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10 怒られる罪に心当たりはありません。
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なんとか仕事をしてる。過剰に意識してしまう未熟者の私。
月曜日、なんだかいつもとは違う雰囲気に、近づけないと感じたのか誰も寄ってこず。
伊織だけが約束通り席を外すときに声をかけてきた。
どこで何をしてるんだか、結局聞いてない。
集中してるふりで、頭も手も指も動かず。
パソコンの画面が暗くなってハッとすることがあった。
結果残業が増える。はぁ~、ため息が出る。
流石にそれでは仕事にならず、平常心を心がけて、なんとか振る舞うようにした。
そんな中、水曜日まで来た。
「紺野さん、金曜日空いてませんか?飲みましょう。」
特になんの予定もない、と思う。
視線がつい伊織を見そうになるけど、多分誘われてるわよね。
「いいよ。」
「良かったです。詳しくは当日に。」
「よろしく。」
二年目の原田君が満面の笑顔を残して去っていった。
ほんとに可愛いこと。
あの顔で想像を裏切るリーダーシップを発揮している。
飲み会の幹事になる事もしばしば。
この間は恋愛相談をしてただろうと伊織に怒られたのだ。
たまたま近くにいたから話をしてただけだ。
それでも話しやすいのは事実だった。
原田君を見送った後、ちょっと伊織を見た・・・いなかった。
まあ、いいや。
毎日特に用事もないのに連絡はしてる。
どうでもいいこと半分、何故か仕事のこと半分。
未だに自分の席に来て話しかけられるのが苦手だったりするから。
急ぎじゃない事、二人で話したいこと、それを残業中の誰もいない時か、夜お互い自宅で。そこは色気ない。
「明日、泊まりに来いよ。」
「うん・・・・、まあ、早く終わったらね。」
飲み会で伊織だけ二次会とかなるかもしれないじゃない。
そこは無理せず行ってもらってもいい。
そう思った。
それでも少し荷物多めの朝。
気にしないふりで、いつもより余分な分はロッカーにしまい込んだ。
残業しないように、真面目に仕事をして。
終わる。あと少し。
原田君にメモをもらった。
お店の場所と時間、原田君の名前で予約が入ってる事。
「すみません、僕が仕事残りました。すみません。急ぎますので。」
「分かった。頑張って。」
先に帰り支度をして外に出た。
先にお店に向かう。
ちょうどいい時間だった。
ただ、誰も一緒に立たなかった。
皆仕事をしていた。
課内じゃなかった?
伊織は?
知らないお店だったけどすんなりとたどり着けて、先に席に案内された。
小さな個室、六人分の椅子。
こじんまりとした飲み会らしい。
携帯をポケットに入れ、また膨らんだ荷物は隅の椅子に上着とともに置いておく。
だれも来ない。
暇なので伊織に連絡をしてみた。
仕事が終わった時、やはりいなかったから。
『ねえ、もしかと思うけど、今日原田君に誘われてない?』
すぐに返事はきた。
『もう終わったのか?いないと思ったら、原田はそこにいるけど、何のことだ?』
誘われてはいないらしい。
『原田君に誘われて、先にお店に来てるの。全部で六人みたい。てっきり伊織も誘われてると思ってた。誰が来るか聞いてなかったから、謎。』
『ふ~ん。』
なんだ?
『で、終わったら来るんだろう?』
『・・・多分遅くならないから、行けると思う。』
『じゃあ、絶対飲み過ぎるなよ。』
『伊織に言われたくない。』
先週の事を皮肉ったのに。
『じゃあ、駅に着くころ迎えに行くから、連絡して。待ってるから。』
『ありがとう。』
携帯をポケットに入れた。
誰が来るの?
店員さんの声がした。
ノックの音がして男の子がやってきた。
入ってきたのは知らない男の子ひとり。
「お疲れ様です。紺野さん。」
「お疲れ様です・・・・。」
誰?
名前を呼ばれて返事はしたけど。
知らないよね?後輩よね?
「あ、僕原田の同期です。経理の田坂です。初めまして。」
「初めまして。原田君に誘われたの?」
「は、・・・・はい。まあ、そうです。」
「誰が来るか聞いてなかったの、原田君もまだ終わらなくて会社みたいだし。」
「少し遅れるって連絡があって。先に始めててほしいと言うことでした。」
「でもあと二人くるみたいだけど。誰かが。」
「ああ、それは同期のメンバーです。あと少ししたら来ると思います。先にお酒を頼みましょう。皆が揃ったら、改めて乾杯で。」
いいの?
