20 / 35
雪の芸術
しおりを挟む
「じゃあ今日は、ミュージアムと透のテーマパークのショーについてだな」
ホーラ・ウォッチのイベントが無事に終わった翌日。
休む間もなく、アートプラネッツのオフィスではミーティングが行われていた。
ミュージアムのオープニングイベントは、12月15日。
例に漏れず、子ども達を招待したプレオープンの様子と、夜はレセプションパーティーが催される予定だった。
「大河のことだから、映像は既に完成してるだろ?ミュージアムショップの納品もほぼ完了。あとは内装のチェックだな。イベントの司会は、千秋さんと瞳子ちゃんの二人にお願いする。ってことでいいんだよね?瞳子ちゃん」
「はい、よろしくお願いいたします」
すると大河がじっとうつむいたまま、何かを思案し始める。
「どうした?大河」
「いや、うん…。その、本当にまた表舞台に立って平気か?噂の発端は、同じくミュージアムのレセプションパーティーだったし」
気遣うように大河に顔を覗き込まれて、瞳子は意外そうに首を傾げる。
「はい、もう大丈夫です。昨日のホーラ・ウォッチも無事に終えられましたし」
「それは、そうだが…」
大河は、昨日マスコミに追われていた事実は、瞳子には伝えていなかった。
なんとか未然に防げた為、インタビューされたり直接撮影されることはなかったが、もしかしてこの先また週刊誌に何か書かれるかもしれない。
用心して、司会は控えた方がいい、と言いたいところだが、そうすると昨日の事を話さなければならない。
瞳子を不安にさせたくないし、以前「くだらない噂話で大切な仕事を奪われたくない」と言い切った瞳子を応援したい。
(今回も、そばで見守るしかないか)
そう思っているうちに、いつの間にか話題は透が手掛けたクリスマスショーへと移っていた。
「今回のプロジェクションマッピングは、パークの中央広場にある噴水に投影するんだ。だから鮮明な映像や何かを具現化したものではなくて、カラフルな色の移り変わりとか、光の動きを音楽に合わせてある」
説明しながら透がオフィスのプロジェクターで投影した映像を皆で鑑賞する。
確かに色が変化したり、光が様々な形に目まぐるしく変わっていく映像は美しいが、瞳子は、どこかアートプラネッツらしくない気がした。
洋平や吾郎も同じように感じたらしく、そんな皆の様子に、透は、心得てますとばかりに説明を始める。
「これだけだと物足りないでしょ?実は今回のショー、花火とのコラボなんだ」
「え、花火ですか?」
「そう。知ってる?ファイヤーワークマンって会社。俺達みたいに若手の5人組の会社なんだけどね。コンマ1秒単位まで音楽とシンクロさせた花火のショーを手掛けてるんだ」
「あ、夏のイベントでニュースになってた気がします」
「そう。プロ野球や音楽の野外フェスなんかで取り入れられて、一気に注目を集めたんだ。今回依頼されたテーマパークも、最初はうちだけしか考えてなかったけど、最近になって彼らとうちをコラボでやったらどうかって考えたみたい。こっちが断ることも出来るけど、俺はやってみたいんだよね、このコラボ。どう?引き受けてもいい?」
透が皆を見渡す。
「ああ、いいんじゃないか?新たな試みだな」
「うん。どんな化学反応が起こるか見てみたいし」
「ほんと?良かった。大河はどう?」
最後に皆が大河を振り返る。
大河も大きく頷いてみせた。
「透に任せたんだ。透のやりたいようにやればいい。楽しみにしてる」
「サンキュ!大河」
透はにっこりと嬉しそうに笑った。
◇
12月15日、いよいよアートプラネッツの新ミュージアム【六花~雪の芸術~】プレオープンの日がやってきた。
瞳子は朝から事務所で千秋と一緒に準備をしながら、早くもワクワクが止まらない。
「あー、楽しみ!大河さん、完成作を見せてくれなかったんですよね。だから私も見るのは今日が初めて。綺麗だろうなあ、雪の結晶!」
「ふふ、瞳子ったら。興奮し過ぎてセリフ飛ばないようにね」
「千秋さんがいてくれるから大丈夫!その時はお願いしますね」
やれやれと千秋は呆れたように笑った。
時間になり、二人は会場へと移動する。
