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3 ちょっとだけ感じる違和感は何?

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乾杯って何に?二人での二次会に?
もちろん私はこの幸せの瞬間に!

「で、なんでお酒の量、決めてるの?実は酒乱?脱ぐとか?説教とか?泣きか笑い?」

「脱ぐ人っているんですか?しかもなんでそれを一番に言ったんですか?」

「う~ん、希望的なもの?」

「脱ぎません。」

「まあ、靴だけね、今は。・・・・・じゃあ、何?」

そう言われると靴を脱いだのも恥ずかしくなる。
先輩も脱いでるじゃん。
少し足を引っ込める。

「何だろう?」

先輩に顔をのぞかれる。

「べ、別に。飲み過ぎて・・・ふらふらしたりしたら危ないですし、ちゃんとお家に帰りたいし。駅を乗り過ごして車庫入り前に起こされるなんて・・・・。」


「経験あるの?車庫入り前。」

「ないです。そんな・・・ないです。」

「じゃあ、脱ぎ泣き笑い絡みもなし?」

「・・・・・・分かりません。だから飲みません。」

「いいよ、飲んでも。どっちかなあ?べたべたしてくるとか、キス魔とか。」

「先輩、相手の酒癖に期待する前に、お酒を楽しみましょう。それにキス魔なんて滅多にお目にかかるもんじゃないですよ。」

「まあね、でも未知の可能性じゃない?ゼロではない。」

「はい?」

「だって想像するじゃん、どうなるか?」

「そんな期待されても。具合が悪くなるとかは嫌です。美味しいお酒で終わりたいんです。失敗したくないから、呆れられたくないから・・・・飲まないんです。」

まさか毒舌になって悪口という愚痴を言い連ねる、とは言えない。
だいたい何を言うか分からないから恐怖なのだ、今まで知りたいとも思ってなかったけど、普通の時に飲み過ぎると、どうなるんだろう。今度家族で飲んでどうなるか聞いてみよう。家族なら何を言っても今更見捨てないだろう。

「美味しいね。」

手にしたグラスを見ながら言う先輩。

「飲んでみる?」

いいの・・・・かな?あり?
同じグラス・・・・ちょっと逡巡・・・してたのに本能怖い、手が出ていた。
お酒に対する渇望か、違う本能による反応か。
受け取ったグラスを慎重に、ちょうど180度回す。
うまいジャストくらい。口をつけてみる。

「美味しいです。」思わず笑顔。

「もしかしてここはすごくいい店ですか?」

「うん、すごくいい店。」

「先輩よく来るんですか?」

「何度かね。」

何何?ちょっと首をあげてソファ越しに後ろを見る。
同じようなソファ席が暗がりにあり。
すぐ視線をやったことを後悔した。
同じ大きさのソファ席、3組。間違いなくカップル。
かなりラブ度の高いカップル。
見えた頭の位置からするにおでこくっつけてなかった?
いや、もしかしたらくっついてたのは・・・顔の別の部分かも。

ドキドキするんですけど。
先輩はいったい誰と来たんだろう?
どこかのカップルシートに座ったのよね?やっぱり。

他の普通の席は明るい照明の下。
大人数で盛り上がってるところもあるから、気にしてなかったけど。

こんな店だから、きっと先輩は彼女と一緒に来たのよね。
会社の人に隠してても恋愛することは出来るし。
百合先輩の情報が正しいとは限らない。
だから全然関係ないところに彼女がいて、デートで来たり、お部屋デートに飽きた時に気分転換で来たり?
百合先輩の情報・・・・あんまり当てにならないの?
それともあれから随分経ったから、もう情報が古いのかも。

・・・・・残念。

そうは言っても本気にはならないと決めてる。
社内恋愛はとにかく隠さないといけないし、噂になると恥ずかしいし。
有休一緒にとったりするのもちょっと。
喧嘩したり別れたらさらし者状態。
なんだ息苦しそうで。
大体一年間まったく何もなかった時点で諦めた。
外外。外に視線を向けるべき!そう思ってる。
ちょっと気になる先輩がいたとしても、外へ外へ。
恋活は外を向いて!

グラスをテーブルに置く先輩。

「あ、ごめん。せっかくグラスの口をつけたところ、気を遣ってくれたのに。間違えて同じところで飲んじゃった。」

いつも見慣れた優しい笑顔がヘラヘラとしてるように見える。
酔ってる?

「そうですか、いいです。」

どうでもいいです。後でお水でも飲んでください。
本当にどうでも良くなった。答える声も平坦で。

「いいの?」

先輩が私のグラスを取り上げて、わざわざ同じところを確認して飲んだように見えた。

「美味しいね。あ~、全部飲んじゃった。次、飲みたいの頼んでいいよ。」

一体何をやってるんだか。
百合先輩がいないと随分適当な人になってる気がする。
もう考える気力もなくなった。
もしかして揶揄ってるのかと思ってしまうけど、怒る気力もない。
適当に選んだものをお願いする。
それでもさっきまで迷っていたものの中からは選んだから。

「先輩、週末リア充組ですか?」

「う~ん、たまにね。」

「ふ~ん、そうですか。」

やっぱりそうだったのか。
百合先輩、情報の訂正をしてください。

「週末ぼんやり組?」

「もし確信してるのなら、改めて聞かないでください。」

私は悲しい事実を開陳。

「じゃあ、お店最後までいてもいいね。」

「朝までですか?だから・・・。」

「大丈夫だよ、飲まなくても。ソフトドリンクもあるし。」

「まあ、そうですが・・・・って、今日中に電車で帰ります。なんで朝帰り決定なんですか?」

「あれ、一人暮らしでしょう?」

「はい、そうです。」

「じゃあ、いいよね。明日も時間あるなら。」

「本気ですか?結構長いですよ。」

時計を見る。終電までは2時間くらい、閉店までは・・・。

「うん、のんびりお話でもしようか?」

冗談ばっかり。勝手に余裕で。
こっちはこれでも慣れない距離に緊張してるのに。
恋活の相手じゃなくても緊張する、こんなシチュエーション。



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