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4 懐かしさに心がぎゅっとなる場所。
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ブローをしてもらってケープを外された。
出来上がった私は少し懐かしい顔をしていた。
それでも少しは大人らしい顔つきになったと思いたい。
「久しぶりだよね。」
「はい。就活開始からずっと黒髪でした。」
「まあ、皆そうだよ。大体研修終った頃に戻すんだよね。皆明るい顔になっていくね。そんな顔を見るとうれしいなあ。それに遥さん、大分スッキリとして大人っぽくなったと思う。お世辞じゃなくて。」
「本当ですか?少し自信が出てきました。嬉しいです。」
「うん、自信もって、頑張って。」
そう励まされた。
「はい。またちょくちょく来るようになりますので、お世話になります。」
「うん、一度黒にしてるから、色が入りにくかったけど、だんだん明るくなるから。」
「はい。」
スッキリした気分で美容院を出て、そのまま買い物に行った。
これから実家に帰る。
ボーナスで両親と弟にプレゼントを買う。
大体決めてあるから、ササッと買ってデザートも買って帰ろう。
重くなった荷物を持って駅からバスに乗る。
就職して一人暮らしを決めた。
今までのお年玉やいろんなお祝い事のたびに貰っていたお金を、お母さんが貯金してくれていて、それで引越しも出来た。
手伝ってくれた家族の皆とお疲れ様の引越しそばを食べに行って、両親には頑張れと言われて、弟には羨ましがられて。
でも一人で帰った新しい部屋がよそよそしくて、すごく寂しくて、すぐに声を聞きたくなって、ありがとうとお礼の電話をした。
あの頃からは随分たくましくなったと思う。
今の部屋が自分の部屋だと、一番落ち着くと思い始めてきたこの頃。
でも実家が見えてきて、やっぱり懐かしさとうれしさで胸が一杯になった。
弟も家にいてくれるらしい。
一緒にいるときはよく口喧嘩をしていたのに。
プレゼントはうれしそうな声で欲しいとリクエストされたものを買った。
それを楽しみにしてるんだとしても、それはそれでうれしい。
まさか貰ったらすぐにいなくなる、なんてないよね?
そんなことをしたら取り上げてやる!!
「ただいま。」
「お帰り~、遥。」
お母さんが玄関まで出てきてくれた。
お土産のデザートを渡す。
「一緒に食べよう。」
もちろん前もって連絡してある。
「ご飯は?」
「大丈夫。朝ゆっくりだったから。」
それでも冷蔵庫をのぞいてしまい、昨日のおかずが残っているのを見て、目が欲しくなった。
「これ食べていい?」
皿に盛られた煮物と漬物を取り出す。
「結局食べるの?」
「なんだか、美味しそうなんだもん。」
「好きに食べていいわよ。」
二階に声をかけて弟を呼ぶ。
お父さんと、お母さん、それぞれにプレゼントを渡し、降りてきた弟にも渡す。
「これでいいの?」
「開けていい?」
弟が既に手にかけながらも、一応聞く。
「どうぞ。」
そう言うとバリバリと包装を剥いでいく弟。
少し背が伸びたように感じるんだけど。
大学生になって、少し生意気さは落ち着いてる。
「これこれこれ、欲しかった、姉ちゃんありがとう。」
「いえいえ。吾郎のときも楽しみにしてるから。」
「お互いに忘れてなければね。」
「絶対、忘れないから。」
両親にもお礼を言われた。
さっき出した小皿を持ってリビングに行く。
聞かれるままに、食べながら話をする。
仕事のこと、一人暮らしのこと。
「なんだかすっかり立派になったみたいね。安心した、ちょっとだけ寂しいけど。」
「ここに帰ってくるとホッとする。でも、友達も出来たし、仕事もわりと楽しい。満員電車さえやり過ごす術をマスターすれば何とかなりそう。」
「姉ちゃん、彼氏は?」
睨む。
弟よ、それはすぐにできるものじゃないのだ。
いろいろと計画して、少しずつ進んでいる?