まあ、いいか。
同期会に紛れ込んだのは私?
何故?
もしかしてこの間の愚痴のせい?
「よく原田君とは飲むの?」
「まあ、そうですね。男数人では。」
「紺野さんのところの課も仲がいいみたいですよね?」
「そうかな?割と若い子たちは飲みに行ってるみたいだけど。」
「若い子って、他人事みたいです。そう変わらないじゃないですか。」
確かに原田君は二年目の後輩。だからこの子も。
でも『子』って言ってる時点でどうよ。
「田坂君も原田君と同じ年でしょう?」
「はい、そうです。」
お酒が来て本当に二人で乾杯して飲み始めた。
「紺野さんの年は当たり年って言われてますよね?」
「何が?」
「えっと、結構な割合でしっかりした人が多いと、それぞれ仕事を任されてるみたいな。」
「そう?」
同期の顔を思い出すけど。そうなのかな?
一番に浮かんだのは研究職の蛍。
今の自然派のブランドももとはと言えば蛍の研究の企画でうまくいったものだ。そのブランドの担当には同期くらいの年齢の社員が回されたと言う感じだ。
それでもやっぱり首を倒して考えてしまう。
ふと前を見ると田坂君と目が合った。
「あ、ごめんね。よくわからな過ぎて。」
「そうですか?でも、本当にそう言われてます。だから憧れます。」
「頑張って出世したいの?」
「えっ、違います。なんだか立派な社会人みたいな立場です。そう後輩に思われたいなあと。」
同じことじゃないかと思うけど。
「そうなんだ。上司が良ければ・・・・・って、気もするけど。あとは運もあるし。女性向けの会社だから私みたいに女性が表に立つことも多いしね。」
「少しでも近づけるように頑張ります。」
なんだか可愛い。目標が誰かいるならいいのでは?
経理の同期は・・・・まあ、普通?
経理って仕事量のわりに地味だと言っていた。
頑張れ。
心で応援。
「営業とかは?嫌い?」
「別に話をするのは苦手ではないかもしれませんが、なんだか大変そうだなあって思います。残業続きだし、週末がなくなったりはしますよね。」
「まあ時々ね。イベントがあるしね。平日にたまに外に出るのも気分転換にはなるけどね。」
そんな真面目な話をしてたらまとまって残りのメンバーがやってきた。
「お疲れ様です。」
そう声をかけられても知らない人が多い。
何で私だけ年上なの?
「すみません、紺野さん。遅くなりました。」
そう言って原田君が真ん中に入り、他のメンバーが着席する。
自己紹介もなく。
そのまま飲む、食べる。
呼ばれてる名前で何となくわかる。
今日限りの仲間入りみたいな自分。
本当に何で?
それでも田坂君が気を遣って話しかけてくれるし、お酒も食事も私に回してくれる。いい子だ。今度経理の同期に会ったら褒めておこう。
勧められるがままとはいえお酒は飲み過ぎず。
そこは気をつけよう。
途中からポケットの携帯がうるさいくらいだった。
話の途中で見るわけにもいかず。
誰だ?まあ急用じゃないだろうと、放っておいた。
食事が一通り終わり、デザートを待つ頃には静かになった。
こっそりテーブルの下で携帯を見てみると。
ゲゲッ、伊織の連絡攻撃!
開くと、『終わったらすぐ連絡しろ!』と命令口調で書いてあった。
そのままポケットにしまった。
何だか不機嫌な文字が並んでた気がする。
何か用事がありましたか?
