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エピソード2 萌
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「萌、ご飯は?」
スーツ姿の悠人がダイニングに入ってきた。少し不機嫌そうに見えてしまうのは、私に罪悪感があるから。
「できてるよ。お弁当も、ここに」と私はカウンターを指でさした。
悠人は毎日、お昼にお弁当を持っていく。社食があるけれど、あまり好きじゃないとか、で。
結婚してからずっと、私がお弁当を作ってる。
料理は得意だから、苦じゃない。
「昨日は、楽しかった?」
「うん。うっかり終電逃しちゃって、ごめんなさい」
「いいよ。僕も、よく終電逃してるから。気持ちはわかるよ」
悠人がにっこりと笑うと、私の胸が痛くなる。
……知ってる。悠人は、うっかり逃してるわけじゃないことも。
わざと。
悠人が朝食を食べてから、お弁当を持って仕事に行くのを見送ってから、私はソファに座り込んだ。
とくに疑ってはなさそう。
良かった。
ピロリン、と携帯が鳴った。
私の肩がピクッと跳ねた。エプロンのポケットに入っている携帯を出すと、開いた。
ラインが届いてた。
相手は、武井くんだった。
駅前のバーでラインを交換をした。私は既婚者だし、送りあうことは無いと思ったけど。
交換しようって言われて嬉しかったから。
タイムラインで、武井くんの近況状況がわかればいいなあ、って気持ちもあった。
直接、やり取りはしなくても「いいね」を押すくらいはしたいなって。
『起きたらいなかったから驚いた。無事に帰れた?』
『ごめん。申し訳なくて。無事に帰れたよ。昨日は、嬉しかった。ありがとう』
送信すると、すぐに既読がついた。
『また会えないか?』
私は目を大きく開けたまま、携帯を太ももの上に落とした。
会えないか?って……。
武井くん、何を言って。
私は慌てて、スマホを待ち受け画面に戻した。
既読になったのは、武井くんはもうわかってるはず。
どうしよう。
会いたい。武井くんに会いたいよ。
でも私は、結婚してる。
子供はいないけど、夫がいる。
武井くんに会って、昨日みたいな流れになったら……。
どうしたらいい?
嬉しい。でも、苦しいよ。
『萌も自分の気持ちに嘘をついてもらいたくない。そりゃ、浮気は世間ではいけないことだけど。それでもね。自分が、自分らしくなれるなら、アリだと思うよ』
武井くんに返事できないまま一日が過ぎて、どうしたらいいのかわからなくて、杏のところに行った。
杏も藤宮くんとのことで悩んでた。二番目でもいいって、腹をくくってた。
すごい。
私はくくれなくて、動揺してる。
会いたい。
会っちゃいけない。
何度もラインを開いては、武井くんの言葉を見つめてる。
杏と別れて、私はカフェに入った。苦くて飲めないのにコーヒーを頼んで、窓際の席で行き交う人々をただ眺めた。
家に帰りたくなかった。帰ったら、一人で私はモンモンとしてしまう。
昨日、旦那は帰ってこなかった。
土日はあまり帰ってこない。仕事……じゃないのは知ってる。
結婚して5年。子どもに恵まれない私たちは、すっかり体の関係は無くなってた。
子作りのために、必死に頑張っていた時期もあった。今思えば、その必死さがいけなかったんだと思う。
次第に旦那は協力的ではなくなり。すっかりセックスレスになった。
2年前から旦那が、家に帰らない日々が増えだした。すぐにわかった。浮気をしているって。
責める気にはなれなかった。私には責める権利はないって思った。
子どもを欲しがっている旦那に、産んであげられなかった。
旦那にその気はもうない時点で、私との間に子どもはもう……。
湯気ののぼるコーヒーを一口飲んで、「にがい」と小さい声で呟いた。
『この案件はもう一度、社に戻って練り直せ。先方は納得してなかった。ライバル社に先に契約されるぞ』
スーツ姿の男女が、近づいてきた。
日曜日に仕事なんだ。働いてる人は大変だなあ。
私は専業主婦で、毎日が休日みたいで。
申し訳ない気持ちになる。
「……春川?」
スーツ姿の男女が、私の席で足を止めると頭上から声がした。
顔をあげると、武井くんが立っていた。
え? ええ?
