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「どうして!」
桔梗は息を切らして近藤の部屋の障子を開けるとそう叫んだ。
彼は布団に横になっている。
眠そうに瞳を開けると、身体を起こして桔梗のことを見つめた。
化粧をして、豪華な着物を着ている自分を見て、彼は桔梗だとすぐに気づいてはくれなかった。
「小西桔梗さんです」
後ろからずっと追いかけてきていた沖田が、桔梗の後ろで足を止めると慌てて口を開く。
「お休みのところ申し訳ありません」
付け加えるように言い、沖田が頭をさげた。
「どうして総司と桔梗ちゃんが一緒に……総司は確か、芹沢さんと……」
何かに気がついたのか、瞳を大きく開けると怖い顔をして沖田のことを見た。
「大丈夫です」
沖田の言葉にホッと肩をなでおろす近藤。
芹沢の身の安否を気にしている彼に、桔梗は頭にくる。
それよりも今は聞きたいことがある。
苛々する気持ちを抑えると、布団の上にいる近藤に跨って胸倉を掴む。そして桔梗は、瞳が零れてしまいそうなくらいに目を見開いた。
「どうして、あんなことを……焼き討ちを知っていたなら、家族全員を助けてくれたって良かったじゃない! どうして私だけなの? 私一人だけなら、助けてくれなかった方が良かった!」
近藤は、胸を掴んでいる桔梗の手を優しく握ると、悲しげな顔をする。
「総司、二人だけにしてくれないか」
沖田は短く返事をすると、障子を静かに閉めた。そして部屋を離れいく足音が聞こえた。
「今は、舞妓さんなんだね」
着物を見るなり、寂しく笑う近藤。
桔梗は彼の手を振り払うと距離を開けて立った。
「芹沢さんを殺そうとしたの?」
近藤は、背を向けて立っている彼女に落ち着いた口調で質問をしてきた。
桔梗は息を切らして近藤の部屋の障子を開けるとそう叫んだ。
彼は布団に横になっている。
眠そうに瞳を開けると、身体を起こして桔梗のことを見つめた。
化粧をして、豪華な着物を着ている自分を見て、彼は桔梗だとすぐに気づいてはくれなかった。
「小西桔梗さんです」
後ろからずっと追いかけてきていた沖田が、桔梗の後ろで足を止めると慌てて口を開く。
「お休みのところ申し訳ありません」
付け加えるように言い、沖田が頭をさげた。
「どうして総司と桔梗ちゃんが一緒に……総司は確か、芹沢さんと……」
何かに気がついたのか、瞳を大きく開けると怖い顔をして沖田のことを見た。
「大丈夫です」
沖田の言葉にホッと肩をなでおろす近藤。
芹沢の身の安否を気にしている彼に、桔梗は頭にくる。
それよりも今は聞きたいことがある。
苛々する気持ちを抑えると、布団の上にいる近藤に跨って胸倉を掴む。そして桔梗は、瞳が零れてしまいそうなくらいに目を見開いた。
「どうして、あんなことを……焼き討ちを知っていたなら、家族全員を助けてくれたって良かったじゃない! どうして私だけなの? 私一人だけなら、助けてくれなかった方が良かった!」
近藤は、胸を掴んでいる桔梗の手を優しく握ると、悲しげな顔をする。
「総司、二人だけにしてくれないか」
沖田は短く返事をすると、障子を静かに閉めた。そして部屋を離れいく足音が聞こえた。
「今は、舞妓さんなんだね」
着物を見るなり、寂しく笑う近藤。
桔梗は彼の手を振り払うと距離を開けて立った。
「芹沢さんを殺そうとしたの?」
近藤は、背を向けて立っている彼女に落ち着いた口調で質問をしてきた。
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