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20 未来へと呪いはつづく、新しい呪われ候補のニュースはうれしい事。
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「でもさあ、矢田っちが変ってたってことなのかな?それとも優も呪いの血に守られてたって事?」
聖がゆっくりと矢田君を見た。
その視線を受けて矢田君が私を見て。
当然、皆が私を見た。
「何で呪いの血に守られることになるの?」
「だってお父さんもお兄さんも無事に着地してるじゃない。そして優まで見事なフィニッシュを決めたら、これは呪いじゃなくて祝福の血だよね。呪いの血はアルコール制限にだけかかって、その血に守られてラッキーな事を成しえるとか?」
そうなのだ、アルコール制限と引き換えにどんでん返しした二人。
それは、どっちがいいんだろう?
それは、まあねえ。
でも、どうあっても呪いの血は哀しい。
お父さんだってグビグビと大きなジョッキでビールを飲みたいだろうし、お兄ちゃんは・・・・どうだろう?
「私だってもっとビクビクしないで飲みたい!」
思わず声に出た。
「ビクビクって、それは周りの事でしょう?どうせ優は酔っぱらってヘラヘラだし、トロンとした顔をしてるんだから。」
「何で、二度しかそんな事になってない!ヘラヘラとかトロンとか断言しなくもいいじゃない。」
「マンモス気分で寝落ちするって、ヘラヘラのトロンでしょう?」
ん?
聖を見たら、佐島君を見て、矢田君を見て。
視線がそんな感じで流れて、私も矢田君を見たら、バッチリ目が合って。
ん?
「狸にファンタジーを求めてた優だから、マンモスと耳の大きな空飛ぶ像との区別がついてるのか不安だけど。ピンクの色の像でもないんだよ。もっとごついはずだよ。」
「分かってるよ。マンモスくらい。骨の大きさくらい分かってるし、ちゃんと想像出来てるし、空を飛ばないのも分かってる!」
「ならいいけど。」
「何?マンモスって?」
「マンモス気分って何ですか?」
マコトと新藤君が漏らした。
あのデートの日の部屋飲みの事情が詳しく伝わったのは佐島君からの聖までだったらしい。
偉い!広めてなかったなんて、内緒にしてくれてたなんて。
だからマコトと新藤君は全く訳が分からない状態。
「矢田君の部屋でお酒を飲むともれなく優がマンモスの話をしながら、マンモスの気分になりながら、マンモスの様に大人しく眠りにつくらしいんだよね。」
「マンモス気分・・・・って、分からない。」
マコトの理解は越えたらしい。
そこはあの写真集がなきゃね。
「動画を撮ってきてほしいよね。トロンとした顔で寝るらしいし、暗くて寂しくて冷たい所で眠るんだって言いながら矢田君にくっついてくるらしいからね。動画じゃなかったらここで披露して欲しい位なのにね。」
「くっつきたくて暗くて寂しくて冷たい所に寝てるマンモスになるの?他にも蛇とかもそんな感じだと思うけど、マンモスがいいの?」
マコト・・・・それは違うよ・・・。
あの写真集ありきなんだから。
でも伝わらないと思う。見てもらうしかないと思う。
「いろいろ違う、ただ一回だけのことだもん。一回しか矢田君の部屋に入ってない。一度しか飲んでない、一度しか寝てない・・・・・う、う、ううたた寝を、飲み過ぎてうたた寝をちょっとしたくらいだし。」
慌てて言い直した。
何で一人で恥ずかしい気分なのよ!
そう思ってそんな一回をばらした矢田君を見たら、私の手は矢田君の腕にガッツリと絡まっていることに気がついた。
近い!
今日は嘘のお酒のはずなのに、新顔に後輩の新藤君を入れて飲んでいて、より慎重になってノンアルコールにしてるるのに。
手を離してグラスを見た。
間違っただろうか?
「鍾乳洞とか洞窟にも興味あったんだ。マンモスいるのかな?」
佐島君が言った。
ちゃんとそこも教えたらしい。
そこ大切でしょう?いきなりマンモス気分になる呪いにはかかってない!