「あ……武井くん」
『また、会えないか?』というラインの文字が脳裏によぎった。
会った……。
答えを出す前に、武井くんと。
「吉田、先に戻ってろ」と武井くんは茶封筒を女性に渡した。
吉田、と呼ばれていた女性は「はい」と返事をしてカフェを出ていった。
店を出たのを確認してから、武井くんが私の前の席に座った。
「ラインの返事、聞く前に。会えたな」と武井くんが笑った。
「ごめんなさい。迷ってて」
「何を?」
「結婚してるから。旦那がいるのに、その……」
「俺は会いたかった」
武井くんがそう言うと、店員にコーヒーを頼んだ。
「私、結婚してるんだよ」
「知ってる。それでも会いたいと思ったから」
嬉しい。
私も会いたいって思ってた。
「春川、コーヒー苦手じゃなかったか?」
「え?」
なんで知ってるの?
「あ……高校のころの話か」
「今も苦手。飲めないのに頼んだの」
「なんだそりゃ」
「家に帰りたくないから、かな。長居したくて、飲めないコーヒーで粘ろうとしたのかも」
クスっと武井くんが笑って、私の手の上に手を置いた。
「たけ……」
私は手を引っ込めようとするが、武井くんがぎゅっと強く掴んで阻止した。
「家に帰りたくない理由って?」
「それは」
「俺のせい?」
私は下を向いた。
「言って、春川。聞きたい」
「会いたいって思ったの。嬉しかったから。でも、会ったらイケないって思う気持ちもあるの。家に一人でいると、そればっかり考えて」
「春川も会いたいって思ってくれた?」
私は小さくうなずいた。
「……そ。良かった」と武井くんが呟くと、私の手を離してくれた。
店員がコーヒーを運んできてくれた。
武井くんは礼を言うと、カップを口につけた。
静かな時間が流れ始めた。
心地よい時間。
何を話すわけでもなく、武井くんがゆっくりとコーヒーを飲んでる。
カフェで流れている曲とまわりの人たちの会話を聞きながら、私もコーヒーを飲んだ。
「にがい」とぽつりと声を漏らすと、武井くんがクスクスと失笑した。
「飲めるのを頼みなおせ。ここは俺がおごるから」
「え? 悪いよ」
「いいから。コーヒーは俺がもらう」
武井くんが店員を呼んで、新しい飲みものを頼んでくれた。
私の大好きな紅茶が、目の前にくると思わず笑みがこぼれた。
「そうそう、春川はそれがいいんだよ」
「え?」
「顔に何でも出る」
「それ……馬鹿にしてない?」
「してない。正直者だなあって思ってみてた」
「見てた?」
「高校のとき」
武井くんの言葉に、心臓がドキッとした。
高校のとき……?
見てた、私を?
武井くんが?
「萌、何してるんだ」と背後から声をかけられて、私は振り返った。
声でわかる。旦那だ。
武井くんと一緒にいるところを見られた。
さあっと血の気が下がっていくのが分かった。
どうしよう。
振り返るのが怖いよ。
「ほんとに顔に出やすい」と武井くんがぼそっと呟いて、視線をあげた。
旦那を直視して、にっこりと笑った。
「これは、五十嵐さん。こんなところでお会いするとは」
「武井課長!? その節は」
旦那の焦りの含む声が聞こえ、頭をさげる姿が横目に入った。
武井課長???
旦那と武井くんは知り合いなの?
