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「知ってるよそんなこと。俺達は変わり者だよ」

 『何を今さら』といった声音で返した。すると錦織は、

「そういう事ではありません。問題児といった認識で見られているのではないかという意味です」

「…は?問題児?それはつまり…どういうことだ」

 俺は拍子抜けした表情で食いついた。

 すると、錦織は制服のポケットから携帯を取り出して、画面を見せつけてきた。さっさと見ろという事らしい。

 画面全体を観るに、何らかの評価アプリと思われる。星を五つ単位でつけて評価し、実際の体験談や感想をレビューするものらしい。

 設定は各高等学校の評価で検索したのは俺たちの高校、「豊洲総合高等学校」か。

 どれどれ…

  星三 :名無し 
 タイトル :なんか微妙…

 オシャレで偏差値も高いし、施設充実の学校かと思ったら、授業のスピードがやたら早く、意外に高層階の移動も不便でなんかビミョー。

 なんだよこいつ…。単に自分の不満を書き連ねただけじゃんと苦い顔をしていると、錦織が視線を落とす。問題はその下のレビューらしい。

 星一 :優等生 
 タイトル :問題児を受け入れている変な学校

 特別候補生という肩書を付けた生徒がいたかと思えば、片方を除いてロクに人と喋れなかったり、口を開けば自己主張がやたら強かったりして非常に気持ち悪い。挙句の果てには暴行事件まで起こす始末。学校側の考えていることが理解不能。

 何が優等生じゃボケ!と突っ込みたかった。けれども暴行することを除いて俺そっくりじゃん…と急に寒気が走る。

「一応聞くけど、俺の事じゃないよね…?」

 暴行した覚えはないがつい不安になって錦織に問いかけた。

「二千十五年六月。何年も前のレビューですね」

 平然と錦織は言う。

 いや、マジで焦った。今の世の中、言葉の暴力とか言って訴えられてもおかしくはないからな。

「レビューに基づいて結論を出すと、特別候補生という枠組みは昔から嫌われていたようですね。つまり、周囲の一般生徒にとって私達は要注意人物であり、敵なのですよ」

 錦織が語調を強めて豪語断言した。

「待て待て。それは流石に大袈裟過ぎないか?」

「大袈裟ではありません。周りを見てみて下さい」

 周囲を見やると学生はちらほら散見できて、何処からかひそひそと話す声が聞こえたような気がした。

 俺達が特別候補生だってことをどうやって知ったのかは分からんが、確かに視線は感じる。

 …でもな、俺を問題児の枠組みに押し付けてもらっちゃ困る。俺という生き物は不利な状況だからこそ抗う異端児なのだから。

「特に何もしていないのに罪人扱いってか。…世の中の偏見というのは実に怖いなぁ」

「あら。夜崎くん。案外、余裕そうですね」

 錦織は皮肉めいた声音で言う。

 俺も続いて、過剰なほどの自意識をさらけ出した。

「ああ。こうでなくては面白くない。ボーッとして三年間過ごすほど、つまらないものはないからな。それに学校のみならず社会の常識を変えていくのが俺の最終目標だ。こんな事で引き下がるわけにはいかない」

 つい調子に乗って大口を叩いてしまったが人生に壁は付き物である。寧ろ壁にぶつからなければならない。

 高校生らしからぬ言動。やっぱ俺って大人だわ。
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