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第三章 似た者同士
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私が朝、出勤すると社内がざわついていた。社内メールにて、専務からの辞令内容が発表されていた。
営業課の佐久間係長が本日付けで総務課へと異動、と。
朝一で、佐久間係長は朝比奈係長に呼び出されて、辞令交付を受けたらしい。部屋から出てきた彼が、私の前で立ち止まると「ちょっといい?」と声をかけられた。
廊下に出ると、佐久間係長がムスッとした顔で私を見てきた。
「あいつ、兄貴に告げ口したの?」
「……え?」
「ミスに気付かないでゴーサインしたのはあいつだろ? それを俺のせいにしやがって」
「なんのこと?」
「だから! 今回の異動の件だよ! 自分が悪いくせに、損失が出たからって俺のせいにして兄貴である朝比奈専務に告げ口したんだろ?って聞いてんだよ。秘書なんだから、わかるだろ」
わかってても、秘書なんだからペラペラ言うわけないじゃない。
それに……朝比奈課長は、報告してもらえなかったって話してた。
「わからない」
「嘘をつくな!」
ガンっと壁を叩かれて、私はびっくりして身を縮めた。
「知りません」
「へえ? あいつら兄弟の肩をもつと?」
「そういうわけじゃない。秘書だからって何でも知ってると思わないで。それに辞令の件で納得できないなら、私にじゃなくて直接、朝比奈専務なり、課長にかけあうべきかと……」
「あいつらが、かけあうと? 失敗の責任を俺に擦り付けるようなヤツらに」
「だから……」
「おいっ、何してんだよ」
横から低い声がして、壁に手をついている佐久間の腕がぐにゃりと曲がっていった。彼の背中に腕がまわり、痛みからか唸り声をあげた。
「何、してんだって聞いてんだよ!」
佐久間の腕を捻り上げた朝比奈課長が、鋭い瞳で睨んでいる。
「いたっ……ただ、話を、して……」
「ただの話をしている奴が、壁を力任せに殴って威嚇しねえだろうが。ああ?」
「朝比奈課長、やめてください」
私は朝比奈課長の腕にそっと触れた。
営業課の佐久間係長が本日付けで総務課へと異動、と。
朝一で、佐久間係長は朝比奈係長に呼び出されて、辞令交付を受けたらしい。部屋から出てきた彼が、私の前で立ち止まると「ちょっといい?」と声をかけられた。
廊下に出ると、佐久間係長がムスッとした顔で私を見てきた。
「あいつ、兄貴に告げ口したの?」
「……え?」
「ミスに気付かないでゴーサインしたのはあいつだろ? それを俺のせいにしやがって」
「なんのこと?」
「だから! 今回の異動の件だよ! 自分が悪いくせに、損失が出たからって俺のせいにして兄貴である朝比奈専務に告げ口したんだろ?って聞いてんだよ。秘書なんだから、わかるだろ」
わかってても、秘書なんだからペラペラ言うわけないじゃない。
それに……朝比奈課長は、報告してもらえなかったって話してた。
「わからない」
「嘘をつくな!」
ガンっと壁を叩かれて、私はびっくりして身を縮めた。
「知りません」
「へえ? あいつら兄弟の肩をもつと?」
「そういうわけじゃない。秘書だからって何でも知ってると思わないで。それに辞令の件で納得できないなら、私にじゃなくて直接、朝比奈専務なり、課長にかけあうべきかと……」
「あいつらが、かけあうと? 失敗の責任を俺に擦り付けるようなヤツらに」
「だから……」
「おいっ、何してんだよ」
横から低い声がして、壁に手をついている佐久間の腕がぐにゃりと曲がっていった。彼の背中に腕がまわり、痛みからか唸り声をあげた。
「何、してんだって聞いてんだよ!」
佐久間の腕を捻り上げた朝比奈課長が、鋭い瞳で睨んでいる。
「いたっ……ただ、話を、して……」
「ただの話をしている奴が、壁を力任せに殴って威嚇しねえだろうが。ああ?」
「朝比奈課長、やめてください」
私は朝比奈課長の腕にそっと触れた。
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