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45 トカゲとのご縁

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やっと週末。
なんとなくぎこちない研究室の雰囲気も水曜日までには普通に戻った。
私もすっかり意識することなく、前みたいに近藤さんと話が出来てる・・・と思いたい。
でも本当は目を見て話をしながら、こんなに優しい目をしてた?なんて思ったり。
気がつかなかっただけかな?

ランチはたいてい女性三人でとる事が多い。
参考までに二人に聞いてみた。

「あの・・・・家族とその・・・彼氏を会わせるってどうしてましたか?」

2人とも経験なしと言われた、というよりびっくりされた。


「もう近藤さんを紹介するの?」

「はい、えっと私がなんでも隠さずに両親に、主に母親に話をしてるって言ったら、ご挨拶したほうがいいかって聞かれて。母親にも週末に泊りに行ったりするんだったら、会わせて欲しいって言われてたので。今週家に来てご飯食べることになりました。」

「すごい・・・緊張しそう。」

「お父さんは?すごくショックだったんじゃない?会いたいって?」

「うん、まあ・・・・でも、私が選んだ人なんだから大丈夫だろうって。」

「そう。」

一同静かになる。

「今までずっと家族と一緒が当たり前だったから気がつかなかったけど、お母さんとお父さんもクリスマスに二人でデートするのって、私が生まれてから一度もないって。だから今年はお父さんの仕事後に待ち合わせて外食するって、お母さんが楽しみにしてるんです。」

「いつ?」

「イブの夜。」

「ふ~ん、じゃあその日は近藤さんと一緒なんだ。泊まるんだ。」

「え・・・・・あ、そうです。」


しまった。・・・・だって皆そうだろうと思ってたけど違うの?

「二人は違うの?」

結局二人ともその予定だっていうことで良かった。
だいたい高階さんは一緒に住んでるし。

「楽しみだね。近藤さん緊張するだろうけど、月曜日聞かせてね。」

楽しそうに?にんまりと高階さんが笑う。
この話題は内緒にしてた方が良かったのかな?って思ったけどもう遅いから。


その週末。
金曜日、お母さんに前もって申請して近藤さんのところに泊った。
ソファでくつろいで明日のデート場所を見つける。

テレビで見た爬虫類カフェに行きたくて。
サイトを見てたら本当にかわいい子がたくさんいて。
目が丸くて変わった動きをする。
指も変。体を覆う色のついた小さなタイルみたいな肌がきれい。
爬虫類は毛のある動物より匂いがないらしい。
好きな子と写真も撮れるらしい。
メンバーをゆっくり写真で確認して、一緒に写真を撮ってもらう相手を絞る。

ニコニコ顔で携帯を見てると真剣な声が聞こえた。

「なあ、茜。お父さんが嫌がる話題は何だ?」

突然聞かれても思い浮かばない。
私と話をしてる限り嫌な顔したことないし。

「特にないと思います。」

いろいろと例を挙げてくれたけど、どれにもピンと来なくて。
もっとちゃんと考えろと言われても思いつかないから。
天井を向いてため息をつく近藤さん。大丈夫なのに、きっと。

行きたいところは決まったかと聞かれたので手にしていた携帯の画面を見せた。
『おお~可愛い!』って言葉は期待してなかったけど。
やっぱり微妙な表情。
可愛いのに、分からないかなあ?

「爬虫類カフェです。」教えてやった。

なんとなく行きたいならついて行ってもいい、みたいなニュアンスだけど・・・絶対可愛いから!

こうして爬虫類カフェに決まり。
お父さんも行きたいかなあなんて呟いたら近藤さんがびっくりしていた。
もう親同伴のデートするわけないのに。

写真を見ながら楽しんでいたら土曜日は泊まらないのかと聞かれた。
それはやっぱり無理かな。
料理を覚えるって言ったばかりだし、近藤さんに出す料理の手伝いするし、掃除もするだろうし。


話はお終いとばかりに携帯を取り上げられた。


ちょっとドキドキしてきた。慣れない、この空気に。
一番緊張する。
何もしてないのに期待に自分の鼓動が早まり息が上がるのが分かる。
両手を掴まれて顔を近くに寄せられる。

「随分とトカゲたちにご執心だね。好きなんだ、とっても。」

「嫌い・・・でした?」

ふっ。鼻で笑われた。
やっぱりここは猫犬うさぎを経てのハリネズミ、フクロウ、爬虫類と順番に行った方が普通だっただろうか?
珍しいかなと思って気になったのだ。
人によっては絶対ダメって人もいるかもしれないし。

「べ、別に・・・じゃあ猫でも・・・・いいです。」

きっといろんなところにある一番スタンダードな猫カフェでもいいです。
顔が近いからつぶやくような小さい声でも平気。聞こえてるだろう。
視線があったり、ずれたり。
何の時間ですか、これは?