なんて聞くわけにもいかず。
今日飲みに行くって言ったじゃない。
終わったら部屋に行くって言ったのに。
取りあえず大人しくデザートを食べる。
もう満腹。
「紺野さん、この後行けますか?」
「ごめん、他と合流が勝手に決められてるみたい。」
「そうなんですか?送って行かなくても大丈夫ですか?」
「そんなに飲んでないよ。大丈夫。みんなは楽しんできてね。」
「残念です。また飲みましょう。」
原田君もいい子だ。
「二次会不参加ですか?残念です。またの機会を楽しみにしてます。」
田坂君もそう言ってくれた。田坂君もいい子だ。
「うん、またね。いろいろありがとう。」
会計をテーブルで集める。
均等割りで。
少し出る端数を多めにキリのいい所で出して、残りは二次会で使ってもらうことにした。
「ごちそうさまです。」
「そう言われるほどのものは残らないよ。」
もっと出した方が良かったかと一瞬思うくらいのお礼だった。
店を出て、別れて、歩き出してしばらくして、電話を取り出した。
さっきも着信があったのは気が付いていた。
『やっと見たな。すぐ電話をすること!!』
そう書かれていたので従う。
まったく、本当に何で誘われなかったのよ。逆に文句を言った。
「もしもし。終わったけど。」
『すぐに電車に乗ってこっちに来てくれ。』
「どうかしたの?」
『ああ、したね。』
「なんだか機嫌悪い?」
『いいから、早く電車に乗って。俺は駅で待ってる。乗り過ごすなよ。目は覚めてるか?』
「大丈夫よ。乗り過ごさないから。じゃあ、あとで。」
電話を切ってそのまま電車に乗る。
間違えないように降りた。
改札を出たら、そこに立っていた。
「ごめんね、遅くに。わざわざありがとう。」
「ああ、まったく。」
「何が?別にいいでしょう?原田君が誘ってくれたんだよ。なんだか若い子たちばっかりだったけど、気を遣ってくれる子がいて楽しかった。満腹。」
満足して見上げると、静かな顔のまま見下ろされた。
「伊織は?誰かと飲んでた?」
「いや。」
気まずい。
なんだか雰囲気が悪いらしい。
荷物はすっかり持たれてしまって、その荷物を運ぶ伊織について行く私。
空いた手はつながれているし。
その後部屋まで数分間、大人しく歩いた。
部屋に入ってソファに座る。
自分の部屋でもないのにはぁ~とかって深い息をして寛ぐ。
荷物は足元に置かれた。
近くに座られて、体の向きを変えられた。
「で?」
「は?」
「なんで原田は誘ったって?」
「別に金曜日空いてますかって聞かれただけ。てっきり伊織とか他のメンバーも行くと思ったんだもん。」
「今日一番沢山話した男は原田か?」
「ううん、原田君と同期の田坂君、経理の子だって。知ってる?」
「知るか。」
即答された。
「それで、その田坂君と約束したとか?」
「何の?」
「次に飲みに行く約束とか。」
「何で?また飲みましょうねって言い合って別れただけよ。・・・・どうしたの?」
「原田はお前に友達を紹介するって言って出て行ったよ。」
???
「誰?」
「その経理ボーイじゃないのか?」
「別に何も紹介されてないよ。」
「とりあえずただ会わせるだけかもしれないだろう、今回は。」
そう?
「二次会誘われなかったか?」
「誘われたけど、他と合流することになってるって言って断った。」
「彼氏が待ってるって言えばいいのに。」
「何でよ。」
「また誘われるだろう?」
「大丈夫だよ。そんな感じじゃなかったよ。」
呆れた顔をしている。
「その経理ボーイじゃない、他の奴と喋ったか?」
「まあ、原田君が間に入ってくれて、ちょっとは話したかな?」
無言でこっちを見る伊織。
「気のせいだって。」
抵抗する声が弱い。
「本当に全然だったよ。別に個人的な話はしてないし、彼氏のことも聞かれなかったし。」
「いると思ってると思うか?」
そう言われてカチンと来た。
「何でよ、失礼な、何でいないって決めつけれられてるって思うのよ。」
本当に先日までいませんでしたが。一応は言いたい。
「そりゃあ、この間くどくどと相談してたからなあ。あぁ紺野さんは彼氏が欲しいんだろうなあって、優しい原田君が可愛い友達を紹介したくなるよなあ。まさかすぐ近くに彼氏がいるとは思ってないよなあ。」
黙った。
伊織を見た。
呆れた顔をしたままだった。
「何か言うことは?」
「・・・・すみません。」
「油断ならない。まったく隙があり過ぎる。何でだよ。」
怒ってはいないが呆れてる。
そんなんじゃないって、別に普通だったし。
「楽しかったのか?」
「うん、まあ。」
また沈黙。
「お前は気を遣わない女なのか?普通、別にって答えるくらいはするよな。」
「そんなの逆に気を遣ってるって分かるでしょう?嘘つかせたいの?」
「ふ~ん、楽しかったんだ。」
急に近いです。
「普通に普通の親睦会でした。」
思わず小声になって行く。
だって目の前に顔がある。
視線は目を見てるから見つめ合ってます。
目を閉じるべき?