「綺麗な写真集だよ。外国の洞窟がお気に入りなの。色も模様も自然に出来た結晶やつららもすごく綺麗なの。」
「ふ~ん。」
「冒険家になって洞窟を進むより、マンモスになって寝ていたいってことだよね。眠いのに、どうしても矢田っちには引っ付きたいって言うんだから、やっぱり呪いはあるんだね。」
話が元に戻った。
しょうがない、呪いの一族だから。
大学生の時は相手に心当たりがなさすぎて、二人よりも遅れて発症したけど、やっぱり一族の一人だった。
そして今のところ逆転で笑顔にはなれてる。
矢田君がこの間気になったらしく聞いてきた。
『呪いの一族に仲間入りしたら、何か特典はあるのかな?』
『さあ?』
お母さんには聞いてない、さなえさんはどうだろう。
だいたい期待するの?
もしかして仲間入りしたいって思ってるの?
『お酒の席で油断できないとか・・・・。』
『それ特典?』
『他には知らないもん。』
『まあ、可愛く甘えてくる分にはそれが特典だと思ってもいいけど。逆にお母さんとお兄さんの奥さんはどう思うかな?男ならではだよね。』
そう言われて背中をポンポンとされた。
この間お酒もなしに矢田君の部屋で映画を見てすごして、見終わった後にそんなことを言い合った。映画のチョイスは私の責任で、これまたまったく色気のない映画だった。
派手なアクションだったから、しんみりともしっとりともしなかった。
でも隣に座って手はつないでいたし、時々集中して見てると横から頭を抱えられたり、肩を抱き寄せられたり。ちょっとくらいは邪魔だと思ったけど、それでも大人しくもたれたり、手を握り返したりはした。
お酒が入らなければそんな感じだ。
油断してもらっても構わないはずなのだ。
映画が終わったら返しに行くついでにご飯を食べに行った。
部屋を出る前にキスはしたけど、本当にまだ泊まったこともない。
マコトが週末を新藤君と過ごしてる事は知ってる。
いつもクールに振舞えるマコトはちょっとくらい揶揄っても平然としてる。
多分課内の誰も気がついてない。
聖と私と当人同士だけ。
最初から私達先輩に優しい新藤君はいつでも平等に優しくていい子だから。
むしろ一人配属が良かったんだろう。
今度『踊るなんとか』に誘われた。試合を見に来てくださいと。
さり気なく断った。
マコトは行くだろう。
マコトが行けば満足だろう。
だって、その週は泊まりに来ないって誘われたんだから。
初めて誘われたんだから。
正直にマコトには言った。
「じゃあ、・・・・許す。」
許可ももらった。
楽しみな週末は来週。
お母さんにも許可をもらった。
友達と久しぶりに集まるってことにしてある、お父さんがショックで飲み過ぎると面倒だからそうしたと。
何でも話をしてバレてるんだから、そろそろ覚悟してくれてるよね。
どうせいつかバレるんだし。
だってちょいちょいと留守にするかもよ。
そんなに毎週友達に会うのか?って、お父さんも思うよね。
「優、起きてる?ラストオーダーだよ。」
ちょっと頭がトリップしてたみたい。
体を起こして、メニューをもらう。
ん?
何で?
あれ、もたれてた?
隣を見たらちょっと耳が赤いけど。
酔ってないよね、起きてたし、すごく考え事してたよ。いろいろ考えてたよ。
周りを見たら誰にも注目されてなくて・・・と思ったら、新藤君だけがビックリ顔だった。
こっそりと隣に聞いた。
「今、どうなってた?もたれてた?」
「まあ、そんな感じ。」
本当に油断できないらしい。
それでも誰もがそれを普通だと思い始めてる。
当人がいいならいい。みんながそんな感じで。
まったく飲んでないのに。
いつものメンバーよりは気をつけてもいたのに。
酔ってない時も、考え事してるだけの時も、そうなるの?
本当にただの甘えたがりじゃない。
寂しがりのお父さんの子供のお兄ちゃんと私。
二人は甘えたがりの症状が強いようです。
やっぱり呪いは呪いだった。
ねえ、もしかして一番ひどくない?
