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第5章174話:相談

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冬がおとずれる。

寒い冬だった。

雪が降り積もる、真冬《まふゆ》のある日。

夜。

既に、アイリスは寝静《ねしず》まっていた。

クレアベルが、リビングで、ランタンの灯《あか》りをたよりに、書《しょ》を読んでいた。

私は声をかける。

「お母さん」

「ん?」

クレアベルが、書から目を離さぬまま、返事をする。

伝えなければならないことがあった。

意《い》を決《けっ》して、私は口にした。

「私、旅に出ようと思います」

次のページをめくろうとしたクレアベルの手が、止まった。

クレアベルがこちらに目を向ける。

「旅に出たい……そう言ったのか?」

「はい」

私はハッキリと肯定する。

冒険をしたい気持ちは、私の中で、強い熱《ねつ》を帯《お》びている。

この世界を旅してみたい。

いろんな場所を観光してみたい。

いろんな魔物と出会い、人と出会い、食べ物や、景色に触れてみたい。

それが今の、偽《いつわ》らざる本心だった。

クレアベルは、私をじっと見つめた。

やがて、微笑んだ。

「そうか」

クレアベルは、小さく、納得したように言った。

「実は私は、お前に一つ、選択肢を提示しようと思っていた」

「……?」

「学園だ」

と、クレアベルが書を閉じながら、言う。

「この国の学園は、15歳になれば、好きに通うことができる。まあ学費はいるが、学園に通いながら稼ぐ制度もある」

「そうなんですか」

「お前なら、その制度を利用して、学園に通い続けることもできるだろう。一度、考えてみたらどうだ?」

「はぁ」

学園……か。

そんな選択肢もあるのか。

前世だったら、義務教育があったから、当たり前のように学園に通っていたが。

そういえば、ヘンリックくんが学園への入学を目指して、努力していたっけ。

なんて思っていると。

「だが、そうか。もう……そんな年になるのか」

と、クレアベルがしみじみとつぶやいた。

「まあ決断ができたら、また言ってくれ。旅に出るにしろ、学園に通うにしろ、私はお前の選択を応援するつもりだ」

「……はい。ありがとうございます」

そう告げる。

話は終わったので、私は、おやすみのあいさつを告げてから寝室に入った。

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みんなの感想(2件)

とむ
2024.05.06 とむ

面白いんだけど、1話が短か過ぎて、
同じタイトル(5〜6話)で、
まとめて読むとちょうどいい。

解除
なつき
2024.04.22 なつき

とっても面白くて一気読みしてしまいました!
次の更新楽しみにしてます♫

解除

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