22 / 34
22 何だかいろいろと『普通』について考える日 ~友田の予定調和
しおりを挟む
ぼんやりと朝が来たと思った。
月曜日だ。仕事に行く日だ。新しい一週間だ。
時計を見るとあと4分。
目を閉じてまどろむ。
昨日も何度も電話をしようと思った。
そのたびに何を話そうかと考えて、携帯を置いた。
何度かそんな事を繰り返すと、さすがに嫌になった。
用がないなら別にいい。
それでもポケットに入れて、財布を持ってふらりと家を出た。
気分転換をしたくて髪を切ろうと思い立って、呼ばれた椅子に座る。
「同じように、ちょっとだけスッキリお願いします。」
そういうリクエストにさっさとハサミが軽快な音を立てる。
扱いにくい髪でもない、変な癖もないし、特に目指す髪型もない。
このところ伸びたらその分を切るという実にシンプルなリクエストを繰り返しているだけだ。
これで本当に気分転換になるのかすら怪しい。
本当に気分的な問題ということで。
少し軽くなった気分で外に出る。
当然一時間もかかってない。
しょうがないので本屋をぶらぶらして、コーヒーを買いに行き、夕ご飯を買って部屋に帰った。
確かにペットの一匹でもいればずっと眺めていてもいいかもしれない。
ハリネズミを撫でる彼女の指を思い出す。
音痴な九官鳥。
その九官鳥に歌を教えたのは小学生の頃の彼女だろう。
子どもの頃はたいてい音程が落ち着かない。
音痴と決めてよかったのだろうか?
もしかしたら素直に子供らしい彼女の音程を模倣をした九官鳥だったのかもしれない。
彼女の子どもの頃のそんな映像が思い出され笑顔になりそうだ。
必要以上に彼女を子供だと思いたい自分がいる。
妹や後輩、部下というくくりに押し込める様に。
だからあの時も抱きしめてもそのままの温もりしか感じないようにしていた。
『抱きたいかと言ったら・・・・今はまだそうは思わないんだ。ここに二人でいても。』
本当にひどい事を言ったと思う。
あれから部屋に来てもらうことはない。
今ならどうだろう。
自分の部屋に二人でいて、手をつないだり肩を抱いたりして。
部屋でそうして、彼女が見上げる顔を見ても、やっぱりそう思うことはないのだろうか。
薄々気が付いてるのにどこまでも自分を誤魔化す。
考えてるのは彼女の事ばかり。
誤魔化すのに何の意味があるのかもはや分からなくなってきている。
一体自分は何を確かめたいのか。
昨日も早めに電車に乗って手を振って別れた。
部屋に誘われることを期待してただろうか?
思わないでもなかったけど、そのままひとりで電車を降りた自分。
考え事はあっという間に時間を飲み込んで、買って来た出来立てのお弁当もすっかり冷えてしまった。
箸を割りながらも考えていた。
電話してみようか。
何をしてるだろうか?
結局そのまま考えただけで、携帯を眺めただけで弁当が空になったら、のんびりと湯船につかってそのまま過ごした。
中途半端な気分の月曜日。
花田さんには今の自分はどう判断されるのだろうか?
浮かれてはいない、沈んでるのか、いつも見ていた普通の気分のふり幅の底辺・・・・。
そう思ったら休みだった。
元々予定していたらしい。
ちょっとだけホッとした。
日常にどっぷり浸かりながら仕事を淡々とこなす。
一息ついたときに隣の分析器のところに段田君がいるのに気がついた。
結果待ちの状態で少し離れてぼんやりしている。
「段田君、お疲れ。」
「お疲れ様です。」
普通に普通の青年だ。
良くいるタイプ。突出することはないタイプ。
普通の地味子。まあ、そっち寄りだ。
「週末何してたの?」
「えっとですね、彼女と適当にぼんやりと過ごしました。DVD一枚見て、返しに行くついでにご飯食べて、スーパーで買い物して、あとは部屋でゴロゴロ、ゲームしてました。」
彼女いたんだ。地味って言うカテゴリーでも、普通でも、それはいるものなんだ。
「一緒に住んでるの?」
「はい。まあ、家賃安くあげて貯金にしようと。」
「先を見て?」
「まあ、そうです。」
う~ん、やるなお主。思わずそうつぶやきそうになる。
「しっかりしてるね。段田君。意外・・・かな?」
「僕じゃなくて彼女ですね。ほとんど仕切られてますから。いろいろ楽です。」
「家事とかの事?」
「違います。さすがにそこはちゃんとやってます。分担制です。その辺は甘くないです。『私はあなたの母親じゃない。』って最初に言われましたから。そうじゃなくて大きな決断とか、計画性は明らかに彼女の方があるんです。僕は提案されて頷くだけです。」
「しっかり者の彼女か。」
何だろう、大きな決断。
もしや逆プロポーズだったとか?
