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4 懐かしのイベントに急遽参戦、もちろん今回は仕事です。

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「ギイチ、最近忙しい?」


「別に、普通。新しい子が入ったんだ、それが珍しく女の子で、賑やかだし、仕事も器用に手伝ってくれるから、ちょっと楽できてるくらい。」


珍しく一鉄に会おうと言われた。
どうせ奈央さんが当直明けで寝てるから、外に出たかっただけだろう。
そんなことは本当にたまにある。
一緒に暮らし始めたから、そんな事もあるみたいだ。

それは一鉄の優しさでもあると思う。

奈央さんは勤務地が遠くなったらしいけど、前と同じところで働いてるらしい。

『だって、いつまでもハルヒの隣にいるってのもね。』

そんな事言っていたけど、何よりも一鉄がさっさと一緒にいたいってお願いしたんだろう。


あの写真の前に両親に紹介したらしい。
お父さんが予想以上に気に入ったらしいと嬉しそうだった。
逆に奈央さんの両親にも会ったらしい。

「真面目そうって言われたよ。」

そう嬉しそうに教えてくれた。
奈央さんもまあまあ否定はしてないだろう、真面目は真面目、ちょっとトボケてるけど、それは一鉄のお父さんもちょっと・・・だった気がする。
仲のいい家族だった。
どう見ても一鉄とお父さんが似ていた。
ハルヒちゃんはしっかり者っぽかったけど、一鉄の話だとやはり兄妹も似てるらしい。

「ハルヒちゃんが寂しがってるんじゃないの?」

「ところが、ハルト君と仲良しは続いてるから、別にいいとか言ってるんだよ。喧嘩は時々してて、奈央に愚痴を聞いてもらってるのも知ってるけど、まったく楽しそうなんだよ。そろそろ就職のことでも大変なはずだけどね。」


「ねえ、だから・・・・ギイチのことだよ、何だか痩せてない?」


あぁ、それでか。

「実はダイエット中。」

そう言うだけにした。
健診結果が少しギリギリの数字になったからと。
一鉄と一緒にお昼を食べたけど、ゆっくり噛んで食べてたら、すぐにお腹いっぱいになってご飯が残ってしまった。すみません。本当にお腹いっぱいになったんです。
いくらか効果が出てるんだと思う。

痩せてる僕をいい風に捉えただろうか?
アユさんのために頑張ってるんだとか。

それとも悲しいことがあったと心配してくれただろうか?
ちょっとだけ聞かれた。

「あれから、アユさんとはどう?」

「うん、時々会ってるよ。」

すっごく照れる僕を期待してたんだろうけど、普通に『鉄友』な感じだからって思ったら、そんなに照れるまでもなかったと思う。
でも冷蔵庫にあるタッパーの事は言わなかった。
一鉄の探ってくるような視線を躱したら、揶揄うこともしてこなかった。

そんな内心のガッカリが少しは出てたかもしれない。

あんまり深くは聞いて来ない一鉄。

アユさんのためにもダイエットを頑張ってるって思っただろう。
もちろんそれもあるけど、一鉄の結婚式もあるけど、なによりその頃に自分が頑張ったって思えるくらいだったら、アユさんとの距離を少し進められるだろうかと思ったんだ。
そのくらいの勇気が持てるようになりたいと。
それに僕だけが頑張ってるんじゃない。
アユさんも面倒ともいわず余分な手間をかけてまで食事を作ってくれてるんだから。
本当にいい子なんだよ。最高なんだよ、一鉄。


あれから一週間真面目に取り組んだ。
アユさんの協力を無駄にしないように、可能なときは軽めにした。
無事に2キロ減ったのだ!
ただ、僕の2キロは誰にも気がつかれないくらいの誤差範囲だった。

「体調は大丈夫ですか?」

「うん、変わりない。少し体重が減ったんだけど誰も気が付かないよ。あと少し作ってもらった物は残ってるんだ。」

「どうでした?」

「毎日家に帰るのが楽しみです。美味しく頂いてます。」


今日はアユさんと一緒のランチの日。
ちょっとだけ緩める日。頑張ったご褒美の日。
でもせっかくだから野菜多めのメニューにした。
食べ慣れない料理をいろいろ頼んで、
最後にフォーを。