私は横を向くと、旦那と武井くんの二人を視界にいれた。
旦那がまだ、深々と頭をさげたまま動かなかった。
武井くんは、私にウインクすると肩をすくませた。
「顔をあげてください。あの件に関してはまだ、すべて処理できたわけじゃないんですから」
「しかし」
「プライベート……なんですよね?」と武井くんが、ちらっと旦那の後ろに視線を動かした。
私も武井くんを見たほうに視線を向けた。
若い女性がカフェの入り口で、髪をいじりながら立っているのが見えた。
「あ、いえ。違います。外を散歩していたら、妻がカフェにいるのが見えたので」
「そうですか。では俺はお邪魔かな。社に戻る途中で春川とばったり会ったので。一昨日の同窓会ではあまり話せなかったので、お茶に誘ったんです」
武井くんが立ち上がった。
私に「じゃ、また」とあいさつをした武井くんは、店の出入り口へと向かっていった。
入り口に立っていた女性が、武井くんの顔を見てひどく驚いた顔して、お辞儀しているのが見えた。
「同級生?」と旦那が聞いてきた。
私は頷くと、お会計をしている武井くんを見つめた。
スーツ姿の悠人がダイニングに入ってきた。少し不機嫌そうに見えてしまうのは、私に罪悪感があるから。
「できてるよ。お弁当も、ここに」と私はカウンターを指でさした。
悠人は毎日、お昼にお弁当を持っていく。社食があるけれど、あまり好きじゃないとか、で。
結婚してからずっと、私がお弁当を作ってる。
料理は得意だから、苦じゃない。
「昨日は、楽しかった?」
「うん。うっかり終電逃しちゃって、ごめんなさい」
「いいよ。僕も、よく終電逃してるから。気持ちはわかるよ」
悠人がにっこりと笑うと、私の胸が痛くなる。
……知ってる。悠人は、うっかり逃してるわけじゃないことも。
わざと。
悠人が朝食を食べてから、お弁当を持って仕事に行くのを見送ってから、私はソファに座り込んだ。
とくに疑ってはなさそう。
良かった。
ピロリン、と携帯が鳴った。
私の肩がピクッと跳ねた。エプロンのポケットに入っている携帯を出すと、開いた。
ラインが届いてた。
相手は、武井くんだった。
駅前のバーでラインを交換をした。私は既婚者だし、送りあうことは無いと思ったけど。
交換しようって言われて嬉しかったから。
タイムラインで、武井くんの近況状況がわかればいいなあ、って気持ちもあった。
直接、やり取りはしなくても「いいね」を押すくらいはしたいなって。
『起きたらいなかったから驚いた。無事に帰れた?』
『ごめん。申し訳なくて。無事に帰れたよ。昨日は、嬉しかった。ありがとう』
送信すると、すぐに既読がついた。
『また会えないか?』
私は目を大きく開けたまま、携帯を太ももの上に落とした。
会えないか?って……。
武井くん、何を言って。
私は慌てて、スマホを待ち受け画面に戻した。
既読になったのは、武井くんはもうわかってるはず。
どうしよう。
会いたい。武井くんに会いたいよ。
でも私は、結婚してる。
子供はいないけど、夫がいる。
武井くんに会って、昨日みたいな流れになったら……。
どうしたらいい?
嬉しい。でも、苦しいよ。
『萌も自分の気持ちに嘘をついてもらいたくない。そりゃ、浮気は世間ではいけないことだけど。それでもね。自分が、自分らしくなれるなら、アリだと思うよ』
武井くんに返事できないまま一日が過ぎて、どうしたらいいのかわからなくて、杏のところに行った。
杏も藤宮くんとのことで悩んでた。二番目でもいいって、腹をくくってた。
すごい。
私はくくれなくて、動揺してる。
会いたい。
会っちゃいけない。
何度もラインを開いては、武井くんの言葉を見つめてる。
杏と別れて、私はカフェに入った。苦くて飲めないのにコーヒーを頼んで、窓際の席で行き交う人々をただ眺めた。
家に帰りたくなかった。帰ったら、一人で私はモンモンとしてしまう。
昨日、旦那は帰ってこなかった。
土日はあまり帰ってこない。仕事……じゃないのは知ってる。
結婚して5年。子どもに恵まれない私たちは、すっかり体の関係は無くなってた。
子作りのために、必死に頑張っていた時期もあった。今思えば、その必死さがいけなかったんだと思う。
次第に旦那は協力的ではなくなり。すっかりセックスレスになった。
2年前から旦那が、家に帰らない日々が増えだした。すぐにわかった。浮気をしているって。
責める気にはなれなかった。私には責める権利はないって思った。
子どもを欲しがっている旦那に、産んであげられなかった。
旦那にその気はもうない時点で、私との間に子どもはもう……。
湯気ののぼるコーヒーを一口飲んで、「にがい」と小さい声で呟いた。
『この案件はもう一度、社に戻って練り直せ。先方は納得してなかった。ライバル社に先に契約されるぞ』
スーツ姿の男女が、近づいてきた。
日曜日に仕事なんだ。働いてる人は大変だなあ。
私は専業主婦で、毎日が休日みたいで。
申し訳ない気持ちになる。
「……春川?」
スーツ姿の男女が、私の席で足を止めると頭上から声がした。
顔をあげると、武井くんが立っていた。
え? ええ?
