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22 フヒト、古い思い出のある夢の国に、随分久しぶりに、再び。

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自分の中でなかなか消化できない。
ついついリンの様にポロリとこぼしてしまった。

『みなさん、少し意見をお聞かせください。ちょっとだけ仲良くなりたい先輩を待ち時間の長い遊園地に誘うのは無謀ですか?皆さん、退屈すると思いますか?困りますか?』

『う~ん、どのくらいの仲なのかによるけど、確かに待ち時間をうまくやり過ごすプレッシャーはある。本当にうまくいかないと悲惨な夢の国。』

『いっそ時間つぶしにゲームをする?現実はからは逃げられる。』

『相手がそれで良ければ問題ないね。』

『それでも話はするでしょう?話題を仕込んでおいた方が心配ないよ。備えあれば憂い少なし。』

『暑い日と寒い日は無理。イライラして余計に険悪になるから。でも、本当に仲良くなりたいなら話をすべきだと思う。』

リンがいない今。
ゲームの始まらない時間を使って聞いてみた。

ディズニーランド。
みんながネガティブな発言からのアドバイスをくれた。
悲しい思い出があるのか、待ち時間をやり過ごす自信がないか。

俺だってないのに。

初めて会った後輩と約束しただけなのに。

リンが入ってきた。

『いろんな写真を撮って見せ合ってもいいし、思い出話をしたり、可愛いお土産を一緒に買ったり。楽しいよ、絶対。問題なくない?楽しんで!!』

リンの励ましとも取れる言葉がしみる。

きっと真冬とならなんとかなると思う。
食べ物を与えて、適当に愚痴を聞き、思い出話をすればいい。

ただもう古ぼけたくらいの小さな頃の思い出だ。

あれから随分経つけど、アトラクションが増えてるのも知ってるけど。
やはり乗り物乗りたい派だろうなぁ。
写真撮りたい派かもしれない。
一緒にとか言われるんだろうか?
周りがカップルだらけだとしたら、いたたまれない。
いまさら断れない。
せめて嫌な思い出にならないように!

最後の手段はやはりゲーム頼りになりそう。
それでもまだお互い知らない同士だし、自己紹介を兼ねていろんな話が出来たら少しは時間もつぶれるかもしれない。

この間もそんなに沈黙にはならなかった・・・・ような気がする。
本当に困ったら真冬のマヌケなネタでつないで、ゲームの話をしよう。

何とかなるだろう・・・・・・か・・・・?


やはり、考えると一層不安で、まだ何か足りない気がして。
真冬に連絡してみた。

『久しぶり!真冬、リンと楽しんでる?』

『うん。優しいよ。』

『良かったな。』

『うん、歩人、どうかした?』

『なぁ、ディズニーランド最近行った?』

『働く前は年に数回。そう言えば去年は行ってないなぁ。どうしたの?』

『昔、行ったよな?』

『ずいぶん昔だよね。あれからすごく変わったし、何?行きたいの?行く?倫太郎君誘う?』

『なんで二人の邪魔するんだよ。勝手に行けばいいし。』

『だよね。でも倫太郎君は会いたいかもね。噂のフヒトさんに。』

『真冬の相手で手いっぱいで、俺のことなんてどうでもいいんじゃない?なあ、それより、今度後輩の子と休日に会うことになったんだけど。誘われたんだよ、そこに。』

『ええ、ディズニーランド?いいなあ、いいなあ。』

『真冬はリンに連れて行ってもらえ。なあ、それより、待ち時間長いじゃん。どうしよう。楽しめると思うか?』

『それが便利にはなってるの。今はね・・・・・。』

何とこんなに役に立つアドバイスが、まさか真冬から飛び出してこようとは。
安達さんも知ってるとは思うけど、自分も知って良かった。後で聞いてみよう。


約束の日は当たり前だがきちんとカレンダー通りにやって来た。

短くはない待ち時間だったけど、それなりに過ごせたと思う。
安達さんが前に来たときの話を聞き、自分はずっっうっと昔の話をした。

「真冬が迷子になって大変だったんだ。だいたいいつもそうなんだけど、出口を出たら必ず左に曲がりたいらしくて、ずんずんと自信を持って歩いていくんだから。」

「うっかり待ちくたびれて、余所見してたから出てきたところを見逃したんだよね。なかなか出てこなくて、探しに行ったときにはもう随分遠くまで行って途方にくれて泣いてたんだ。」

「まだ途中で気がついて動かないでじっとしててくれたから助かった。何度も一斉放送のお世話にはなってる真冬ならではの学びだと思うんだ。動くな、止まれ、声を出せって教えたから。」

懐かしく話をしていた。

本当に余計な思い出だけど、そんなアクシデントがもれなくついてくるから一緒に思い出してしまう。

「家族同士も仲良しだったんですね。」

「そうだね。本当に小さい頃なんて妹だと思ってたくらいかも。真冬も僕のことを弟って思ってたみたい。小学生途中まで偉そうにしてたけど、明らかに僕の学力が上になってから立場が変わったからね。」

「小さい頃って女の子の方がだいたい偉そうだよね。安達さんはどんな子だったの?」

「普通です。そんな仲良しの男の子もいませんでしたから、ひたすらお母さんの後をついていってました。」

「可愛かっただろうね。・・・・あ、今も変わらずだけど。」

過去形にすると悪いけど、言い直したセリフも今ひとつ。これもセクハラになるかなぁ?
上司じゃないから許されるんだよな?
そう思ってちらりと見たけど、大丈夫そうだった。

「今でも一番仲良しなんですか?」

「ん?真冬のこと?・・・・僕はそうかな?真冬は倫太郎君がいるから、一番じゃないね。流石に大学の友達とかもいるだろうし。」

「安達さんは学校の友達とは、まだ仲いいでしょう?」

「それなりに仲いいです。」

「誰も都合つかなかったの?」

「何がですか?」

「今日のここ。誘ったけど友達が誰もダメだったのかなって。」


返事はなかった。

「やっとここまでだね。進んだね。疲れない、大丈夫?」

「大丈夫です。」

今の自分のことを聞かれてもあまり話題が広がらないと思ったらしくて、どんどん遡って聞かれていく。
そうなるとやはり真冬の登場が多くなる。

風邪で休んで宿題を届けに行ったのに、一緒に遊んでしまい怒られた事。次の日、風邪をうつされた自分も休んだこと。

学校に行くのにちょいちょいと忘れ物が多くて、毎朝一緒に大切な物確認の時間があったこと。

一緒に逆上がりの練習に付き合ったけど、上手く手伝えなくて結局練習にならなかったこと。

夏休みや冬休み、そんな長い休み明けには毎回パンパンに成長していたこと。

宿題の面倒を見ていたせいで自分も勉強を復習する羽目になるから良かったし、ゲームの時間を作るために授業は集中できていたから成績が上がったこと。

真冬が大学に行くのに実家を出て行って一人暮らししてくれたら、すっかりゲームの時間が増えていろんな勉強が出来た事。

なんて言ってるととても自分の方が偉そうだけど、それでも寂しかったりはした。
それは安達さんには言えなかったけど、あんまり分からないなりに実家に戻ってくるたびに真冬は褒めてくれた。
感情が半分しかこもってなくても自慢すれば褒めてくれたんだ。

すっかりそんな事も無くなったけど。

しみじみと思い返すとそれはやはりちょっと寂しいに傾く気持ちだった。
今はリンもいて真冬は楽しそうだし。
応援したんだから自分もうれしい。

本当にいい奴だと信じたい。


ようやく入り口に来た。


「安達さん、これは乗ったことある?」

「はい。何度かあります。歩人さん、初めてですか?」

「そうだよ。今日は初めて尽くしで新鮮な体験ばかりだな。」



「今日のことは思い出になりますか?」

「もちろん。また来ることがあったらすごく懐かしく思い出すよ。」



「・・・・それは場所の思い出です。」

「うん、ほら、二回目だけど、初めての物が多くてほとんど初めてみたいなものだよ。小さいころとは選ぶアトラクションも違うしね。」

「そうですか。」



「そんなに珍しいのかな?」

「何がですか?」

「ここに来たことがないって言うくらいのレベルの人。なんだか本当に友達がいないみたいだなあ。男の子同士でもくるのかな?僕は聞いたことはないけど。」

「女子同士よりは圧倒的に少ないとは思います。」

「そうだろうけどね。」



「あ、見えてきた。」


ようやく乗り場が見えてきた。

ここまでくるとぐんぐんと列が進んでる気がする。


二人づつ、乗り込んでいく。


ようやく後二台くらい待てば乗り込めるかもしれない。

そんな時にそっと腕を掴まれた。

スタッフが二人づつ区切りながら案内している。
ここがワンペアだと分かるように、そのためだと思う。
いきなりだったけど、今回はビックリしないでいれた。


そして乗り込む。
先に乗って後ろを見守る。
真冬と違って気を抜いてても事件はおきない。
スカートをひっかけたり、靴を落としたり、足がかかって転びそうになったり。

それでも普通に気遣いはする。

無事に二人が座り安全バーが降りる。


ゆっくり曲がりながら進みだした乗り物。


「歩人さん、思い出すなら、私のことも思い出してくださいね。ちゃんと一緒に行ったのが私だと思い出にちゃんと入れてくださいね。」

「もちろん。」

そう、普通そうだと思うけど。


前を向いて、きょろきょろと周りも見て。
確かにその中に安達さんはいる。
違う方向を向いても隣にいるのは感じる。

小さな乗り物に二人。その距離は近いし。

そう思ってぼんやり見てたら、思いっきり振り向かれた。

「歩人さん。」

安達さんもビックリしたらしい、近い・・・・・そう思ってちょっとだけ上体が離れた。

「何?」

ちょっとドキドキしたけど、何もない風に聞く。

「多分、もうすぐです。終わりになりますからまっすぐ正面を向いててください。」

そう言われた。

「笑顔でお願いします。」

言われた通り前を向いていた。

そこが最後のポイントだとは思った、急に乗り物が傾いてビックリしたから。
ただ、それよりも腕が重たくなって体がぶつかった。
思ってなかった衝撃が時間差でやってきて、とりあえず正面を向いて叫んだまま。
二つ重なった衝撃をやり過ごして隣を見た。

本当に近くで上を向かれて、さっきよりずっと近い所で目が合った。
ガクンと乗り物がスピードを落とし、レールを曲がった。
その勢いで離れた。

そのままま、まっすぐ向いて、スタート地点にたどり着いた。

「終わりだね。」

「そうですね。」

先に降りて、手を差し出して安達さんが降りる時につないだ。
自分でも久しぶりの・・・・・あの頃以来久しぶりのジェントルマンぶりだった。

実際手を乗せられた後ドキドキした。

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