それとも、離れるのが正解?
「キスしてくれよ。」
何で偉そうなのよ。
お願いじゃなくて・・・・何なの?
見つめ合うのに疲れた。
視線を外したら唇を見てしまって。
近寄ったけど、多分最後の瞬間は目を閉じて、寄ってもらったと思う。
タイミングが難しい。
でも、やっぱり一度目だけ。
後はくっついてるのが当たり前なくらい、近くに引き寄せ合って。
「ばらすぞ。あんまりよそ見すると・・・・ばらすからな。」
嫌だ、それは勘弁だ。
「絶対しないから。」
「そう願う。」
さっさとお風呂場に連れていかれて、のんびりシャワーを浴びて、外に出た。
真っ暗だった。
灯りがついてる寝室に行くしかなくて。
適当にバスタオルを広げてお風呂場にかけておく。
寝室を軽くノックしてのぞくとすっかり上半身脱いでる伊織がベッドの上に座って本を読んでいた。
借りたパジャマのままそこまで行った。
「バスタオルお風呂場にかけておいてるけど。」
「のんびりしてたな。わざとか?」
「別に急げとも言われなかったけど。」
「まさかのんびりするなんて思わなかったけど。」
両手を掴まれたまま、ベッドの端に立ってお説教を受けてる。
またまた偉そうな奴。
会社と同じ、伊織は変わらない、ちょっと不機嫌が多かった今日。
「電気は?」
見上げて消す。
真っ暗になった。
伊織が手を離して頭の方の小さなライトをつける。
「いつもこの明るさで寝てるの?」
「いや、真っ暗で寝る。」
「ふ~ん。」
「何でずっと立ってるわけ?」
伊織がのいてくれないとベッドの隙間がないのに。
じっと見下ろす。
その体を飛び越えて奥に行けというの?
動かない伊織に手を引かれて座った。
そのまま手がパジャマを脱がす。
借りた意味がなかった・・・・・。
結局重なりながらだったら飛び越えて奥に行くのも簡単だと分かった。
伊織が下着一枚だと言うことも早々に分かった。
待たせていたことも分かった、気が付いた。
小さな明かりでも表情くらいは見える。
それくらい顔が近くにあって。
「伊織。」
キスの合間に名前を呼ぶ。
「何?」
たまに顔を離されて聞かれる。
わざと?
「別に・・・・。」
恥ずかしくて俯く。呼んだだけだってば。
あっという間に伊織と同じ下着一枚の状態になる。
それだっていらない。
伊織の下着に手をかけてずらすと腰を浮かせてくれた。
同じように自分から脱いで、くっつく。
「たまに素直過ぎてびっくりする。・・・・・疑ったりはしないから。」
散々怒られての、それ?
じゃあ、何?
「ちょっとムカついただけ。」
「知らなかったんだってば。」
「原田にムカついた。」
「それは・・・・原田君は悪くない。」
「じゃあ、やっぱり真帆が悪かったんだな。」
そうでもないはずだけど。
顔を見ると思いっきり笑顔があった。
話の内容と表情があってない。
「やっぱり素直だよな。」
明らかに体を探られて言われた。
今言うな!!
その後は何度名前を呼んでも体も離されずに動きも止まらず。
「ねえ、週の頭、やっぱり変だった?」
「ああ、思いっきり不機嫌みたいな感じだった。眉間にシワ寄ってたけど。」
「だって、やりにくくないの?」
「ない。今回みたいに細かい監視が出来ていい。しばらくは続ける。」
しばらく?
「何を?」
「監視。」
「信じてるって言ったのに。」
「今日の続きがないとは言えない。続いてのお誘いがあるんじゃないか?」
「誘われても、もう行かないから。」
「あああ・・・・経理ボーイががっかりするだろうなあ。」
「そんなことないよ。ねえ、私たちの年って当たり年だって言われてるらしいよ。」
話題を変える。
「何で?」
「そこそこ誰もが優秀だったって。」
「まあ、そうかもな。」
認める?
自分も?
