雷神姫の異世界現代物語

ユウイチ

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47 管理者との対面

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「───っっ。ああ、また倒れちゃったのかぁ」


この短期間で二度もやっちゃうのは情けないとしか思えない。魔法はもっと自重して使うべきだったな·······。


「·······ん?ちょっとマシになってる?」


ふと剥き出しになっていた腕を見ると、心なしか少し呪いの範囲が縮まったような感じがした。

〈|探知(サーチ)〉で自分の体内を探ると、大分瘴気が薄まっていた。


「たぶんアメリアかな。後でお礼をいっておかないと」


回復魔法を扱えるのは、今回のメンバーの中ではアメリアしかいない。

彼女も得意という訳じゃなかったからかなりの負担をかけてしまったと思うし。

〈|収納庫(ストレージ)〉から最上級ポーションと強化のポーションを取り出してあおる。これである程度は動けるようになるはず。強化ポーションは後での反動がどうなるかが気掛かりだけと········背に腹は代えられない。


「取り敢えずこれでいいかな」


流石に薄い夜着で他人のいる屋敷内を歩き回るわけにはいかない。わたしも流石にそこまで羞恥心を捨ててはいないし、一応乙女だしね?

〈|収納庫(ストレージ)〉に入れたままだった適当な服を身に付けて廊下に出る。


「冷たっ!?」


部屋からはカーテンが閉まっていたから分からなかったけど、まだ早朝だったらしい。もう秋だから流石に夜明け直後は少し冷える。

長袖にしたほうが良かったかも·······。

まだ早すぎてほとんどの人は起きてない。

暇すぎたから、とりあえずあてもなく街に出た。


「いや、人っ子一人いないんだけど。まあ、早すぎる時間だし予想はしてたけども」


わかってはいてもこう、なんか寂しい。

しばらく歩いていたらいつの間にか小さな公園に来ていた。


「この近所にこんな公園なんてあったっけ·······?」


見覚えのない公園にあれ?っと首を傾げる。

生まれも育ちもこの街のわたしが、徒歩圏内に知らない公園があるなんて。見た感じそんな新しく作られたものじゃないと思うんだけど········。


「!?」


気になって公園内に踏み込んだ瞬間、あたりの空気が変わったのを感じた。まるで別世界に入り込んだように感じたぐらい。


「———わぁ、これはすごい······」


あたりに広がっていたのはさっきまで見ていた公園ではなく、一面に咲いた花畑だった。


「お待ちしておりました。雷の超越者よ」


「な———っ!?」


突然背後からかけられた声に即座に臨戦態勢を取る。

———ありえない

振り返ったわたしの僅かに五メートルほどの場所に立つ女性の姿に更に警戒度をあげる。

わたしが全く気配に気づかないなんて初めてだった。それも離れた場所にじゃなくて近距離に踏み込まれた状態で僅かな違和感すらなかった。


「そう警戒なさらずともあなたに危害を加えることはありませんよ」


「······有無を言わさずこんなところに連れてきたのに?」


「それについてはご容赦を。本来ならばまず了承を取らなければならないのは承知していますが、最早一刻の猶予も余裕もありません」


わたしと目が合った彼女の黄金の瞳に強く気圧される。


「手短に行きましょう。ワタシは星杯世界アースの管理者ミグリノールと申します。今回は魔法世界フォルニアの代表としてあなたを招きました」


「代表·······?」


管理者、代表?いきなり何の話?

アースは多分地球って意味だよね?わたしの聞こえ方がおかしかったんじゃなかったらこの人は自分を地球の管理者って言ったよね?

管理者って要は世界を管理するもので····ってそれは神では?


「え?えっ?神······?」


「人が言う神が世界を管理するものならばワタシは神ということになるでしょうね」


え?この世界ってマジで神様っていたの!?

いや、自称神はいたけどあの軽いのはノーカンでしょ。

っていうか、わたしが世界の代表ってどういうこと?たしかにわたしは一国の王をしてるけど、うちと同規模の国はいくつかあるはずだし、何ならもっと大きいところだってあるはず。というか帝国があるでしょ!?


「な、なんでわたしが代表者なの?」


わたしの疑問に彼女——ミグリノールがキョトンとしたような目をする。

あれ?なんかおかしなこと言った?心当たりなんて無いんだけど。


「あなたしか神性を持った存在がフォルニアにいなかったからです。先の管理者は二千年前の邪神大戦で消滅してしまいましたからこれは特別措置になります。本来ならば一万年ほどで新たな管理者が生まれるのですが、此度は既に邪神が目覚め始めてしまっています。管理者さえいればそうそう奴らに敗北することはないのですが此度は未だ不在。一刻も早く代理者としてでも誰かを据えなければならなくなったのです」


いやちょっとまって。邪神って復活しかけてるの?それってやばくない?神様が直接動かざる得ないことになってるってことでしょ!?

というか一万年ってスパンが長すぎでしょ。そんなんだから肝心なときに不在になるんでしょうに。

わたしの責任無いよね?