「そういえば段田君の年の子は同期会とかやらないの?」
さり気なく聞いてみた。
「そうですね、ほとんどないです。個人的に二、三人仲がいいのはいますけど、全体でって事にはならないです。友田さんの年は仲がいいんですか?」
「そうだね、今度土曜日の昼間に召集かかったよ。やめた奴も集めるくらいに全員に。どのくらい集まるかは知らないけど。」
「へえ、そういうものですか。僕たちの中じゃあ誰も言い出さないですね。」
「年によって違うね。」
「彼女はよく同期の女子会って金曜日に飲んできてます。だから女子はあるかもしれませんね。」
「研修中あんまり仲良くならなかった?」
「女子とですか?そうですね。あんまり。個人的にカップルが誕生してたりはしてたみたいですが、別に。もしかして男子の部屋に女子もなだれ込んで飲んだとか、そういうことあったんですか?」
「部屋はないけど、食堂で皆で宴会してたよ、ほぼ毎日。」
「ないです。そんな感じはなかったです。その辺が違うんですね。ちょっとうらやましいです。」
そうなのか。仲がいい年だったんだな。
もしくは研修を舐めていたか。大学生のノリだったからな。
「でも今度ちょっと女子を入れて飲もうとは言ってます。一人、ちょっとだけ一緒に飲みたい子がいて。」
「そんな問題発言いいの?彼女にバレたら大変だよ。」
「僕じゃないです。友達のためにです。今週声をかけて誘ってもらう様にしてるんです。直接は誘えないので友達を経由しての遠回りです。」
「ふ~ん。」
ピピピピ・・・・。
分析器が終わりを告げて会話もそこで終わった。
わざわざ話しかけたのは彼女の同期だったから、ちょっと聞いてみただけだった。
それなのに最後の方はすっかり忘れていた。
月曜日の夜、会社でも会えなかった日。
思い立って電話をしてみた。
段田君に話をしたように普通に聞いてみればいい。
あまり考えずに。
『お疲れ様。もうまったりしてる時間?』
『お疲れ様です。とっくにゴロゴロタイムです。』
すぐにそう返信が来て、電話に切り替えた。
「お疲れ、つくしちゃん。」
『お疲れ様です、友田さん。さっき文字で言いましたが。』
「今日は・・・・変わったことなかった?金子は近寄ってこなかった?」
『金子さんは特に。別に話はしてないです。それに忙しそうでしたよ。』
「そう、別に金子とはどうでもいいけど。ねえ、日曜日何してた?」
『特別には何も。適当に部屋で雑誌を見て過ごしてました。駅の向こうに新しくベーグル屋さんが出来たので買いに行ったくらいです。だらだらとした週末でした。』
「そう。」
じゃあお昼でも誘えばよかったかな?そう言いたかったけど。
『友田さんは?何してました?』
すぐに聞き返されて。
「髪の毛切って本屋で立ち読みして、お弁当買って帰って、後は気に入ったコーヒー豆を買ってきたくらい。ゴロゴロまったり。」
『じゃあ、ベーグルもって、コーヒーをご馳走になりにいけばよかったです。残念でした。』
軽く言われた。
「そうだね、電話すればよかったな、やっぱり。」
そう答えた。
少し沈黙があり。
「今週の金曜日は?何か予定あるの?」
一緒にまた飲もうかと誘いたくて聞いた。
てっきり『ないです。』という返事を想定していたし。
『金曜日は同期の人に誘われたんです。飲み会、男女三人くらいづつ集まるみたいです。詳しくは聞いてないんですが。』
「珍しいね。」
『初めてかもしれないです。誰かが言い出したみたいですが。』
「そうなんだ。残念・・・・。」
昼に聞いた段田君の話。遠回りに誘いたい女子同期・・・・。
まさか、・・・・・どうだろう?