「あ……武井くん」
『また、会えないか?』というラインの文字が脳裏によぎった。
会った……。
答えを出す前に、武井くんと。
「吉田、先に戻ってろ」と武井くんは茶封筒を女性に渡した。
吉田、と呼ばれていた女性は「はい」と返事をしてカフェを出ていった。
店を出たのを確認してから、武井くんが私の前の席に座った。
「ラインの返事、聞く前に。会えたな」と武井くんが笑った。
「ごめんなさい。迷ってて」
「何を?」
「結婚してるから。旦那がいるのに、その……」
「俺は会いたかった」
武井くんがそう言うと、店員にコーヒーを頼んだ。
「私、結婚してるんだよ」
「知ってる。それでも会いたいと思ったから」
嬉しい。
私も会いたいって思ってた。
「春川、コーヒー苦手じゃなかったか?」
「え?」
なんで知ってるの?
「あ……高校のころの話か」
「今も苦手。飲めないのに頼んだの」
「なんだそりゃ」
「家に帰りたくないから、かな。長居したくて、飲めないコーヒーで粘ろうとしたのかも」
クスっと武井くんが笑って、私の手の上に手を置いた。
「たけ……」
私は手を引っ込めようとするが、武井くんがぎゅっと強く掴んで阻止した。
「家に帰りたくない理由って?」
「それは」
「俺のせい?」
私は下を向いた。
「言って、春川。聞きたい」
「会いたいって思ったの。嬉しかったから。でも、会ったらイケないって思う気持ちもあるの。家に一人でいると、そればっかり考えて」
「春川も会いたいって思ってくれた?」
私は小さくうなずいた。
「……そ。良かった」と武井くんが呟くと、私の手を離してくれた。
店員がコーヒーを運んできてくれた。
武井くんは礼を言うと、カップを口につけた。
静かな時間が流れ始めた。
心地よい時間。
何を話すわけでもなく、武井くんがゆっくりとコーヒーを飲んでる。
カフェで流れている曲とまわりの人たちの会話を聞きながら、私もコーヒーを飲んだ。
「にがい」とぽつりと声を漏らすと、武井くんがクスクスと失笑した。
「飲めるのを頼みなおせ。ここは俺がおごるから」
「え? 悪いよ」
「いいから。コーヒーは俺がもらう」
武井くんが店員を呼んで、新しい飲みものを頼んでくれた。
私の大好きな紅茶が、目の前にくると思わず笑みがこぼれた。
「そうそう、春川はそれがいいんだよ」
「え?」
「顔に何でも出る」
「それ……馬鹿にしてない?」
「してない。正直者だなあって思ってみてた」
「見てた?」
「高校のとき」
武井くんの言葉に、心臓がドキッとした。
高校のとき……?
見てた、私を?
武井くんが?
「萌、何してるんだ」と背後から声をかけられて、私は振り返った。
声でわかる。旦那だ。
武井くんと一緒にいるところを見られた。
さあっと血の気が下がっていくのが分かった。
どうしよう。
振り返るのが怖いよ。
「ほんとに顔に出やすい」と武井くんがぼそっと呟いて、視線をあげた。
旦那を直視して、にっこりと笑った。
「これは、五十嵐さん。こんなところでお会いするとは」
「武井課長!? その節は」
旦那の焦りの含む声が聞こえ、頭をさげる姿が横目に入った。
武井課長???
旦那と武井くんは知り合いなの?
私は横を向くと、旦那と武井くんの二人を視界にいれた。
旦那がまだ、深々と頭をさげたまま動かなかった。
武井くんは、私にウインクすると肩をすくませた。
「顔をあげてください。あの件に関してはまだ、すべて処理できたわけじゃないんですから」
「しかし」
「プライベート……なんですよね?」と武井くんが、ちらっと旦那の後ろに視線を動かした。
私も武井くんを見たほうに視線を向けた。
若い女性がカフェの入り口で、髪をいじりながら立っているのが見えた。
「あ、いえ。違います。外を散歩していたら、妻がカフェにいるのが見えたので」
「そうですか。では俺はお邪魔かな。社に戻る途中で春川とばったり会ったので。一昨日の同窓会ではあまり話せなかったので、お茶に誘ったんです」
武井くんが立ち上がった。
私に「じゃ、また」とあいさつをした武井くんは、店の出入り口へと向かっていった。
入り口に立っていた女性が、武井くんの顔を見てひどく驚いた顔して、お辞儀しているのが見えた。
「同級生?」と旦那が聞いてきた。
私は頷くと、お会計をしている武井くんを見つめた。
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