「ちなみにあなたが引き受けなければフォルニアが滅びます」


「卑怯じゃない!?」


わたしが頷くしか事実上選択肢ないじゃん!!世界まるごと1個を人質とかスケールおかしいでしょ。世界の命運とかわたしごときに背負わせるのやめてくれない?また次はストレスで倒れるよ?


「半分とはいえワタシたち神と同じ力を持っているのですから何度倒れても死にはしませんよ」


「そういう問題じゃないでしょ!というかナチュラルに心読んでない!?」


「こっちのほうが早いので」


「プライバシー!!」


フウ、フウと息をつくわたしにミグリノールが首を傾げる。


「もうよろしいですか?」


「──────ああ、うん。もういいよ··········」


まったく響いていなさそうな不毛な突っ込みを早々に諦め、続きを話してもらった。


「簡潔に言えばしばらくの間代理として管理者の座についてほしいということです。現状あなたしか条件を満たす者がいないので」


「ちなみにしばらくって具体的にどれぐらいなの?」


神の言うしばらくなんてどれぐらいになるんだろう?五十年とか百年とか凄い時間になりそうで流石に警戒せざるをえない。


「最低五千年、欲を言えば一万年はほしいですね」


「いや死んでるよ!?」


予想を上回るどころか遥か上空をすっ飛んでいった答えに、思わず声を荒げてしまった。

わたし人間なんですけど?神様の感覚で時間を提示しないで?どうやってもとっくに墓の中だよ!!


「········ああ、あなたは人間でしたね」


········人外とでも言いたいのかな?


「まあ、その力的には怪物と言って差し支えないかと」


ぐっ、ひとが一番気にしていることを·····!!!


「それで、引き受けてくださるということでよろしいですか?」


「わたしが生きている間ならまあ········」


というかどう考えてもわたしが先に死ぬし、その後のことは面倒見切れないし。

そういうのは早めに正式なのを決めてほしい。


「ではお願いします。報酬は先払いで渡しましょう。引き継ぎも早速」


「報酬?何かくれるの?」


「取り敢えずあなたの魔力の底上げと竜をあげます」


「竜?」


「はい。ちょうど数が増えて困っていたので」


それ、体のいい厄介払いでは?と思ったけど、心が読まれる前に飲み込む。

わたしにはあまり意味の無いものだけど、皇国の皇王という視点から見るとかなり価値がある。


「あと、武器を出して」


言われるままに〈神祇〉を出すと、ミグリノールが手を翳す。


「これでワタシの力で強化しておきました。管理者の持つに相応しい物になったでしょう」


試しに軽く振ってみるとまるで前の状態が弱く感じるほどの力を感じた。


「おお·····!これは凄い·····!」


「その武器に魔力を循環させれば魔力を底上げできます。まあ、それはちょっと時間が必要なので後でしておいてください」


「わかった」


〈神祇〉を〈|収納庫(ストレージ)〉に仕舞う。


「引き継ぎはこの世界樹の種です。これを育てて守ってください。魔力を与えれば育ちます」


魔力が肥料兼水というわけかな。育てやすいのはいいことだし、聖城の中庭に植えよう。あそこって無茶苦茶広いのにあまりに使われてないし、ちょうどいいでしょ。


「必要なのはこれぐらいですか。何か質問があれば答えますよ?」


「んー、取り敢えず邪人は殲滅でいいの?」


「はい、問題ありません。彼らはもはや世界の摂理から完全に外れてしまっています。放置してしまうと最悪、世界がバランスを崩して崩壊してしまうでしょう。数が少ないか、もっと力が弱ければ問題ないのですが·····タラレバを言ったところで変わりませんが」


どこか悲しそうな感じが一瞬だけ感じたけどすぐに霧散してしまった。何か強い感情が見えたような気がしたんだけど·······気のせい·······?


「わかったよ。他は········今のところは無いかな。また次があったらその時も聞いていいの?」


「はい、もちろんです。ワタシの用事は済みましたからもとの場所に送っておきましょう」


「ありがとう。って戻してくれないと一人じゃ戻れないんだけどね······」


そもそもの力がミグリノールのほうが大きいからわたしじゃ〈転移〉でも抜けられないし。


「では、後のことは頼みます」


「力は尽くすけど、あまり期待はしないでね」


瞬間、また前触れもなく景色が切り替わり、もとの公園·········ではなく空き地の前になっていた。

どうやら公園はミグリノールの力で作り出された幻影だったみたい。

ふと空を見るとかなり日が高い。


「あれ?今の時間は········」


スマホの時刻を見てみてサアッと血の気が引いていくのを感じた。

─────11:46


「う、嘘でしょ!?」


家を出たのは日の出前だから四時過ぎぐらいだから、かれこれ七時間ぐらい誰にも知らせずに行方不明になっていたことになる。


「い、急いで帰らないと······!!!」


ものの数分で着くはずの家までが果てしなく遠く感じた。

家に帰り着いた後、全員に無茶苦茶怒られたのは言うまでもない。




───────ミグリノールのバカぁぁぁぁぁ!!!!

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