28 / 54
第一幕 ハイランドとローランドの締結
王家の血筋は尊きなり8
しおりを挟む
カイトⅢ世SIDE
『イザベラ様のご様子を伺ったら、すぐに戻りますから』
なんて言って、ドリュが出て行ってからどれくらいの時間が過ぎたのか。つい眠くてソファで一眠りしてしまった。
確か、密使が来ているとかいないとか……そんなことを言っていたのに。私一人で対応していいのか……ドリュの知らないところで勝手に話を纏めると、『知らなかった』とドリュの機嫌が急降下する。
面倒くさいから、それ以来、ドリュ同席で話をしてきたというのに。
私は重い腰を持ち上げると、窓の外を眺めながら立ち上がった。
戻ってこないドリュがいけないのだぞ。
私がくるっと足を回転させると、ガチャリとドアが開き、なんだか疲れ切った表情のドリュがよろよろと入ってきた。
「随分、遅かったな」
「え? あ、ああ。手際の良い裁縫さばきについ見惚れてしまい」
ドリュが私からパッと視線を逸らして、言い訳をする。
嘘だな。何かあったのだろう。
「何かあったな。どうした?」
「いえ。何も」とドリュが小さく首を振り、顔を歪めて首に手を当てていた。
明らかに何かある……だが、言いたくないことを無理に聞きだすのは好きじゃない。そういう私の性格だと知っているドリュだ。
「言いたくなったらいつでも相談しろ」
私は、着衣の乱れを正しているドリュの頭をそっと撫でた。
「平気です。少し寝不足なんでしょうね。誰かさんがよく寝るお人だから」
「よく言う。不眠なのは、ドリュが少しばかり神経質なだけだ」
ドリュが少しだけ表情を崩して微笑んだ。
「密使とはお話になりましたか?」
「いや。これからだ」
「そうですか。では行きましょう。どうせロクな話ではないんでしょうけどね」
「そうだな。昼寝をしないように気をつけよう」
私が冗談のつもりで言った言葉を、ドリュが「そうですね」と軽く流して、歩き出した。
おかしい。何かが変だ。いつもなら、「どうせ数分前まで寝ていたくせに」とか小言っぽい言葉をさらりと言うのに。
ドリュの違和感をピリピリと肌で察知しながら、私は、密使の待つ応接室に向かった。応接室では、一人の男がソファに座って待っていた。
私が室内に入るなり、男がスッと立ち上がる。背筋をぴんと伸ばして、私とドリュを目視した。
「密使なんて言うから、緊張して来てみれば……マックじゃないか」
ソファで、堅い表情のまま立ちつくしている男に声をかけた。ドリュがすっと私から離れて、部屋の隅に立ったのを私は横目で捉えた。
『イザベラ様のご様子を伺ったら、すぐに戻りますから』
なんて言って、ドリュが出て行ってからどれくらいの時間が過ぎたのか。つい眠くてソファで一眠りしてしまった。
確か、密使が来ているとかいないとか……そんなことを言っていたのに。私一人で対応していいのか……ドリュの知らないところで勝手に話を纏めると、『知らなかった』とドリュの機嫌が急降下する。
面倒くさいから、それ以来、ドリュ同席で話をしてきたというのに。
私は重い腰を持ち上げると、窓の外を眺めながら立ち上がった。
戻ってこないドリュがいけないのだぞ。
私がくるっと足を回転させると、ガチャリとドアが開き、なんだか疲れ切った表情のドリュがよろよろと入ってきた。
「随分、遅かったな」
「え? あ、ああ。手際の良い裁縫さばきについ見惚れてしまい」
ドリュが私からパッと視線を逸らして、言い訳をする。
嘘だな。何かあったのだろう。
「何かあったな。どうした?」
「いえ。何も」とドリュが小さく首を振り、顔を歪めて首に手を当てていた。
明らかに何かある……だが、言いたくないことを無理に聞きだすのは好きじゃない。そういう私の性格だと知っているドリュだ。
「言いたくなったらいつでも相談しろ」
私は、着衣の乱れを正しているドリュの頭をそっと撫でた。