「ねえ、教えてもらったらダメなの?」
「何を?」
「分からないけど、時々いなくなる仕事みたいなもの。」
「ああ、別にいいよ。そんな極秘じゃないよ。でも今じゃなくていいだろう?明日起きてからな。」
そう言ってまた抱き寄せられた。
確かに今じゃない。
現実の仕事の話は今じゃない。
月曜日、なんだかいつもとは違う雰囲気に、近づけないと感じたのか誰も寄ってこず。
伊織だけが約束通り席を外すときに声をかけてきた。
どこで何をしてるんだか、結局聞いてない。
集中してるふりで、頭も手も指も動かず。
パソコンの画面が暗くなってハッとすることがあった。
結果残業が増える。はぁ~、ため息が出る。
流石にそれでは仕事にならず、平常心を心がけて、なんとか振る舞うようにした。
そんな中、水曜日まで来た。
「紺野さん、金曜日空いてませんか?飲みましょう。」
特になんの予定もない、と思う。
視線がつい伊織を見そうになるけど、多分誘われてるわよね。
「いいよ。」
「良かったです。詳しくは当日に。」
「よろしく。」
二年目の原田君が満面の笑顔を残して去っていった。
ほんとに可愛いこと。
あの顔で想像を裏切るリーダーシップを発揮している。
飲み会の幹事になる事もしばしば。
この間は恋愛相談をしてただろうと伊織に怒られたのだ。
たまたま近くにいたから話をしてただけだ。
それでも話しやすいのは事実だった。
原田君を見送った後、ちょっと伊織を見た・・・いなかった。
まあ、いいや。
毎日特に用事もないのに連絡はしてる。
どうでもいいこと半分、何故か仕事のこと半分。
未だに自分の席に来て話しかけられるのが苦手だったりするから。
急ぎじゃない事、二人で話したいこと、それを残業中の誰もいない時か、夜お互い自宅で。そこは色気ない。
「明日、泊まりに来いよ。」
「うん・・・・、まあ、早く終わったらね。」
飲み会で伊織だけ二次会とかなるかもしれないじゃない。
そこは無理せず行ってもらってもいい。
そう思った。
それでも少し荷物多めの朝。
気にしないふりで、いつもより余分な分はロッカーにしまい込んだ。
残業しないように、真面目に仕事をして。
終わる。あと少し。
原田君にメモをもらった。
お店の場所と時間、原田君の名前で予約が入ってる事。
「すみません、僕が仕事残りました。すみません。急ぎますので。」
「分かった。頑張って。」
先に帰り支度をして外に出た。
先にお店に向かう。
ちょうどいい時間だった。
ただ、誰も一緒に立たなかった。
皆仕事をしていた。
課内じゃなかった?
伊織は?
知らないお店だったけどすんなりとたどり着けて、先に席に案内された。
小さな個室、六人分の椅子。
こじんまりとした飲み会らしい。
携帯をポケットに入れ、また膨らんだ荷物は隅の椅子に上着とともに置いておく。
だれも来ない。
暇なので伊織に連絡をしてみた。
仕事が終わった時、やはりいなかったから。
『ねえ、もしかと思うけど、今日原田君に誘われてない?』
すぐに返事はきた。
『もう終わったのか?いないと思ったら、原田はそこにいるけど、何のことだ?』
誘われてはいないらしい。
『原田君に誘われて、先にお店に来てるの。全部で六人みたい。てっきり伊織も誘われてると思ってた。誰が来るか聞いてなかったから、謎。』
『ふ~ん。』
なんだ?
『で、終わったら来るんだろう?』
『・・・多分遅くならないから、行けると思う。』
『じゃあ、絶対飲み過ぎるなよ。』
『伊織に言われたくない。』
先週の事を皮肉ったのに。
『じゃあ、駅に着くころ迎えに行くから、連絡して。待ってるから。』
『ありがとう。』
携帯をポケットに入れた。
誰が来るの?
店員さんの声がした。
ノックの音がして男の子がやってきた。
入ってきたのは知らない男の子ひとり。
「お疲れ様です。紺野さん。」
「お疲れ様です・・・・。」
誰?
名前を呼ばれて返事はしたけど。
知らないよね?後輩よね?
「あ、僕原田の同期です。経理の田坂です。初めまして。」
「初めまして。原田君に誘われたの?」
「は、・・・・はい。まあ、そうです。」
「誰が来るか聞いてなかったの、原田君もまだ終わらなくて会社みたいだし。」
「少し遅れるって連絡があって。先に始めててほしいと言うことでした。」
「でもあと二人くるみたいだけど。誰かが。」
「ああ、それは同期のメンバーです。あと少ししたら来ると思います。先にお酒を頼みましょう。皆が揃ったら、改めて乾杯で。」
いいの?
