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さてと。問題はこの次だな…。この取り巻きとやらに僕っ子キャラを演じつつ、ピュアな笑顔で会話を乗り切らなければならない。
「…えっと、失礼だけど何君だっけ?」
俺の一番近くに立つ女子生徒の問い。隣にいるやや静かそうな子も同様の眼差しを向けていた。
はっきり言ってこの反応は至極、当然のものと言える。模範解答はヘイ!ソコノ、ネーチャン!エンジョイシテルゥ~?だが、日本でこうはいかない。なんせ、女子軍勢に突撃する男なのだから。
「夜崎辰巳です…。先程の錦織さん同様、特別候補生の…」
錦織の名前は極力出さぬよう考えていたのだが、話の取っ掛かりを見い出そうとつい口にしてしまう。我ながら不覚。
「えっ、もしかしてあの夜崎くん!?」
目を丸くして、こちらにステップしつつ歩み寄る手前の女子生徒。え?俺ってまさか有名人!?
「あ、あのっ私…高橋美奈と言いますっ」
頬を朱に染めて恥ずかしながらに自名を口にする女子生徒、
「夜崎くん教師の間でも噂になってるらしくて、」
次いで近寄る静か系メガネ女子…。
春よ~遠き~春よ~と風に身を委ねていたのも、どうやら今日でおしまいのようだ。
意外に近かったんだね春って。今、春だから当たり前なんだけど。
並の男子なら今頃、脳内ピンク色。桜が舞い散っている事だろう。花はいずれ散るもの。悲しいなぁ。
冗談。俺は女子に全く興味がない。
男子軍勢が集まって女子の話題をしていたものなら、それはもう嘔吐案件。とにかく、悪乗りは大の苦手。というより害悪。
総合して俺は普遍的コミュニティに関わりたくないのである。あ、でも今は許容範囲。別に、浮かれてるとかそんなのじゃないよ?本当だよ?
「い、いやぁーそんなに認知されてるとは夢にも思わなかったよ」
まあ、教師に流れてるのはやべー奴がいるっていう悪い噂だと思うんですけどね…。
「も、もっと自信持っていいと思いますっ…その…かっこいい…ですし」
隣の女子生徒も恥ずかしながら頷き返す。
まさか、ここに来て容姿を認められるなんて…本当に夢みたい。
興味がないとはいえ、嬉しいものは嬉しい。頬が緩んでも仕方がない。
正直、ここまで詰め寄られると俺も動揺を隠せなくなる。だが、夜崎!ここは鋼の意思だぞ。
「そんなに言われると照れるなぁ」
俺の魂を司る意志が同時に『は?』と言ったようだった。
鋼どころかグミほどの弾力もないゼリーな男。いや、意味わかんねぇな。
「じゃあ、もう朝の会、始まっちゃうから席に戻るねっ」
そう言って足早に席に戻る二人の女子生徒。
青春…。青くなりながら迎える春だと思っていたがそうでもないらしい。
悪くない響きだ。
「…えっと、失礼だけど何君だっけ?」
俺の一番近くに立つ女子生徒の問い。隣にいるやや静かそうな子も同様の眼差しを向けていた。
はっきり言ってこの反応は至極、当然のものと言える。模範解答はヘイ!ソコノ、ネーチャン!エンジョイシテルゥ~?だが、日本でこうはいかない。なんせ、女子軍勢に突撃する男なのだから。
「夜崎辰巳です…。先程の錦織さん同様、特別候補生の…」
錦織の名前は極力出さぬよう考えていたのだが、話の取っ掛かりを見い出そうとつい口にしてしまう。我ながら不覚。
「えっ、もしかしてあの夜崎くん!?」
目を丸くして、こちらにステップしつつ歩み寄る手前の女子生徒。え?俺ってまさか有名人!?
「あ、あのっ私…高橋美奈と言いますっ」
頬を朱に染めて恥ずかしながらに自名を口にする女子生徒、
「夜崎くん教師の間でも噂になってるらしくて、」
次いで近寄る静か系メガネ女子…。
春よ~遠き~春よ~と風に身を委ねていたのも、どうやら今日でおしまいのようだ。
意外に近かったんだね春って。今、春だから当たり前なんだけど。
並の男子なら今頃、脳内ピンク色。桜が舞い散っている事だろう。花はいずれ散るもの。悲しいなぁ。
冗談。俺は女子に全く興味がない。
男子軍勢が集まって女子の話題をしていたものなら、それはもう嘔吐案件。とにかく、悪乗りは大の苦手。というより害悪。
総合して俺は普遍的コミュニティに関わりたくないのである。あ、でも今は許容範囲。別に、浮かれてるとかそんなのじゃないよ?本当だよ?
「い、いやぁーそんなに認知されてるとは夢にも思わなかったよ」
まあ、教師に流れてるのはやべー奴がいるっていう悪い噂だと思うんですけどね…。
「も、もっと自信持っていいと思いますっ…その…かっこいい…ですし」
隣の女子生徒も恥ずかしながら頷き返す。
まさか、ここに来て容姿を認められるなんて…本当に夢みたい。
興味がないとはいえ、嬉しいものは嬉しい。頬が緩んでも仕方がない。
正直、ここまで詰め寄られると俺も動揺を隠せなくなる。だが、夜崎!ここは鋼の意思だぞ。
「そんなに言われると照れるなぁ」
俺の魂を司る意志が同時に『は?』と言ったようだった。
鋼どころかグミほどの弾力もないゼリーな男。いや、意味わかんねぇな。
「じゃあ、もう朝の会、始まっちゃうから席に戻るねっ」
そう言って足早に席に戻る二人の女子生徒。
青春…。青くなりながら迎える春だと思っていたがそうでもないらしい。
悪くない響きだ。
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