自分が黙り彼女も黙る。
「じゃあ、遅くなるね、きっと。」
『はい、多分。』
じゃあ、週末でもいいじゃないか。ゆっくりできるのに。そう思ったのに。
「じゃあ、木曜日は?」
自分は何で平日に誘いたいんだ?
『大丈夫ですよ。どうしても、夜飲みたいんですか?』
そう思うだろうなあ、自分もそう思ったし。
笑いながら聞かれた。
「うん、何だか・・・つくしちゃんの顔を見て飲みたいかな。」
ちょっとの間があって。
『じゃあ、木曜日、この間みたいに時間を教えてください。』
「うん、残業しないようにするつもり。もし、無理そうだったら連絡するから。そうしたら・・・・週末に。」
『はい、どうせ空いてます。』
「そんな事言って、金曜日盛り上がって朝まで飲み続けて起きれないとか・・・。」
『大丈夫です。そうなっても多分・・・途中は寝てます。』
「そうだったね。忘れてた。」
『あんまり納得しないでください。ちゃんとそうならないように控えます。』
「そうだね、どこで目が覚めるか分からないからね。金曜日遅くなるようだったら電話してくれてもいいよ。迎えに行くから。ベッドもあるし。」
冗談に聞こえるようにそう言った。
もし、段田君の言った話の中心に彼女がいたとしたら。
どこで目覚めるだろう。
『大丈夫です。』
ただ、そう断られた。
「じゃあ、木曜日は空けておいてね。」
『はい。』
「じゃあ、楽しみにしてるね。お休み。」
『・・・・・友田さん、あの、電話ありがとうございました。おやすみなさい。』
そう言って切れた。
段田君には今さら詳しくは聞けない。
でも滅多にない同期との飲み会。
きっと同じ飲み会の事を言ってるだろう。
どうなんだろう。
三人対三人って言った。確率は二分の一。
遠回りと言ったからには直に誘われていないだろうから。
だから木曜日にした。
前の日に・・・・確認したいと思った。何を?
とりあえず、それでいいとしよう。
木曜日残業無しの予定で行こう。
月曜日だ。仕事に行く日だ。新しい一週間だ。
時計を見るとあと4分。
目を閉じてまどろむ。
昨日も何度も電話をしようと思った。
そのたびに何を話そうかと考えて、携帯を置いた。
何度かそんな事を繰り返すと、さすがに嫌になった。
用がないなら別にいい。
それでもポケットに入れて、財布を持ってふらりと家を出た。
気分転換をしたくて髪を切ろうと思い立って、呼ばれた椅子に座る。
「同じように、ちょっとだけスッキリお願いします。」
そういうリクエストにさっさとハサミが軽快な音を立てる。
扱いにくい髪でもない、変な癖もないし、特に目指す髪型もない。
このところ伸びたらその分を切るという実にシンプルなリクエストを繰り返しているだけだ。
これで本当に気分転換になるのかすら怪しい。
本当に気分的な問題ということで。
少し軽くなった気分で外に出る。
当然一時間もかかってない。
しょうがないので本屋をぶらぶらして、コーヒーを買いに行き、夕ご飯を買って部屋に帰った。
確かにペットの一匹でもいればずっと眺めていてもいいかもしれない。
ハリネズミを撫でる彼女の指を思い出す。
音痴な九官鳥。
その九官鳥に歌を教えたのは小学生の頃の彼女だろう。
子どもの頃はたいてい音程が落ち着かない。
音痴と決めてよかったのだろうか?