「平気です。少し寝不足なんでしょうね。誰かさんがよく寝るお人だから」
「よく言う。不眠なのは、ドリュが少しばかり神経質なだけだ」
ドリュが少しだけ表情を崩して微笑んだ。
「密使とはお話になりましたか?」
「いや。これからだ」
「そうですか。では行きましょう。どうせロクな話ではないんでしょうけどね」
「そうだな。昼寝をしないように気をつけよう」
私が冗談のつもりで言った言葉を、ドリュが「そうですね」と軽く流して、歩き出した。
おかしい。何かが変だ。いつもなら、「どうせ数分前まで寝ていたくせに」とか小言っぽい言葉をさらりと言うのに。
ドリュの違和感をピリピリと肌で察知しながら、私は、密使の待つ応接室に向かった。応接室では、一人の男がソファに座って待っていた。
私が室内に入るなり、男がスッと立ち上がる。背筋をぴんと伸ばして、私とドリュを目視した。
「密使なんて言うから、緊張して来てみれば……マックじゃないか」
ソファで、堅い表情のまま立ちつくしている男に声をかけた。ドリュがすっと私から離れて、部屋の隅に立ったのを私は横目で捉えた。
0
お気に入りに追加
59
あなたにおすすめの小説
膀胱を虐められる男の子の話
煬帝
BL
常におしがま膀胱プレイ
男に監禁されアブノーマルなプレイにどんどんハマっていってしまうノーマルゲイの男の子の話
膀胱責め.尿道責め.おしっこ我慢.調教.SM.拘束.お仕置き.主従.首輪.軟禁(監禁含む)
壁穴奴隷No.19 麻袋の男
猫丸
BL
壁穴奴隷シリーズ・第二弾、壁穴奴隷No.19の男の話。
麻袋で顔を隠して働いていた壁穴奴隷19番、レオが誘拐されてしまった。彼の正体は、実は新王国の第二王子。変態的な性癖を持つ王子を連れ去った犯人の目的は?
シンプルにドS(攻)✕ドM(受※ちょっとビッチ気味)の組合せ。
前編・後編+後日談の全3話
SM系で鞭多めです。ハッピーエンド。
※壁穴奴隷シリーズのNo.18で使えなかった特殊性癖を含む内容です。地雷のある方はキーワードを確認してからお読みください。
※No.18の話と世界観(設定)は一緒で、一部にNo.18の登場人物がでてきますが、No.19からお読みいただいても問題ありません。
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
侯爵令息セドリックの憂鬱な日
めちゅう
BL
第二王子の婚約者候補侯爵令息セドリック・グランツはある日王子の婚約者が決定した事を聞いてしまう。しかし先に王子からお呼びがかかったのはもう一人の候補だった。候補落ちを確信し泣き腫らした次の日は憂鬱な気分で幕を開ける———
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
初投稿で拙い文章ですが楽しんでいただけますと幸いです。
愛などもう求めない
白兪
BL
とある国の皇子、ヴェリテは長い長い夢を見た。夢ではヴェリテは偽物の皇子だと罪にかけられてしまう。情を交わした婚約者は真の皇子であるファクティスの側につき、兄は睨みつけてくる。そして、とうとう父親である皇帝は処刑を命じた。
「僕のことを1度でも愛してくれたことはありましたか?」
「お前のことを一度も息子だと思ったことはない。」
目が覚め、現実に戻ったヴェリテは安心するが、本当にただの夢だったのだろうか?もし予知夢だとしたら、今すぐここから逃げなくては。
本当に自分を愛してくれる人と生きたい。
ヴェリテの切実な願いが周りを変えていく。
ハッピーエンド大好きなので、絶対に主人公は幸せに終わらせたいです。
最後まで読んでいただけると嬉しいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる