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「別に大した話じゃない。保護者諸々の事はあっちで対処してくれるみたいだしな」
「…そうですか」
 追求された話といっても俺個人の動機なんかだ。錦織には全く関係がない。
 錦織は横顔を晒し、鋭利な瞳をみせた。
「処罰された女子生徒三人組についてお聞きします。停学という事は当然、学校外での自由は効くのでしょう?であれば、逆恨みといった行動も…」
 言いかけた錦織に俺は掌を突き出して制した。
「まあ、落ち着け。それなんだが登下校時、保護者が同伴で付き添う事になった」
「…それなら、少なくとも襲われる心配はなさそうね」
 廊下の突き当たりには自販機が置いてある窪みがある。錦織はそこへ曲がった。
 錦織は再び壁を背にして、俯きがちに言う。
「如月さん…本当に大丈夫かしら…」
 同じ女子生徒。いや、短期間ではあったものの、如月の側に錦織は寄り添った。思う所があるのだろう。
「俺もこの一件について、少々やり過ぎたのではないかと思った。…でもな、如月は生死を問う境地に立たされた上に、最優先に対処しなければならない学校も機能しない。そんな事実があるから、許される行為とも思える」
 錦織も同意見なのか途中まで小さく相槌を打っていたが、俺が放った最後の言葉だけは飲み込めないようだった。
「私もどうかしていたのかもしれません。確かに到底許さない行為があったのは事実です。でも…もっと他に…簡単な方法が…」
 言葉は上手く紡がれない。酷く葛藤している様でもあった。
「多分俺達は特別候補生という肩書に酔いしれて、結果を急ぎ過ぎたんだ。勿論、助けたいという個人の欲求は絶対的にあった。だから…まずは小さな事から始めようと思う」
 こんな人間だっただろうか?似合わない生真面目な声音で俺は言う。
 錦織はゆっくりと顔を上げると、
「小さな事…?」
 再び廊下へ躍り出た俺は空き教室目掛けて言った。
「ああ。部活動を立ち上げてみようと思う」
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