昔の恋を忘れましょう

エピソード３ 凛

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「だから。私があなたの婚約者に口説かれるってわかってて社長は私を代理に選んだ。もちろん、私が口説かれても断るのまで見越して。それはあなたに、もう一度婚約者との付き合い方を考えてほしいっていう願いがあるんじゃないの？　このままじゃ、あなた……愛される生活から遠のく。バカにされてるじゃない。隣の部屋にいるのに、他の女を堂々と口説くなんて」
　山野さんが、テーブルに広げてある書類を一つにまとめ始めた。
　クリアファイルに書類を入れると、私に差し出してきた。

「あなたの社長に渡しておいて。OKなら連絡を。準備を進めるわ」
　山野さんが立ち上がる。黒い鞄を肩にかけると、「それじゃあ」と軽く頭を下げて出ていった。

　蓮との付き合いかたを考えろ？ってどういうこと？
　私は誰からも羨ましがられるような生活を手に入れようとしているのに。

　世間からイケメンと言われてる男と、婚約した。お金ももってる。
　私は贅沢を手に入れてるのに。どうして。