙間から1人、身を滑らせた影がベッドの上を飛んでこちらに迫って来る。
(しまった!)
後からもう1人。顔に片方は猿・もう片方は虎の面をすっぽりと着けている。黒く安っぽいコート、白い手袋に見慣れない白い靴。
異様な姿に引き下がるが見る間に接近してきた猿面に片手を握られ、
「痛えっ!」
(うっ!)
急に呼吸が苦しくなる。首に何か巻かれて締められている? そういえばハルジートもー
投げつけようと思っていたミネラルウォーターのボトルは届かない。
右手側の虎面を蹴り付けた。予想より力が入らない。が少し首が緩む。右手でそちら側の縄を掴んで抑える。左の猿面の顎にパンチを浴びせた、つもりが撫でるほどにしかならない。抑える右手を叩き落とされ再度急速に締め付けられる。
苦しい、苦しい、嫌だ!
滅茶苦茶に暴れ首輪の上の縄を押さえようとするが手は滑り周りが霞んでくる。
(嫌だよ! ぼくハヌマーン様大好きなんだ)
猿には殺されたくない!
と顔を背ければ右手虎面の目の開口部、確かにひるんだ色が浮かんだ。
それが見えた最後の光景だった。
覚えがあるが誰の目かー直後、意識が闇に落ちた。
力を失ったサントーシュの首を猿と虎はその後もしばらく締め続けた。
〈注〉
・ハヌマーン インドで人気の高い猿の姿の神
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