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第一幕 ハイランドとローランドの締結
それぞれの強き意思13
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抱えきれない重圧からやっと解き放たれた……という開放感に包まれていた。
腹痛の原因の一つが解決したというように。
だからだろうか?
助けてやりたいって思った。
肩の力を抜き、意識を手放したセシルの顔を見たときは、確かにそう感じたんだ。
私がどうにかしてやりたい、と。
私にできることがあるならば、私の手で……と。
温かな気持ちで、セシルに対する優しさから行動に起こしたつもりだったのにな。結果は違うものになった。
私は鼻で笑うと、首を振った。
やはり、セシルの口から『ジェイミー』という名前が出てくるのが、私の暴挙に出るスイッチだな。
「これで一石二鳥だ。イザベラがこの城に来て、煩わしかった議長の任からおさらばできる。万事解決! それでいいだろ」
「本当にそれでいいんですか?」
「ああ。構わない」
「割に合わない」
ドリュがむすっとすると、私の前から離れて窓の前に立った。
「ジェイミーはどうするのです? 処刑ですか?」
ドリュの声が微かに震える。
私に背を向け、窓から外を眺めているドリュの表情が見えなくて、感情が読みとれない。
なぜ、声色がかわる? 震える理由はなんだ?
「ジェイミーの処刑はしない。もともと公にしていないからな。処刑する必要がない。これからもこの件に関し、大事にするつもりはない。ジェイミーを牢獄から出してやれ」
私はソファから立ち上がると、ごくりと唾を飲み込んだ。
「それとセシルの部屋を用意させろ。私は別の場所で休む」
私は大股で自室を出て行った。
部屋を出て、ふと思う。
『ジェイミー』という名前は、私には苛つきしか生まれない。
己で名前を発しておきながら、苛々している己に自嘲の笑みを浮かべた。
腹痛の原因の一つが解決したというように。
だからだろうか?
助けてやりたいって思った。
肩の力を抜き、意識を手放したセシルの顔を見たときは、確かにそう感じたんだ。
私がどうにかしてやりたい、と。
私にできることがあるならば、私の手で……と。
温かな気持ちで、セシルに対する優しさから行動に起こしたつもりだったのにな。結果は違うものになった。
私は鼻で笑うと、首を振った。
やはり、セシルの口から『ジェイミー』という名前が出てくるのが、私の暴挙に出るスイッチだな。
「これで一石二鳥だ。イザベラがこの城に来て、煩わしかった議長の任からおさらばできる。万事解決! それでいいだろ」
「本当にそれでいいんですか?」
「ああ。構わない」
「割に合わない」
ドリュがむすっとすると、私の前から離れて窓の前に立った。
「ジェイミーはどうするのです? 処刑ですか?」
ドリュの声が微かに震える。
私に背を向け、窓から外を眺めているドリュの表情が見えなくて、感情が読みとれない。
なぜ、声色がかわる? 震える理由はなんだ?
「ジェイミーの処刑はしない。もともと公にしていないからな。処刑する必要がない。これからもこの件に関し、大事にするつもりはない。ジェイミーを牢獄から出してやれ」
私はソファから立ち上がると、ごくりと唾を飲み込んだ。
「それとセシルの部屋を用意させろ。私は別の場所で休む」
私は大股で自室を出て行った。
部屋を出て、ふと思う。
『ジェイミー』という名前は、私には苛つきしか生まれない。
己で名前を発しておきながら、苛々している己に自嘲の笑みを浮かべた。
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