瓢箪独楽のショートショート

闇

　俺は今をときめく人気芸能人。帽子、サングラス、大きなマスクが俺の三種の神器だ。
　ある日、そんな俺の元に友達から結婚式の招待状が届いた。

──久しぶりだな、元気してたか？　実は結婚する事になったんだ。お前が忙しいのは重々承知しているが、俺はやっぱりお前に出席してもらいたいんだ。日にちは〇〇月△△日、返事待ってるよ。

（懐かしいなぁ、そうかあいつ結婚するのか……）
親友の幸せな報告に、今俺の顔は多分穏やかな笑顔なんだろう。その笑顔のまま、俺はスマホを手に電話をかける。
暫くの後、懐かしい友の声が受話器から流れてきた。
「おう、久しぶり。招待状見てくれたか？」
懐かしさに少しの恥ずかしさを忍ばせた親友の声は、俺の心をあの頃に戻らせる。
「見たよ。お前が結婚なんて何かの冗談かドッキリじゃねぇのか？」
「あ、ひでぇ」
そんな他愛もない会話が楽しくてたまらない、ただの近況報告や昔話を俺達は暫く楽しんだ。

「ははは……　っと、話に夢中で忘れるところだったわ、お前当日は来れるんだろ？」
「ああ、そういや言い忘れてたな」
いつの間にかそこそこの時間が経っていたらしい。こういう感覚も久しぶりだ。この楽しさにかまけて、本来の用件を忘れていた。ちゃんと答えてやらないとな。

「事務所を通してくれないと闇結婚式になるから、もう一度事務所経由で声をかけてくれ」