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「あ、あ……んぁ。小林……イキそう」
「OK。俺も、一緒に」
 ぐっと僕の腰を掴んだ小林が突き上げてきた。

「ああっ!」と思わず声をあげると、あいつは至極嬉しそうに笑って、さらに深くまで突き上げてくる。

「マヤ、知ってる? マヤが上になると、可愛い声が大きくなるんだ」
「し……知るわけ……あっ、ああっ。んんっ、あ……だめっ、イクっ」
「俺も」

 激しく何度も突かれて、僕は世界が真っ白になった。ビクビクと全身を震わせると、小林の腹の上に白い液を飛ばした。

 快感の波がおさまってくると、僕はごろんとベッドに横になって枕に顔を埋めた。

「シャワー……浴びたい、のに。すごく、眠い」
「うん、寝ていいよ。あとは俺がやっておくから」

「何を……だよ……」
 心地よい怠さを感じながら、僕は重くなる瞼と強い眠気に抵抗できずに、意識を飛ばした。


 居心地の良い夢を見た気がする。ポカポカ温かくて、気持ち良かった。

『俺だけのマヤ』

 フッと瞼を持ち上げると、カーテンの隙間から見える白い光に飛び起きた。

「……しまった!」
 スマホの目覚まし機能を付ける前に寝てしまった。枕元に置いてある置時計に目をやる。朝の四時五十五分と数字が並んでいた。

 ベッドの脇にある棚に置いた覚えのないスマホが置いてあった。液晶画面を付けると、オフにしてあった目覚まし機能がオンになっている。

 汗でべとべとになっているはずの身体なのに、さっぱりしている。

 隣で僕の腰に手を巻き付けて寝ている小林に目をやった。
 もしかして、身体を拭いてくれたのか? さらにはスマホを持ってくるのを忘れていた僕に気付いて、用意してくれた、と?

『あとは俺がやっておくから』
 眠りにつく間際に聞こえた言葉……。本当にやっといてくれたんだ、と心の奥がじんわりと温かくなった。

 ボクサーパンツ姿で寝ている小林の右のわき腹に目がいく。パンツに半分隠れている刺青に目がいく。片翼の刺青が右の腰にある。

 付き合い始めてから知った……が、聞くに聞けない。踏み込んではいけない過去が小林にはあるようで怖い。大学の後輩だった小林……仕事で再会して、付き合い始めた。

 だけど……こいつのプライベートがさっぱり見えない。同棲しているのに……。

 手の中にいたスマホが、朝の起床を教えてくれる。慌てて止めると、ちらっと小林を見つめる……が起きる気配はなかった。

 僕は寝室を後にすると洗面所に向かう。洗濯カゴに入っているモノを確認して、洗濯器に入れていく。小林はいつも、ボクサーパンツとアンダーシャツ、靴下しか入っていない。ワイシャツは出さない。僕は自分の分のワイシャツに、襟元と手首に黒ずみようの液体をかけてから、洗濯器をかけた。

 スーツと同じようにワイシャツもクリーニングに出しているらしい。僕の分も出してくれるって言ってくれたけど……クリーニング代が頭にチラついてしまって断った。
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