まあ、いいか。
同期会に紛れ込んだのは私?
何故?
もしかしてこの間の愚痴のせい?
「よく原田君とは飲むの?」
「まあ、そうですね。男数人では。」
「紺野さんのところの課も仲がいいみたいですよね?」
「そうかな?割と若い子たちは飲みに行ってるみたいだけど。」
「若い子って、他人事みたいです。そう変わらないじゃないですか。」
確かに原田君は二年目の後輩。だからこの子も。
でも『子』って言ってる時点でどうよ。
「田坂君も原田君と同じ年でしょう?」
「はい、そうです。」
お酒が来て本当に二人で乾杯して飲み始めた。
「紺野さんの年は当たり年って言われてますよね?」
「何が?」
「えっと、結構な割合でしっかりした人が多いと、それぞれ仕事を任されてるみたいな。」
「そう?」
同期の顔を思い出すけど。そうなのかな?
一番に浮かんだのは研究職の蛍。
今の自然派のブランドももとはと言えば蛍の研究の企画でうまくいったものだ。そのブランドの担当には同期くらいの年齢の社員が回されたと言う感じだ。
それでもやっぱり首を倒して考えてしまう。
ふと前を見ると田坂君と目が合った。
「あ、ごめんね。よくわからな過ぎて。」
「そうですか?でも、本当にそう言われてます。だから憧れます。」
「頑張って出世したいの?」
「えっ、違います。なんだか立派な社会人みたいな立場です。そう後輩に思われたいなあと。」
同じことじゃないかと思うけど。
「そうなんだ。上司が良ければ・・・・・って、気もするけど。あとは運もあるし。女性向けの会社だから私みたいに女性が表に立つことも多いしね。」
「少しでも近づけるように頑張ります。」
なんだか可愛い。目標が誰かいるならいいのでは?
経理の同期は・・・・まあ、普通?
経理って仕事量のわりに地味だと言っていた。
頑張れ。
心で応援。
「営業とかは?嫌い?」
「別に話をするのは苦手ではないかもしれませんが、なんだか大変そうだなあって思います。残業続きだし、週末がなくなったりはしますよね。」
「まあ時々ね。イベントがあるしね。平日にたまに外に出るのも気分転換にはなるけどね。」
そんな真面目な話をしてたらまとまって残りのメンバーがやってきた。
「お疲れ様です。」
そう声をかけられても知らない人が多い。
何で私だけ年上なの?
「すみません、紺野さん。遅くなりました。」
そう言って原田君が真ん中に入り、他のメンバーが着席する。
自己紹介もなく。
そのまま飲む、食べる。
呼ばれてる名前で何となくわかる。
今日限りの仲間入りみたいな自分。
本当に何で?
それでも田坂君が気を遣って話しかけてくれるし、お酒も食事も私に回してくれる。いい子だ。今度経理の同期に会ったら褒めておこう。
勧められるがままとはいえお酒は飲み過ぎず。
そこは気をつけよう。
途中からポケットの携帯がうるさいくらいだった。
話の途中で見るわけにもいかず。
誰だ?まあ急用じゃないだろうと、放っておいた。
食事が一通り終わり、デザートを待つ頃には静かになった。
こっそりテーブルの下で携帯を見てみると。
ゲゲッ、伊織の連絡攻撃!
開くと、『終わったらすぐ連絡しろ!』と命令口調で書いてあった。
そのままポケットにしまった。
何だか不機嫌な文字が並んでた気がする。
何か用事がありましたか?