近藤さんの変なスイッチを押したのは誰だ。
それは私だろうけど、何、いつ、どこで?

近寄らない距離にじれったいのに、唇を見ても動くこともなく。
目を閉じたほうがいいのかもわからない。
だから苦手なんだってば。慣れないんだってば。
しょうがないからお願いした。

「キスしてください。」

ニヤリと笑われてお願いを聞いてくれて、一番苦手な時間は終わった。
体の力を抜いて引き寄せられるままに近藤さんの体によじ登りキスをする。
結局これで正解だったのか分からないけど。

爬虫類カフェはどうなったんだろう?
本当に別の日にお父さんと行くことになる?

いつものパーカーは脱がされて放り投げられた。
少し厚手のTシャツの中に潜り込んできた手がいつものように背中から胸へと昇ってくる。
首に巻き付けた手を外される。
少し体を離して肩に手を置く。
視線が合い、ゆっくり這い上がってくる両手を感じる。
腰を支えられてないのでちゃんと自分で肩につかまる。
両手はゆっくりと胸の重さを楽しみくるくると円周をなぞるように触れてくる。
優しいタッチが心地よくて、でもずっと同じことをされて、なかなか先端に触れてくれないとどんどんもどかしさがつのって。

「何で・・・・・」

息が少し上がってるのは抑えられない。視線を合わせたのに。

「何?どうしたの?」

平然としらっと返された。

「じらさないで・・・・もっと触って・・・・。」

自分では精一杯言ったのに。

「嫌だ、・・・・見えないから触れないし。」

視線を合わせて拒否された後、耳元でわざわざ言われた。
口で襟のところを引っ張る。
脱げって言ってるの?
明かりの下で脱ぐのも少し慣れたけど・・・・。
相変わらず襟ぐりを口で引っ張る。
誘うように先端をさらりと触れられて我慢できずに脱いで上半身を晒した。
恥ずかしくて頭を引き寄せようとしたのに、また腕を掴まれてじっくり観察するように見られた。

私はどんな間違ったスイッチを押したの?
胸元にキスされた後耳元で囁かれる。

「お願いは?」

視線を合わせられて逸らせない。

「お願い・・・します。触って。」

そう言いながらも顔の前に胸を持って行った私。
やっと腰を支えられてゆっくりと胸を愛撫してもらえた、ちゃんと、丁寧に。

膝立ちの姿勢で胸の前で近藤さんの頭を抱える。
音を立てられながらキスをされ、なめられて、噛みつかれて、舌で転がされて遊ばれて。
腰を思いっきり近藤さんの体に寄せてのけぞる。
のけぞってもしつこく舐められて、声を出して頭を寄せた手に力がこもる。
腰にあった手がゆっくりと腿に降りてくる。

開いた足の真ん中をさらりと撫でられて腰を引く。
はっきりと濡れた冷たい布が自分にくっつく。

「ベッドに行きたい。」

無理。もう、脱ぎたくて。

「だめ。まだまだ。」

胸から離れて、答えてくれた唇はお腹から腰へキスをおろす。
手は相変わらず足の真ん中をゆっくりと刺激している。
じわりとにじむように出てるのが分かる。
声も出るし、腰も動いてしまう。

「無理なの。もう。脱ぎたい。お願い。」

「もう一回。ちゃんとお願いして。」

正面に顔を上げて視線を合わせる様に頬を挟まれて言われた。

「ベッドに行きたい。お願いします。」

「しょうがないな。」

そう言われて体を解放された途端に、1人で寝室に駆け込んだ。
あんな明るい中で下まで脱げと言われたら、絶対嫌。
リビングの明かりを落として、ゆっくりあとから近藤さんが歩いてきた。

「凄いやる気が満ちてるね。茜。」

自分はやっと上半身裸になりゆっくりとパジャマのズボンを脱いでするりと横に滑り込んできた。私が下半身そのままだと気がつくと動きを止める。
急いでズボンだけ脱いだ。
最後は近藤さんに取り上げられるようにベッドの下に落とされた。

「どうしてそんなに意地悪なの?だって聞いたじゃないですか?爬虫類が嫌いならって・・・・。いいって言ってくれたのに。」

「別にいいよ。爬虫類カフェ。行きたいならどこでもいいよ。」

「じゃあ、何で?あんなに・・・・。」

「トカゲにやきもち。」

ふって鼻で笑われた。

「うそ・・・ですよね。」

「うん、冗談。」

「もう、私は真剣に聞いてます。何かしましたか?怒ってますか?」

間違ったのはいつ?

