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11 ご機嫌になった週明けの月曜日。

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「おはよう、愛内さん。うさぎ、まだ生きてる?」

「おはよう、穣君。まだ全然そのままの姿です。元気です。」

「なんだか愛内さんも元気になった?」

「そ、そうかな?週末何だかいろいろと気分転換が出来たからかもしれない。」

「そうなんだ。良かったね。」

「ありがとう。」

やっぱり先週とは違うだろうか?
いきなり元気でびっくりみたいな感じだろうか?
少し大人しくしよう。


先週もらった書類を見つめる。
『シュミレーション』ね。
文章を見ながらいろいろと想像する。
想像する、想像する・・・・・・、そう教えてくれた人の声と顔が浮かんで・・・・ダメじゃん。
余計に集中できない。

朝、課長が出勤してきた時に、他の人に混じって挨拶した。
それ以外はそっちを見れない。
そんなに変じゃないと思うけど。
変に思うのは課長くらいだろう。

この書類を仕上げない限りは恒例の『愛内~』もないだろうから。
今日一日あれば慣れると思う。
明日には提出しようと思ってる。

そして呼びつけられるのは明後日くらいだろう。
心構えがあれば大丈夫だ。
もしかしたら一発合格なんて僥倖もあるかもしれない。

なんてことを考えてて、やっぱり集中できない・・・・・。


『よし。』
心で気合を入れ無心で書類に向かった。

お昼の時間。

キリのいい所で終わらせて、社食に行って友達に合流する。


「ああ、里奈。お疲れ。」

「お疲れ。久しぶり。」

「今週末に頼まれてた飲み会をやろうと思うんだけど、空けといてね。」

ああ・・・・確かに頼んだ。
同期の美穂に。
あちこちの飲み会に顔を出してるから、一番期待してるとも言った。

「どうしたの?都合悪い?」

「うん・・・・・ちょっとしばらく控える・・・・。」

「何で?」
「どうしたの?」
「体調悪い?」
「ダイエットが先?」
「まさかね。」
「もしかして・・・・。」
「それもまさかだよね。」

真っ先に体調を心配されて、結局最後に行きついた正解もどきは完全に一応聞いただけ感が出てる。

「ののか、まほろ、なんだか酷くない?」

「じゃあ、いい事あったの?」美穂が聞く。

「本当?知りたい!」千尋が嬉しそうに言う。

言えるわけないけど、ちょっとだけ言いたい気もする。

「好きな人が・・・・出来たと言うか、気がついたというか。」

「ねえ、まさか・・・・西村君?」

私の相手は同期で親切な隣の席の人しか思い当たらないらしい。
隣じゃなくてほぼ正面です。
惜しいですが違います。

「ううん、違うよ。穣君はお互い仲いい同期だってば。」

これは何度も言ってるけど、それでも他の人がいないせいか、候補に真っ先に上がるらしい。

「皆知らないから。それに・・・ちょっと、これから頑張る。また報告します。だから、美穂、ごめんね。」

「大丈夫。他の子を誘うから、気にしないで。それに千載一遇のチャンスかも、頑張って。」

「何でそんなレア現象なの?」

「だって今まで全くそんな話出てないじゃない。気がついたってことは出会ってからはだいぶん経ってるんでしょう?一から知り合うよりいいじゃん。後二ヶ月もないし、もうどんどん頑張って、応援する。」

「もちろん応援する。続報も楽しみにしてる。」

まほろも言ってくれた。隣で千尋とののかがうなずいてる。

「ありがとう。まあ、その時は・・・・。」

言えるわけないよ。そう思ったら弱弱しい笑みにしかならなかったらしい。

「自信もって。いろんな好みの人がいるから、絶対合う人いるから。」

なんか本当に褒められてる?応援してるつもり?
もう、教えないから。
絶対続報なんて自分からは言わない・・・本当に言えないし・・・。

「他人事じゃなくて私も頑張るけど。」

美穂が言う。
あんなに飲み会に行ってるのに、まだこの人!!という人には会えてないらしい。
なかなか難しいのだ。

そう難しいから、時々間違う人もいるんだし・・・・・。





食事を終えて午後からは仕事に集中した。
何が良かったのか分からないけど、集中できた。
明日もう一度見直して、付け足すことがないか、穴はないか、ボロはないか確かめて提出する予定だ。

ドキドキしそうだけど・・・・。


チラリと視線をあげて課長の席の方を見たら、普通の顔で仕事をしていた。
当たり前だ。

時間になり、穣君が帰り支度を始める。

「ねえ、穣君、いつも帰りに飲みに行ったりしないの?まっすぐ家に帰るの?」

「うん、だいたいそう。」

「部屋で何するの?」

「ご飯食べてお風呂入って、ゲームしてる。」

ゲーム・・・・・・。そういう人だったんだ。

「実はかなりの時間してるくらい。」

もしかしてそれはアニメの育てる系とか成長させる系ですか?
女性が苦手ってそういうことじゃないですか?

「あんまりやらない?」

「うん、ぜんぜん。」

「楽しいよ、映像も綺麗だし、音楽もすごいかっこいいし、映画を見てる感じだよ。毎日コツコツ強くなってるんだ。」

「戦う感じ?」

「うん。そう。割と有名なんだけど、全然やらないと知らないかもね。」

「そうなんだ~、謎だったんだ。なんだかスッキリした感じ。」

「じゃあ、よかったのかな?じゃあまた明日ね。」

「うん。お疲れ様。」

「お疲れ様、お先に。」

そう言ってさっさと帰って行った穣君。
やっぱりもったいないけどなあ。



携帯を見ても美穂以外の他の子は誰も何も言ってこない。
美穂に断ったように他の友達にも断りを入れよう。
そんな連絡が出来ることを喜ぼう、たとえ目の前の人から何も連絡がないとしても。
だってさっきから真面目な顔で仕事してる。
本当に視線が合うこともない。

あっさりと何も変わらない日々が続いてるみたい。

あの夜お礼をした後に、『また連絡する』と、そんな吹き出しがあっただけ。
お互い一回だけのやり取りのメッセージ。

じゃあ待つ。
その言葉の通り、そのまま大人しく待ってる状態。


帰ろう。

部屋でのんびりと過ごそう。
友達に連絡して・・・・それだけ。

絶対聞かれるのに、まだまだ報告したいほどのことも・・・あるような、ないような。
大学の時の友達なら関係ないから、ちょっと相談もしたい。
会社の知り合いには出来ないから、それ以外の子に聞いてもらうしかない。

パソコンを閉じてかたずけをして皆に挨拶をして帰った。
その中に課長の声があったとは思うけど、分からない。


早速友達に断りの謝罪メッセージを送った。

『いい事あったパターン?』

『うん・・・・・微妙。』

『なにそれ?』

『まだ自信がなくて、まだまだいい事ありそうな雰囲気だけ。』

『じゃあ、今度会う時まで山場を越えていて。楽しみにしてるから。』

『うん、ありがとう。期待に応えたいけどね。』


そんなうっすら期待を持たせるようなやり取りを何人かとした。

それ以外、待ち人からのメッセージはなく、夜も遅くなった。

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