もしかしたら素直に子供らしい彼女の音程を模倣をした九官鳥だったのかもしれない。
彼女の子どもの頃のそんな映像が思い出され笑顔になりそうだ。
必要以上に彼女を子供だと思いたい自分がいる。
妹や後輩、部下というくくりに押し込める様に。
だからあの時も抱きしめてもそのままの温もりしか感じないようにしていた。
『抱きたいかと言ったら・・・・今はまだそうは思わないんだ。ここに二人でいても。』
本当にひどい事を言ったと思う。
あれから部屋に来てもらうことはない。
今ならどうだろう。
自分の部屋に二人でいて、手をつないだり肩を抱いたりして。
部屋でそうして、彼女が見上げる顔を見ても、やっぱりそう思うことはないのだろうか。
薄々気が付いてるのにどこまでも自分を誤魔化す。
考えてるのは彼女の事ばかり。
誤魔化すのに何の意味があるのかもはや分からなくなってきている。
一体自分は何を確かめたいのか。
昨日も早めに電車に乗って手を振って別れた。
部屋に誘われることを期待してただろうか?
思わないでもなかったけど、そのままひとりで電車を降りた自分。
考え事はあっという間に時間を飲み込んで、買って来た出来立てのお弁当もすっかり冷えてしまった。
箸を割りながらも考えていた。
電話してみようか。
何をしてるだろうか?
結局そのまま考えただけで、携帯を眺めただけで弁当が空になったら、のんびりと湯船につかってそのまま過ごした。
中途半端な気分の月曜日。
花田さんには今の自分はどう判断されるのだろうか?
浮かれてはいない、沈んでるのか、いつも見ていた普通の気分のふり幅の底辺・・・・。
そう思ったら休みだった。
元々予定していたらしい。
ちょっとだけホッとした。
日常にどっぷり浸かりながら仕事を淡々とこなす。
一息ついたときに隣の分析器のところに段田君がいるのに気がついた。
結果待ちの状態で少し離れてぼんやりしている。
「段田君、お疲れ。」
「お疲れ様です。」
普通に普通の青年だ。
良くいるタイプ。突出することはないタイプ。
普通の地味子。まあ、そっち寄りだ。
「週末何してたの?」
「えっとですね、彼女と適当にぼんやりと過ごしました。DVD一枚見て、返しに行くついでにご飯食べて、スーパーで買い物して、あとは部屋でゴロゴロ、ゲームしてました。」
彼女いたんだ。地味って言うカテゴリーでも、普通でも、それはいるものなんだ。
「一緒に住んでるの?」
「はい。まあ、家賃安くあげて貯金にしようと。」
「先を見て?」
「まあ、そうです。」
う~ん、やるなお主。思わずそうつぶやきそうになる。
「しっかりしてるね。段田君。意外・・・かな?」
「僕じゃなくて彼女ですね。ほとんど仕切られてますから。いろいろ楽です。」
「家事とかの事?」
「違います。さすがにそこはちゃんとやってます。分担制です。その辺は甘くないです。『私はあなたの母親じゃない。』って最初に言われましたから。そうじゃなくて大きな決断とか、計画性は明らかに彼女の方があるんです。僕は提案されて頷くだけです。」
「しっかり者の彼女か。」
何だろう、大きな決断。
もしや逆プロポーズだったとか?