情報の欠片を集めてる今。
いつか皆をアッと言わせたい、そう遠くないいつかに。
せっかくそう思ったのに、相手だと思いたい浅田先輩も、それ以外の他の誰も浮かんでこなかった。
残念ながら未だ気配なし、やっぱりそういうことなんだろう。
出来上がった私は少し懐かしい顔をしていた。
それでも少しは大人らしい顔つきになったと思いたい。
「久しぶりだよね。」
「はい。就活開始からずっと黒髪でした。」
「まあ、皆そうだよ。大体研修終った頃に戻すんだよね。皆明るい顔になっていくね。そんな顔を見るとうれしいなあ。それに遥さん、大分スッキリとして大人っぽくなったと思う。お世辞じゃなくて。」
「本当ですか?少し自信が出てきました。嬉しいです。」
「うん、自信もって、頑張って。」
そう励まされた。
「はい。またちょくちょく来るようになりますので、お世話になります。」
「うん、一度黒にしてるから、色が入りにくかったけど、だんだん明るくなるから。」
「はい。」
スッキリした気分で美容院を出て、そのまま買い物に行った。
これから実家に帰る。
ボーナスで両親と弟にプレゼントを買う。
大体決めてあるから、ササッと買ってデザートも買って帰ろう。
重くなった荷物を持って駅からバスに乗る。
就職して一人暮らしを決めた。
今までのお年玉やいろんなお祝い事のたびに貰っていたお金を、お母さんが貯金してくれていて、それで引越しも出来た。
手伝ってくれた家族の皆とお疲れ様の引越しそばを食べに行って、両親には頑張れと言われて、弟には羨ましがられて。
でも一人で帰った新しい部屋がよそよそしくて、すごく寂しくて、すぐに声を聞きたくなって、ありがとうとお礼の電話をした。
あの頃からは随分たくましくなったと思う。
今の部屋が自分の部屋だと、一番落ち着くと思い始めてきたこの頃。
でも実家が見えてきて、やっぱり懐かしさとうれしさで胸が一杯になった。
弟も家にいてくれるらしい。
一緒にいるときはよく口喧嘩をしていたのに。
プレゼントはうれしそうな声で欲しいとリクエストされたものを買った。
それを楽しみにしてるんだとしても、それはそれでうれしい。
まさか貰ったらすぐにいなくなる、なんてないよね?
そんなことをしたら取り上げてやる!!
「ただいま。」
「お帰り~、遥。」
お母さんが玄関まで出てきてくれた。
お土産のデザートを渡す。
「一緒に食べよう。」
もちろん前もって連絡してある。
「ご飯は?」
「大丈夫。朝ゆっくりだったから。」
それでも冷蔵庫をのぞいてしまい、昨日のおかずが残っているのを見て、目が欲しくなった。
「これ食べていい?」
皿に盛られた煮物と漬物を取り出す。
「結局食べるの?」
「なんだか、美味しそうなんだもん。」
「好きに食べていいわよ。」
二階に声をかけて弟を呼ぶ。
お父さんと、お母さん、それぞれにプレゼントを渡し、降りてきた弟にも渡す。
「これでいいの?」
「開けていい?」
弟が既に手にかけながらも、一応聞く。
「どうぞ。」
そう言うとバリバリと包装を剥いでいく弟。
少し背が伸びたように感じるんだけど。
大学生になって、少し生意気さは落ち着いてる。
「これこれこれ、欲しかった、姉ちゃんありがとう。」
「いえいえ。吾郎のときも楽しみにしてるから。」
「お互いに忘れてなければね。」
「絶対、忘れないから。」
両親にもお礼を言われた。
さっき出した小皿を持ってリビングに行く。
聞かれるままに、食べながら話をする。
仕事のこと、一人暮らしのこと。
「なんだかすっかり立派になったみたいね。安心した、ちょっとだけ寂しいけど。」
「ここに帰ってくるとホッとする。でも、友達も出来たし、仕事もわりと楽しい。満員電車さえやり過ごす術をマスターすれば何とかなりそう。」
「姉ちゃん、彼氏は?」
睨む。
弟よ、それはすぐにできるものじゃないのだ。
いろいろと計画して、少しずつ進んでいる?
情報の欠片を集めてる今。
いつか皆をアッと言わせたい、そう遠くないいつかに。
せっかくそう思ったのに、相手だと思いたい浅田先輩も、それ以外の他の誰も浮かんでこなかった。
残念ながら未だ気配なし、やっぱりそういうことなんだろう。
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