呪われた血はいつかまた新しい犠牲者を生むんだろう。
だってお兄ちゃんとさなえさんにうれしいことが起こったらしい。
とんでもない酒豪じゃない限り、呪われる可能性があり、犠牲者が出る可能性があり。
それは春になってもすぐには分からない。長い時をかけて、こっそりフライングするとしても18年以上はかけないと分からないから。
正式には20年以降の春に注目したい。
その頃他にも一族候補がいるかもしれない。
末広がりに増える可能性もある。
いつかは酒豪が生まれる可能性もある。
それまでは一族みんなで暖かく、注意しながら見守るしかない。
ずっと先の未来へ続くの呪いなのだから。
終わり
聖がゆっくりと矢田君を見た。
その視線を受けて矢田君が私を見て。
当然、皆が私を見た。
「何で呪いの血に守られることになるの?」
「だってお父さんもお兄さんも無事に着地してるじゃない。そして優まで見事なフィニッシュを決めたら、これは呪いじゃなくて祝福の血だよね。呪いの血はアルコール制限にだけかかって、その血に守られてラッキーな事を成しえるとか?」
そうなのだ、アルコール制限と引き換えにどんでん返しした二人。
それは、どっちがいいんだろう?
それは、まあねえ。
でも、どうあっても呪いの血は哀しい。
お父さんだってグビグビと大きなジョッキでビールを飲みたいだろうし、お兄ちゃんは・・・・どうだろう?
「私だってもっとビクビクしないで飲みたい!」
思わず声に出た。
「ビクビクって、それは周りの事でしょう?どうせ優は酔っぱらってヘラヘラだし、トロンとした顔をしてるんだから。」
「何で、二度しかそんな事になってない!ヘラヘラとかトロンとか断言しなくもいいじゃない。」
「マンモス気分で寝落ちするって、ヘラヘラのトロンでしょう?」
ん?
聖を見たら、佐島君を見て、矢田君を見て。
視線がそんな感じで流れて、私も矢田君を見たら、バッチリ目が合って。
ん?
「狸にファンタジーを求めてた優だから、マンモスと耳の大きな空飛ぶ像との区別がついてるのか不安だけど。ピンクの色の像でもないんだよ。もっとごついはずだよ。」
「分かってるよ。マンモスくらい。骨の大きさくらい分かってるし、ちゃんと想像出来てるし、空を飛ばないのも分かってる!」
「ならいいけど。」
「何?マンモスって?」
「マンモス気分って何ですか?」
マコトと新藤君が漏らした。
あのデートの日の部屋飲みの事情が詳しく伝わったのは佐島君からの聖までだったらしい。
偉い!広めてなかったなんて、内緒にしてくれてたなんて。
だからマコトと新藤君は全く訳が分からない状態。
「矢田君の部屋でお酒を飲むともれなく優がマンモスの話をしながら、マンモスの気分になりながら、マンモスの様に大人しく眠りにつくらしいんだよね。」
「マンモス気分・・・・って、分からない。」
マコトの理解は越えたらしい。
そこはあの写真集がなきゃね。
「動画を撮ってきてほしいよね。トロンとした顔で寝るらしいし、暗くて寂しくて冷たい所で眠るんだって言いながら矢田君にくっついてくるらしいからね。動画じゃなかったらここで披露して欲しい位なのにね。」
「くっつきたくて暗くて寂しくて冷たい所に寝てるマンモスになるの?他にも蛇とかもそんな感じだと思うけど、マンモスがいいの?」
マコト・・・・それは違うよ・・・。
あの写真集ありきなんだから。
でも伝わらないと思う。見てもらうしかないと思う。
「いろいろ違う、ただ一回だけのことだもん。一回しか矢田君の部屋に入ってない。一度しか飲んでない、一度しか寝てない・・・・・う、う、ううたた寝を、飲み過ぎてうたた寝をちょっとしたくらいだし。」
慌てて言い直した。
何で一人で恥ずかしい気分なのよ!
そう思ってそんな一回をばらした矢田君を見たら、私の手は矢田君の腕にガッツリと絡まっていることに気がついた。
近い!
今日は嘘のお酒のはずなのに、新顔に後輩の新藤君を入れて飲んでいて、より慎重になってノンアルコールにしてるるのに。
手を離してグラスを見た。
間違っただろうか?
「鍾乳洞とか洞窟にも興味あったんだ。マンモスいるのかな?」
佐島君が言った。
ちゃんとそこも教えたらしい。
そこ大切でしょう?いきなりマンモス気分になる呪いにはかかってない!
「綺麗な写真集だよ。外国の洞窟がお気に入りなの。色も模様も自然に出来た結晶やつららもすごく綺麗なの。」
「ふ~ん。」
「冒険家になって洞窟を進むより、マンモスになって寝ていたいってことだよね。眠いのに、どうしても矢田っちには引っ付きたいって言うんだから、やっぱり呪いはあるんだね。」
話が元に戻った。
しょうがない、呪いの一族だから。
大学生の時は相手に心当たりがなさすぎて、二人よりも遅れて発症したけど、やっぱり一族の一人だった。
そして今のところ逆転で笑顔にはなれてる。
矢田君がこの間気になったらしく聞いてきた。
『呪いの一族に仲間入りしたら、何か特典はあるのかな?』
『さあ?』
お母さんには聞いてない、さなえさんはどうだろう。
だいたい期待するの?