「そういえば段田君の年の子は同期会とかやらないの?」
さり気なく聞いてみた。
「そうですね、ほとんどないです。個人的に二、三人仲がいいのはいますけど、全体でって事にはならないです。友田さんの年は仲がいいんですか?」
「そうだね、今度土曜日の昼間に召集かかったよ。やめた奴も集めるくらいに全員に。どのくらい集まるかは知らないけど。」
「へえ、そういうものですか。僕たちの中じゃあ誰も言い出さないですね。」
「年によって違うね。」
「彼女はよく同期の女子会って金曜日に飲んできてます。だから女子はあるかもしれませんね。」
「研修中あんまり仲良くならなかった?」
「女子とですか?そうですね。あんまり。個人的にカップルが誕生してたりはしてたみたいですが、別に。もしかして男子の部屋に女子もなだれ込んで飲んだとか、そういうことあったんですか?」
「部屋はないけど、食堂で皆で宴会してたよ、ほぼ毎日。」
「ないです。そんな感じはなかったです。その辺が違うんですね。ちょっとうらやましいです。」
そうなのか。仲がいい年だったんだな。
もしくは研修を舐めていたか。大学生のノリだったからな。
「でも今度ちょっと女子を入れて飲もうとは言ってます。一人、ちょっとだけ一緒に飲みたい子がいて。」
「そんな問題発言いいの?彼女にバレたら大変だよ。」
「僕じゃないです。友達のためにです。今週声をかけて誘ってもらう様にしてるんです。直接は誘えないので友達を経由しての遠回りです。」
「ふ~ん。」
ピピピピ・・・・。
分析器が終わりを告げて会話もそこで終わった。
わざわざ話しかけたのは彼女の同期だったから、ちょっと聞いてみただけだった。
それなのに最後の方はすっかり忘れていた。
月曜日の夜、会社でも会えなかった日。
思い立って電話をしてみた。
段田君に話をしたように普通に聞いてみればいい。
あまり考えずに。
『お疲れ様。もうまったりしてる時間?』
『お疲れ様です。とっくにゴロゴロタイムです。』
すぐにそう返信が来て、電話に切り替えた。
「お疲れ、つくしちゃん。」
『お疲れ様です、友田さん。さっき文字で言いましたが。』
「今日は・・・・変わったことなかった?金子は近寄ってこなかった?」
『金子さんは特に。別に話はしてないです。それに忙しそうでしたよ。』
「そう、別に金子とはどうでもいいけど。ねえ、日曜日何してた?」
『特別には何も。適当に部屋で雑誌を見て過ごしてました。駅の向こうに新しくベーグル屋さんが出来たので買いに行ったくらいです。だらだらとした週末でした。』
「そう。」
じゃあお昼でも誘えばよかったかな?そう言いたかったけど。
『友田さんは?何してました?』
すぐに聞き返されて。
「髪の毛切って本屋で立ち読みして、お弁当買って帰って、後は気に入ったコーヒー豆を買ってきたくらい。ゴロゴロまったり。」
『じゃあ、ベーグルもって、コーヒーをご馳走になりにいけばよかったです。残念でした。』
軽く言われた。
「そうだね、電話すればよかったな、やっぱり。」
そう答えた。
少し沈黙があり。
「今週の金曜日は?何か予定あるの?」
一緒にまた飲もうかと誘いたくて聞いた。
てっきり『ないです。』という返事を想定していたし。
『金曜日は同期の人に誘われたんです。飲み会、男女三人くらいづつ集まるみたいです。詳しくは聞いてないんですが。』
「珍しいね。」
『初めてかもしれないです。誰かが言い出したみたいですが。』
「そうなんだ。残念・・・・。」
昼に聞いた段田君の話。遠回りに誘いたい女子同期・・・・。
まさか、・・・・・どうだろう?
自分が黙り彼女も黙る。
「じゃあ、遅くなるね、きっと。」
『はい、多分。』
じゃあ、週末でもいいじゃないか。ゆっくりできるのに。そう思ったのに。
「じゃあ、木曜日は?」
自分は何で平日に誘いたいんだ?
『大丈夫ですよ。どうしても、夜飲みたいんですか?』
そう思うだろうなあ、自分もそう思ったし。
笑いながら聞かれた。
「うん、何だか・・・つくしちゃんの顔を見て飲みたいかな。」
ちょっとの間があって。
『じゃあ、木曜日、この間みたいに時間を教えてください。』
「うん、残業しないようにするつもり。もし、無理そうだったら連絡するから。そうしたら・・・・週末に。」
『はい、どうせ空いてます。』
「そんな事言って、金曜日盛り上がって朝まで飲み続けて起きれないとか・・・。」
『大丈夫です。そうなっても多分・・・途中は寝てます。』
「そうだったね。忘れてた。」
『あんまり納得しないでください。ちゃんとそうならないように控えます。』
「そうだね、どこで目が覚めるか分からないからね。金曜日遅くなるようだったら電話してくれてもいいよ。迎えに行くから。ベッドもあるし。」
冗談に聞こえるようにそう言った。
もし、段田君の言った話の中心に彼女がいたとしたら。
どこで目覚めるだろう。
『大丈夫です。』
ただ、そう断られた。
「じゃあ、木曜日は空けておいてね。」
『はい。』
「じゃあ、楽しみにしてるね。お休み。」
『・・・・・友田さん、あの、電話ありがとうございました。おやすみなさい。』
そう言って切れた。
段田君には今さら詳しくは聞けない。
でも滅多にない同期との飲み会。
きっと同じ飲み会の事を言ってるだろう。
どうなんだろう。
三人対三人って言った。確率は二分の一。
遠回りと言ったからには直に誘われていないだろうから。
だから木曜日にした。
前の日に・・・・確認したいと思った。何を?