「俺が真剣に日曜日の事、茜のご両親に気に入られるように考えてるのに、そのとき何してた?」

頬を挟まれてまたすぐ近くで聞かれた。

はい、爬虫類カフェのページを見てました。

「ご、ごめんなさい。だって大丈夫だって思ってるもん。間違いなく気に入ってくれるって。だから全然心配してないし。」

「そう、じゃあいいよ。ごめん。でもやっぱり緊張するから。ドジふんだら、もう泊りにもいったらダメって言われるし、付き合うのも反対されるから。」

「大丈夫です。そしたら家出するって言います。」

「だからそうならないように気を付けたいから。」


「はい。」

「うん、終わり。」

そう言ってキスをしてくれた。
あとはいつものように優しく、でも激しく愛してくれた。


朝、髪の毛を触られて顔にキスをされてるのを感じて目が覚めた。

「おはよう、茜。」

「おはようございます。」

何とか一度・・・目は開いて言葉は出たけど刺激がなくなると目が閉じそうになる。
でも、もう一度寝かせてくれるほど優しくはなかった。

ひょいっと体の上に乗せられて体を触られて後は同じように、一度ははっきり目覚めたのに疲れてまた目を閉じた。
しばらくして起こされた時はすっかり着替えをしてる近藤さん。

どうせならもう少し早く起こして。

急いでシャワーを浴びて着替えて化粧まで済ませた。

コーヒーを飲んで、小さなパンを1つ食べて出かけた。


いざ、爬虫類カフェへ!

到着するとテンションマックスに。
ガラスケースにぺたりと張り付くように見ていく。
隣で大人しく見ている近藤さん。

「近藤さん、見てください、可愛いです。」

何故か前後に小さく揺れてるカメレオン。
やっぱりこの子かな?かわいい。
あんまりしつこくかわいいを連発してしまい、どうやら近藤さんも愛着がわいてきたらしい。

「お、茜、こいつ、こっち見て手を振ってないか?」

足を上げて踏みだそうとして揺れているカメレオンが気に入ったようでうれしい。

「思いが通じましたね。」

そんな訳ないが、何とでも言おう。楽しんでくれるなら。

結局二人ともたくさんの写真を撮った。
もちろん一人一匹厳選した子を手にして、二人と一匹が一緒に写って、二枚。
これは大きなパネルでもいいくらいの貴重な写真。
うれしくて、そう思いながら眺める私に近藤さんが言う。

「お父さんにもに見せれそうか?」

「う~ん、きっと行きたかったってつぶやかれますね。お母さんだけにするかも。取りあえず明日以降で。」

駅に戻る途中の商店街をふらふらとして軽く食べてお母さんにメールする。

『夕飯までには帰る予定です。』

『それはお父さんには思わぬ吉報です。』

思わず笑顔になったけどちょっと寂しくもあった。

お父さん、やっぱり写真は見せないからね。

「じゃあ明日昼前に。近藤さんのところからだ1時間位かかりますからね。電車に乗ったら教えてください。時間を見て駅の改札まで迎えに行きますから。」

「ああ、分かった。」

ちょっと顔がこわばってる?

「なあ、明日はさっきのお土産とタッパー持って、格好はこんな感じでいいかな?スーツは変だよな?」

「もちろんです。普段着でいいです。ネクタイとかジャケットとか無しですよ。」

「分かった、そうする。」

「ねえ、近藤さん、写真嫌いじゃないんですか?あんまり撮るタイプには見えないですけど。」

「まあ、茜と一緒の写真はあってもいいかなって思ってる。」

「私、白衣を着てる職場での写真が欲しいんです、二人の。今度機会があったら撮ってください。」

「ああ、喜ん撮ってくれる奴がいるんじゃないか。」

「そうですね。いいですか?」

「もちろん。」




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