もしかして仲間入りしたいって思ってるの?
『お酒の席で油断できないとか・・・・。』
『それ特典?』
『他には知らないもん。』
『まあ、可愛く甘えてくる分にはそれが特典だと思ってもいいけど。逆にお母さんとお兄さんの奥さんはどう思うかな?男ならではだよね。』
そう言われて背中をポンポンとされた。
この間お酒もなしに矢田君の部屋で映画を見てすごして、見終わった後にそんなことを言い合った。映画のチョイスは私の責任で、これまたまったく色気のない映画だった。
派手なアクションだったから、しんみりともしっとりともしなかった。
でも隣に座って手はつないでいたし、時々集中して見てると横から頭を抱えられたり、肩を抱き寄せられたり。ちょっとくらいは邪魔だと思ったけど、それでも大人しくもたれたり、手を握り返したりはした。
お酒が入らなければそんな感じだ。
油断してもらっても構わないはずなのだ。
映画が終わったら返しに行くついでにご飯を食べに行った。
部屋を出る前にキスはしたけど、本当にまだ泊まったこともない。
マコトが週末を新藤君と過ごしてる事は知ってる。
いつもクールに振舞えるマコトはちょっとくらい揶揄っても平然としてる。
多分課内の誰も気がついてない。
聖と私と当人同士だけ。
最初から私達先輩に優しい新藤君はいつでも平等に優しくていい子だから。
むしろ一人配属が良かったんだろう。
今度『踊るなんとか』に誘われた。試合を見に来てくださいと。
さり気なく断った。
マコトは行くだろう。
マコトが行けば満足だろう。
だって、その週は泊まりに来ないって誘われたんだから。
初めて誘われたんだから。
正直にマコトには言った。
「じゃあ、・・・・許す。」
許可ももらった。
楽しみな週末は来週。
お母さんにも許可をもらった。
友達と久しぶりに集まるってことにしてある、お父さんがショックで飲み過ぎると面倒だからそうしたと。
何でも話をしてバレてるんだから、そろそろ覚悟してくれてるよね。
どうせいつかバレるんだし。
だってちょいちょいと留守にするかもよ。
そんなに毎週友達に会うのか?って、お父さんも思うよね。
「優、起きてる?ラストオーダーだよ。」
ちょっと頭がトリップしてたみたい。
体を起こして、メニューをもらう。
ん?
何で?
あれ、もたれてた?
隣を見たらちょっと耳が赤いけど。
酔ってないよね、起きてたし、すごく考え事してたよ。いろいろ考えてたよ。
周りを見たら誰にも注目されてなくて・・・と思ったら、新藤君だけがビックリ顔だった。
こっそりと隣に聞いた。
「今、どうなってた?もたれてた?」
「まあ、そんな感じ。」
本当に油断できないらしい。
それでも誰もがそれを普通だと思い始めてる。
当人がいいならいい。みんながそんな感じで。
まったく飲んでないのに。
いつものメンバーよりは気をつけてもいたのに。
酔ってない時も、考え事してるだけの時も、そうなるの?
本当にただの甘えたがりじゃない。
寂しがりのお父さんの子供のお兄ちゃんと私。
二人は甘えたがりの症状が強いようです。
やっぱり呪いは呪いだった。
ねえ、もしかして一番ひどくない?
呪われた血はいつかまた新しい犠牲者を生むんだろう。
だってお兄ちゃんとさなえさんにうれしいことが起こったらしい。
とんでもない酒豪じゃない限り、呪われる可能性があり、犠牲者が出る可能性があり。
それは春になってもすぐには分からない。長い時をかけて、こっそりフライングするとしても18年以上はかけないと分からないから。
正式には20年以降の春に注目したい。
その頃他にも一族候補がいるかもしれない。
末広がりに増える可能性もある。
いつかは酒豪が生まれる可能性もある。
それまでは一族みんなで暖かく、注意しながら見守るしかない。
ずっと先の未来へ続くの呪いなのだから。
終わり
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