とりあえず、それでいいとしよう。
木曜日残業無しの予定で行こう。
0
お気に入りに追加
68
あなたにおすすめの小説
【完結】俺様御曹司の隠された溺愛野望 〜花嫁は蜜愛から逃れられない〜
雪井しい
恋愛
「こはる、俺の妻になれ」その日、大女優を母に持つ2世女優の花宮こはるは自分の所属していた劇団の解散に絶望していた。そんなこはるに救いの手を差し伸べたのは年上の幼馴染で大企業の御曹司、月ノ島玲二だった。けれど代わりに妻になることを強要してきて──。花嫁となったこはるに対し、俺様な玲二は独占欲を露わにし始める。
【幼馴染の俺様御曹司×大物女優を母に持つ2世女優】
☆☆☆ベリーズカフェで日間4位いただきました☆☆☆
※ベリーズカフェでも掲載中
※推敲、校正前のものです。ご注意下さい
【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
王子殿下の慕う人
夕香里
恋愛
エレーナ・ルイスは小さい頃から兄のように慕っていた王子殿下が好きだった。
しかし、ある噂と事実を聞いたことで恋心を捨てることにしたエレーナは、断ってきていた他の人との縁談を受けることにするのだが──?
「どうして!? 殿下には好きな人がいるはずなのに!!」
好きな人がいるはずの殿下が距離を縮めてくることに戸惑う彼女と、我慢をやめた王子のお話。
※小説家になろうでも投稿してます
【取り下げ予定】愛されない妃ですので。
ごろごろみかん。
恋愛
王妃になんて、望んでなったわけではない。
国王夫妻のリュシアンとミレーゼの関係は冷えきっていた。
「僕はきみを愛していない」
はっきりそう告げた彼は、ミレーゼ以外の女性を抱き、愛を囁いた。
『お飾り王妃』の名を戴くミレーゼだが、ある日彼女は側妃たちの諍いに巻き込まれ、命を落としてしまう。
(ああ、私の人生ってなんだったんだろう──?)
そう思って人生に終止符を打ったミレーゼだったが、気がつくと結婚前に戻っていた。
しかも、別の人間になっている?
なぜか見知らぬ伯爵令嬢になってしまったミレーゼだが、彼女は決意する。新たな人生、今度はリュシアンに関わることなく、平凡で優しい幸せを掴もう、と。
*年齢制限を18→15に変更しました。
【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。
五月ふう
恋愛
リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。
「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」
今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。
「そう……。」
マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。
明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。
リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。
「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」
ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。
「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」
「ちっ……」
ポールは顔をしかめて舌打ちをした。
「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」
ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。
だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。
二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。
「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」
伝える前に振られてしまった私の恋
メカ喜楽直人
恋愛
母に連れられて行った王妃様とのお茶会の席を、ひとり抜け出したアーリーンは、幼馴染みと友人たちが歓談する場に出くわす。
そこで、ひとりの令息が婚約をしたのだと話し出した。
ウブな政略妻は、ケダモノ御曹司の執愛に堕とされる
Adria
恋愛
旧題:紳士だと思っていた初恋の人は私への恋心を拗らせた執着系ドSなケダモノでした
ある日、父から持ちかけられた政略結婚の相手は、学生時代からずっと好きだった初恋の人だった。
でも彼は来る縁談の全てを断っている。初恋を実らせたい私は副社長である彼の秘書として働くことを決めた。けれど、何の進展もない日々が過ぎていく。だが、ある日会社に忘れ物をして、それを取りに会社に戻ったことから私たちの関係は急速に変わっていった。
彼を知れば知るほどに、彼が私への恋心を拗らせていることを知って戸惑う反面嬉しさもあり、私への執着を隠さない彼のペースに翻弄されていく……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる