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「アレク?」
 俺は顔をあげると、あいつは困ったように笑う。

『愛してる……のに、嫌われたくないのに。ウイル、どうしたらいい? 俺は、お前を抱いていいのか?』
 もしかして、迷っているのか?

 抱きたい……けど抱けない、みたいな。
 意外と、こいつ……可愛いのかも、とか思う自分に、驚きを隠せない。

 アレクに抱かれる? 嫌じゃない。むしろ期待してる部分もあるくらいだ。どうしたら、伝えられる?
 大丈夫だって。抱いてほしいって。

 俺はアレクに微笑んでから、唇にキスをした。これをOKと受け取ってもらえればいいのだが。

「ウイル?」
「アレク、いいよ」

 言葉は通じなくても……わかってもらえる気持ちもある、はず。

 唇を重ねたまま、俺は押し倒された。四つん這いになるように、身体を動かされる。

 ガサゴソと音がしたと思ったら腰を掴まれた。

 入れられる……。

 俺は目をつぶって、少しばかり身を固くした。きっと痛い、はずだ。
 足を閉じたままの状態で、アレクが大きな熱を擦りつけてきた。

 え? 素股?
 入れないのか?

『好きだよ。愛してる。だから、入れない。壊したくないから。今日はこれで……城に戻ったら。俺がギールの言葉を話せるようになったら……ゆっくりと愛し合おう』

 パンパンと肌と肌がぶつかり合う音が聞こえる。
 ナカに入れられたわけじゃないのに、快感が身体に走っていく。

「ん、んっ……んぅ」
 声が、出ちゃう。

 やばいって。バレないようにしなくちゃ……。気づかれないようにしなくちゃなのに。

『ああ、気持ちいい。ウイル、イキそうだ』
 アレクの腰の速さが増していく。

 またっ……俺も、イッちゃう。
 さっきイッたばかりなのに、どうしよう。

 だめっ!

 アレクが行くのとほぼ同時に、俺もシャツの中に白い熱を吐き出した。がくっと力が抜けて、倒れ込むと後ろからアレクが抱きついてきた。

『ウイル、このまま寝てしまえ。今夜はもう動けない。静かにぐっすり……あとは俺が守っておくから』
 低い低音のボイスが心地よい。

 疲れた身体を投げ出したまま、俺は重たくなっていく瞼をゆっくりと閉じた。


     ◇◇◇


 ガサっと音がして、俺は腰に佩いている短剣の柄を掴んだ。

 敵か? 動物か? 仲間か?

 この暗闇で、ここの居場所を突き止められるほうが怪しい気もするが、用心にこしたことはない。

 足音は二つ、いや……違う。人間の足音が一つ……四本足の音が二つ。
 それにこの足のリズム……。

 葉が動く音と同時に、明かりが目に入る。

「ミア、止まれ!」
 俺の声に、ピタッと足音が止まった。

「アレク様の足跡でしたか。追ってきてよかった。一度、落ち合う場所まで行ったのですが、人影がなかったので」
「ああ。傷口が開いた。ウイルを抱きあげて逃げるには、心もとなかったからな」

 俺は足元に不自然にあるロープを引っ張った。眠る前にセットしておいた仕掛けがガサっと動くとナイフが降って反対側にある木の幹に突き刺さった。

「あぶない、あぶない。アレク様が止めてくれなかったら、死んでた」
「怪我人と非力な少年では勝ち目がないからな。仕掛けておいた」

 俺は幹に刺さったナイフを手にとると、革のブーツの中に隠しいれた。

「ミア、ウイルを頼む。今の俺では……逆にウイルを危険にさらしてしまう」
「わかりました。お任せください」

 くそっ。矢傷さえなければ。
 傷口さえ開いてなければ。

 もっと強靭な身体欲しい。たとえ片腕でもウイルを守れるくらいの力が欲しい。
 今回だけだ。次は、俺だけがウイルを守るんだ。
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