なんて聞くわけにもいかず。
今日飲みに行くって言ったじゃない。
終わったら部屋に行くって言ったのに。
取りあえず大人しくデザートを食べる。
もう満腹。
「紺野さん、この後行けますか?」
「ごめん、他と合流が勝手に決められてるみたい。」
「そうなんですか?送って行かなくても大丈夫ですか?」
「そんなに飲んでないよ。大丈夫。みんなは楽しんできてね。」
「残念です。また飲みましょう。」
原田君もいい子だ。
「二次会不参加ですか?残念です。またの機会を楽しみにしてます。」
田坂君もそう言ってくれた。田坂君もいい子だ。
「うん、またね。いろいろありがとう。」
会計をテーブルで集める。
均等割りで。
少し出る端数を多めにキリのいい所で出して、残りは二次会で使ってもらうことにした。
「ごちそうさまです。」
「そう言われるほどのものは残らないよ。」
もっと出した方が良かったかと一瞬思うくらいのお礼だった。
店を出て、別れて、歩き出してしばらくして、電話を取り出した。
さっきも着信があったのは気が付いていた。
『やっと見たな。すぐ電話をすること!!』
そう書かれていたので従う。
まったく、本当に何で誘われなかったのよ。逆に文句を言った。
「もしもし。終わったけど。」
『すぐに電車に乗ってこっちに来てくれ。』
「どうかしたの?」
『ああ、したね。』
「なんだか機嫌悪い?」
『いいから、早く電車に乗って。俺は駅で待ってる。乗り過ごすなよ。目は覚めてるか?』
「大丈夫よ。乗り過ごさないから。じゃあ、あとで。」
電話を切ってそのまま電車に乗る。
間違えないように降りた。
改札を出たら、そこに立っていた。
「ごめんね、遅くに。わざわざありがとう。」
「ああ、まったく。」
「何が?別にいいでしょう?原田君が誘ってくれたんだよ。なんだか若い子たちばっかりだったけど、気を遣ってくれる子がいて楽しかった。満腹。」
満足して見上げると、静かな顔のまま見下ろされた。
「伊織は?誰かと飲んでた?」
「いや。」
気まずい。
なんだか雰囲気が悪いらしい。
荷物はすっかり持たれてしまって、その荷物を運ぶ伊織について行く私。
空いた手はつながれているし。
その後部屋まで数分間、大人しく歩いた。
部屋に入ってソファに座る。
自分の部屋でもないのにはぁ~とかって深い息をして寛ぐ。
荷物は足元に置かれた。
近くに座られて、体の向きを変えられた。
「で?」
「は?」
「なんで原田は誘ったって?」
「別に金曜日空いてますかって聞かれただけ。てっきり伊織とか他のメンバーも行くと思ったんだもん。」
「今日一番沢山話した男は原田か?」
「ううん、原田君と同期の田坂君、経理の子だって。知ってる?」
「知るか。」
即答された。
「それで、その田坂君と約束したとか?」
「何の?」
「次に飲みに行く約束とか。」
「何で?また飲みましょうねって言い合って別れただけよ。・・・・どうしたの?」
「原田はお前に友達を紹介するって言って出て行ったよ。」
???
「誰?」
「その経理ボーイじゃないのか?」
「別に何も紹介されてないよ。」
「とりあえずただ会わせるだけかもしれないだろう、今回は。」
そう?
「二次会誘われなかったか?」
「誘われたけど、他と合流することになってるって言って断った。」
「彼氏が待ってるって言えばいいのに。」
「何でよ。」
「また誘われるだろう?」
「大丈夫だよ。そんな感じじゃなかったよ。」
呆れた顔をしている。
「その経理ボーイじゃない、他の奴と喋ったか?」
「まあ、原田君が間に入ってくれて、ちょっとは話したかな?」
無言でこっちを見る伊織。
「気のせいだって。」
抵抗する声が弱い。
「本当に全然だったよ。別に個人的な話はしてないし、彼氏のことも聞かれなかったし。」
「いると思ってると思うか?」
そう言われてカチンと来た。
「何でよ、失礼な、何でいないって決めつけれられてるって思うのよ。」
本当に先日までいませんでしたが。一応は言いたい。
「そりゃあ、この間くどくどと相談してたからなあ。あぁ紺野さんは彼氏が欲しいんだろうなあって、優しい原田君が可愛い友達を紹介したくなるよなあ。まさかすぐ近くに彼氏がいるとは思ってないよなあ。」
黙った。
伊織を見た。
呆れた顔をしたままだった。
「何か言うことは?」
「・・・・すみません。」
「油断ならない。まったく隙があり過ぎる。何でだよ。」
怒ってはいないが呆れてる。
そんなんじゃないって、別に普通だったし。
「楽しかったのか?」
「うん、まあ。」
また沈黙。
「お前は気を遣わない女なのか?普通、別にって答えるくらいはするよな。」
「そんなの逆に気を遣ってるって分かるでしょう?嘘つかせたいの?」
「ふ~ん、楽しかったんだ。」
急に近いです。
「普通に普通の親睦会でした。」
思わず小声になって行く。
だって目の前に顔がある。
視線は目を見てるから見つめ合ってます。
目を閉じるべき?
