復讐と恋心

12

「見せてくれる？」
「え？」

「私が君を抱けたら、復讐をやめて幸せになる道を探す……そう約束をしないか？」
「嫌よ。誰にも見せたくない」
（気持ち悪い身体なんか）

　近藤から視線をそらすと桔梗は、障子と向かい合わせになる。
　近藤は枕元にある蝋燭に火をつけた。

　部屋が明るくなると、立ち上がって桔梗を後ろから抱きしめる。

「それでは困る。君が幸せになれるって証拠が見せられない」
　桔梗は胸が締め付けられる想いに駆られた。

　誰にも見せたくない。
　彼に見せて嫌われたら……。

（嫌われたくないもの）

「駄目よ。嫌われたくない」







「近藤さん！　総司を知らないか？　あいつのせいで俺は……」
　勢いよく障子が開く。

　桔梗は着物を片手に持ったまま、裸で立っていた。土方と目が合うと、慌てて布団の中にもぐる。

「ははあん。近藤さんにも、とうとう女が出来たんだな？」
　机にむかって何か書き物をしていた近藤は振り返ると、土方のことを見上げた。

「総司なら部屋にいるんじゃないか？　それと堀川屋に急ぎで文を渡して欲しい」
　書き終わった紙を大きな和紙に包むと、近藤は立ち上がって土方に手紙を渡した。

「堀川屋？　さっきいた店じゃねえか」
　横になっている桔梗の顔を覗きこもうとする土方。

　桔梗は顔を布団で隠すと、近藤に視線を送った。