「美味しいね。今まで食べることなかったなぁ。」

「気に入りました?」

「うん。アユさんと遊ぶようになっていろいろ気がつくことがあるなぁ。」

「会社の人とランチに行くんですよね?」

「うん、いる人と適当にね。でも男飯だから定食屋です。」

「新しい女の人はどうしてるんですか?」

「一緒に男飯だよ、普通に食べてるから、違和感ないよ。今はまだ研修みたいに皆にくっついていろいろ行ってて、それも楽しそうだよ。久しぶりの女の子だからみんなが大切に育てるつもりだったけど、あんまり気を遣わなくていいからすっかり馴染んでるよ。」

「変な時期に入社なんですね。」

「うん、一人体調崩したからしばらく休むらしくて、補充しようって事になったみたい。ホームページからの募集だからサイトをよく見てくれたり、愛読してくれてる人が何人か来てくれたみたい。」


「その中から選ばれたんですね。」


「・・・アユさん、ねぇ、もしかして転職を考えてるの?」

最近なんとなく宇佐美さんのことについて聞かれてる。
特に鉄の知識やカメラの技術や文章のことや、いろいろ。
後は宇佐美さんの個人的な情報を少しくらい。

だからちょっとだけ聞いてみた。
そう言ったらびっくりされた。

違ったらしい、すごく否定された。


「そうなんだ、ごめんね。でも、何かあったら、話聞くくらいならできるから。」

「大丈夫ですよ。」

そんな心配もいらないと、その笑顔に安心した。




雑誌の中ではいろんな情報やイベントを告知する。
雑誌は特集のページ以外に、主に駅や車両やそれにまつわる物の変更とかリニューアルだったり、いろんな新しい情報を取材して載せている。

でも、最近は増えてきた出会いのイベントの告知にもちょっとだけはページを割くようになった。
前に一鉄を誘った鉄道好きのための出会いのイベントような大きな施設が主催のものを。
時代の流れに乗って、作ってる先輩達の熱意ものっていた。
流石に小さいものは無理でも大きなところのものは載せていく方針になった。

参加者の意見がちらほらと集まってきた頃合い。

「これ取材しよう!」

先輩がノリノリで提案してきた。

注目したみんなの表情が止まる。


参加したくてもなかなか参加できない、そんな弱虫はたくさんいる、今のメンバーもほとんどそんな人で。仲間だとわかると話もしやすい、それはアユさんの時もそうだったからわかる。
でも明らかに先輩が前から考えてた感のある計画書を出してきた。
練りに練られていた。
参加したいという気持ちが隠せてない。

『潜入レポ。』なんて銘打って、普通の参加者同様に参加したいらしい。

本当に、一鉄と行ったあの場所でまたやるらしく、それを取材したいらしい。


『前に参加しました。』そう言いたくても、何の成果もなく帰ってきただけだから手も挙げれず。手を挙げなくても他に行きたい先輩がいるのは明らかだった。
そこは遠慮した。
先輩二人と宇佐美さんの三人が参加することになった。
その次の月から珍しい映像も公開されるらしい。そっちも取材したいらしい。

コソコソ話をしてる先輩二人は楽しそうで、もちろん宇佐美さんもいつも通り楽しそうだった。
打ち合わせは先輩2人が嬉しそうにして、でも話はすぐに参加者視線になる。
それはそれでもちろんいいんだけど、どんな服で行くか、どうやって話しかけるか、別行動をとるか、二対二で協力するか・・・・宇佐美さんが忘れられているのは明らかだった。
ついでに仕事も忘れそうなくらいだった。

週末はアユさんと会いたいから、出来るだけ仕事はしたくない、いつの間にかそんなことを思うようになったんだ。びっくりだ。

取材とはいえ参加者として名前をつけて中に入ることが許されたらしい。
もちろんゲームの参加資格はない。
きっとそれは気にしてないと思う。
・・・わかる、それなりに成果があったらって。 
その気持ちは分かる。
入念に打ち合わせをしてる二人の先輩だけがひそひそと盛り上がってる。
宇佐美さん、まさかペタリと張り付いて先輩達の邪魔はしないよね。
仕事する気の宇佐美さんが邪険にされたらかわいいそうだし。


あの時からもう一年は経ってる。
知り合いに声をかけられて、僕は同志の塊の中にいた。
一鉄がどこにいるのか気にもしてなかった。

あとで楽しそうだったね、なんて言われて。
そんな事言ってた一鉄は・・・・。

まぁ、いいけど。



そんな一鉄にとっても思い出のあるイベント、無関係のはずだったのに参加&取材の日になった。

数日前に先輩が急遽行けなくなり、突然の代理を頼まれた。
多分、涙をのんで交代をお願いしたんだろう。
行きたかっただろうに・・・・。気の毒だった。

でも僕だってアユさんと会えるかもって楽しみにしてたのに。

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