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 部室は全体的に細長く、真上から見ると長方形の形をしていた。実に教室二つ分の広さがある。後方には赤い絨毯の上にグランドピアノが鎮座し、中央には窓から廊下に伸びるモダンな会議テーブルと椅子、前方にはテレビやソファが置かれた豪奢なリビングルーム。

 昔の特別候補生が利用していただけあって、壁面に配されたクローゼットの中には目を覆い隠したくなるような”怪文章”と”生徒開放宣言!”なる応援旗のようなものまであって──

「改めて思うが……特別候補生って相当ヤベェな……」

 会議テーブル前に置かれている椅子に座りながら、俺は呻き声に似た感想を漏らした。

「貴方がそれを言いますか……」

 錦織は額に手をやって呆れている。

「僕も、並みの高校生と比べてズレている自覚はあるが君程ではないよ」

 壱琉は腕組みしながら言う。

「まあ、とにかく部室内は綺麗になった。協力感謝する」

 聞き得て錦織は小さく首肯し、壱琉は「汚れ仕事を……」なんて呟きながらそっぽを向く。

 相変わらずムカつくなコイツ……これは性根を叩きなおしてやらんといかん!

 俺はゴホンッとわざとらしい咳をする。

「……それでだ。早速、部の活動を開始したいと思う。だがその前に、部活の名前を決めたいと思いますー」
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