それとも、離れるのが正解?
「キスしてくれよ。」
何で偉そうなのよ。
お願いじゃなくて・・・・何なの?
見つめ合うのに疲れた。
視線を外したら唇を見てしまって。
近寄ったけど、多分最後の瞬間は目を閉じて、寄ってもらったと思う。
タイミングが難しい。
でも、やっぱり一度目だけ。
後はくっついてるのが当たり前なくらい、近くに引き寄せ合って。
「ばらすぞ。あんまりよそ見すると・・・・ばらすからな。」
嫌だ、それは勘弁だ。
「絶対しないから。」
「そう願う。」
さっさとお風呂場に連れていかれて、のんびりシャワーを浴びて、外に出た。
真っ暗だった。
灯りがついてる寝室に行くしかなくて。
適当にバスタオルを広げてお風呂場にかけておく。
寝室を軽くノックしてのぞくとすっかり上半身脱いでる伊織がベッドの上に座って本を読んでいた。
借りたパジャマのままそこまで行った。
「バスタオルお風呂場にかけておいてるけど。」
「のんびりしてたな。わざとか?」
「別に急げとも言われなかったけど。」
「まさかのんびりするなんて思わなかったけど。」
両手を掴まれたまま、ベッドの端に立ってお説教を受けてる。
またまた偉そうな奴。
会社と同じ、伊織は変わらない、ちょっと不機嫌が多かった今日。
「電気は?」
見上げて消す。
真っ暗になった。
伊織が手を離して頭の方の小さなライトをつける。
「いつもこの明るさで寝てるの?」
「いや、真っ暗で寝る。」
「ふ~ん。」
「何でずっと立ってるわけ?」
伊織がのいてくれないとベッドの隙間がないのに。
じっと見下ろす。
その体を飛び越えて奥に行けというの?
動かない伊織に手を引かれて座った。
そのまま手がパジャマを脱がす。
借りた意味がなかった・・・・・。
結局重なりながらだったら飛び越えて奥に行くのも簡単だと分かった。
伊織が下着一枚だと言うことも早々に分かった。
待たせていたことも分かった、気が付いた。
小さな明かりでも表情くらいは見える。
それくらい顔が近くにあって。
「伊織。」
キスの合間に名前を呼ぶ。
「何?」
たまに顔を離されて聞かれる。
わざと?
「別に・・・・。」
恥ずかしくて俯く。呼んだだけだってば。
あっという間に伊織と同じ下着一枚の状態になる。
それだっていらない。
伊織の下着に手をかけてずらすと腰を浮かせてくれた。
同じように自分から脱いで、くっつく。
「たまに素直過ぎてびっくりする。・・・・・疑ったりはしないから。」
散々怒られての、それ?
じゃあ、何?
「ちょっとムカついただけ。」
「知らなかったんだってば。」
「原田にムカついた。」
「それは・・・・原田君は悪くない。」
「じゃあ、やっぱり真帆が悪かったんだな。」
そうでもないはずだけど。
顔を見ると思いっきり笑顔があった。
話の内容と表情があってない。
「やっぱり素直だよな。」
明らかに体を探られて言われた。
今言うな!!
その後は何度名前を呼んでも体も離されずに動きも止まらず。
「ねえ、週の頭、やっぱり変だった?」
「ああ、思いっきり不機嫌みたいな感じだった。眉間にシワ寄ってたけど。」
「だって、やりにくくないの?」
「ない。今回みたいに細かい監視が出来ていい。しばらくは続ける。」
しばらく?
「何を?」
「監視。」
「信じてるって言ったのに。」
「今日の続きがないとは言えない。続いてのお誘いがあるんじゃないか?」
「誘われても、もう行かないから。」
「あああ・・・・経理ボーイががっかりするだろうなあ。」
「そんなことないよ。ねえ、私たちの年って当たり年だって言われてるらしいよ。」
話題を変える。
「何で?」
「そこそこ誰もが優秀だったって。」
「まあ、そうかもな。」
認める?
自分も?
「ねえ、教えてもらったらダメなの?」
「何を?」
「分からないけど、時々いなくなる仕事みたいなもの。」
「ああ、別にいいよ。そんな極秘じゃないよ。でも今じゃなくていいだろう?明日起きてからな。」
そう言ってまた抱き寄せられた。
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現実の仕事の話は今じゃない。
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