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第一幕 ハイランドとローランドの締結

王家の血筋は尊きなり13

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 俺はカイトの胸を全力で押した。だが、カイトの胸はびくともしない。むしろキスの深さが重くなった。カイトの舌が、俺の口腔内を激しく掻きまわす。

「ちょ……やめ、ろ」
 息の合間合間に声を出す。

 カイトの手が俺の胸の紐に行く。簡単に解けた紐は緩み、胸元が楽になる。
 カイトの指がドレスの中に入り、俺の乳首をそっと摘まんだ。

「んあっ、あん」

 俺の口から甘い声が出る。カイトの指に反応するかのように、俺の腰が意思に反して浮いた。カイトの唇が、俺の口から離れて首筋に落ちて行く。

「な……ちょ、昼寝じゃないのか?」
「昼寝の前に、一運動だ」

「はあ? だって部屋にはまだ…」
「構わん。聞かせてやれ」

「嫌だ!」
「なら、必死に口を閉じてるがいい。私は手を止めるつもりはない」

「ちょ……待て……」

 俺の気持ちを丸っきり無視して、カイトは俺のドレスを剥ぎ取った。俺の上半身が露わになる。ベッドの足もとにある衝立の向こう側から、人の気配がする。

「やめ……ろってば」

 俺は足をばたつかせながら、カイトの金髪を掴んだ。カイトの手は止まらない。

 右手で俺の突起を弄り、左手で俺のドレスを脱がしていった。素っ裸にされるまであと数秒だ。俺の抵抗など空しく散り、ただただ口から洩れそうになる声を手で押さえて食い止めた。

「ん……んっ」

 何の覆いもなくなった俺の身体を、上からカイトが満足そうに覗きこんでくる。半立ちしている俺の逸物を握りしめたカイトが、にやりと笑い、激しく擦り始めた。

「ん、んー、んん」
 俺は頭を激しく横に振る。

 やめろ…やめてくれよ。衝立の向こうには、ジェイミーもドリュもいるんだから。嫌だっ!

 俺の目に涙が浮かんだ。突然、ぴたっとカイトの手が止まる。ギシッとベッドが軋むと、俺の眼前にカイトの顔があった。

「互いに覚悟を決めた者同士……さぞかし強い絆があるのだろうなあ?」
 小声で、カイトの口が動いた。

「き……聞いていたのか?」

「ああ。密談をしたいなら、次からは場所と時間を選ぶんだな……と、言っても『次』を与えるつもりは私には毛頭ないが」
 カイトが俺の上から退くと、『ドリュ!』と叫んだ。

「なんでしょうか」
「この二人から話を聞く必要がありそうだ。接待の用意をしろ」

「畏まりました」とドリュの返事が、少しばかり弾んでいたように感じたのはたぶん……俺だけじゃない。
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