今回は表参道にあるイベントホールを借りての開催だった。
「わあ、クリスマスムード満点ですね」
街は至るところにイルミネーションが飾られ、夜にライトアップされればさぞロマンチックな雰囲気だろうと、瞳子は胸を弾ませる。
「あら、会場も素敵な装飾ね。ホワイトクリスマスって感じで」
エントランスに足を踏み入れた千秋は、シャンパンゴールドとパールホワイトの二色使いでまとめられた内装をうっとりと見渡す。
「千秋さん、先に控え室に行っててください。私、少しだけ皆さんのお手伝いしてきます」
「はーい、行ってらっしゃい。アートプラネッツの瞳子さん」
千秋はおどけて、ヒラヒラと瞳子に手を振ってみせた。
◇
「やあ、アリシア。メリークリスマス!」
イベントスペースに行くと、マイクやスピーカーのセッティングをしていた透が、瞳子に気づいて笑顔を向ける。
「透さんったら。今日はクリスマスパーティーじゃないですよ?」
そう言いつつも、瞳子もメリークリスマス!と笑顔で返す。
「クリスマスパーティーか。仕事が落ち着いたらやりたいよね」
「いいですね。でも、落ち着きますか?仕事」
「うぐっ、それだな。クリスマスイブもクリスマス当日も仕事だった」
あはは!と瞳子は明るく笑う。
「でもそれもいいか。君と一緒に過ごせるからね。俺のテーマパークのショーも手伝ってくれるんだろう?アリシア」
「はい、もちろんです」
「良かった。君に最高にロマンチックなひとときをプレゼントするよ。楽しみにしててね」
透がウインクしてみせると、ガシッと後ろから吾郎が透の首に腕を回した。
「おいおい。大事な勝負の日にナンパするとは余裕だな」
「当たり前だろ?大河が仕上げた映像だ。完璧に決まってる」
そう言うと吾郎の腕を外し、じゃあ、またあとでね!アリシア、と手を挙げて軽い足取りで去っていった。
「まったくもう…。あいつすっかりアメリカンキャラが板についてきたな。透じゃなくて、トニーって呼ぼうか」
吾郎のボヤキに瞳子も思わず吹き出す。
「確かに合ってるかも!トニー」
「いや、やめよう。ますますつけ上がりそうだからな。それより瞳子ちゃん、控え室にいなくていいの?」
「その前に、ミュージアムショップの様子と、ゲストにお配りするノベルティとクッキーの確認をしたくて」
「ええー?そんな、いいのに。瞳子ちゃんは今日は司会に専念してくれれば」
「ううん、私が気になるだけなんです。ちょっとだけ見てきますね」
瞳子は吾郎と別れて、エントランスの横のショップコーナーを覗いた。
「わあ、素敵!」
雪の結晶をモチーフにした商品が、綺麗にディスプレイされている。
全て瞳子が手配した物だったが、こうして店頭に並ぶとなんだか感慨深くなる。
「このネックレス、可愛いよね。彼におねだりしてみようかな」
「私もー。代わりにこのペアのマグカップは私がプレゼントしよう」
販売員の女の子達が、商品を並べながら楽しそうに話している。
(私もあとで爆買いしちゃおう!もう、ここからここまでって、セレブ買いよ。ぐふふっ)
瞳子は思わず不気味にほくそ笑む。
次は、ノベルティとアイシングクッキーの確認に、受付のテーブルに向かった。
ここでもスタッフの女の子達が、
「可愛いねー!このクッキー」
「私も欲しいなー」
と笑顔で準備をしていた。
(うん、想像以上の出来栄え。良かった)
早くゲストの反応が見たいなと、瞳子はウキウキしながら控え室へと歩き始めた。
◇
「皆様、本日はアートプラネッツ 体験型ミュージアムの新作プレオープンイベントにようこそお越しくださいました」
いよいよイベントが始まった。
瞳子は千秋と並んでマイクを握る。
「今回のミュージアムのテーマは【六花~雪の芸術~】。天からの手紙とも言われる雪、1つとして同じものはないと言われる雪の結晶。アートプラネッツが手掛け、芸術へと昇華させた雪の世界を、どうぞ心ゆくまでお楽しみください」
多くのマスコミのカメラを前に、瞳子は臆することなく笑顔で語りかけた。
大河の挨拶とテープカットのあと、いよいよミュージアムはオープン。
子ども達が歓声を上げながら中へと入って行った。
「わあ、なんて綺麗…」
メインホールには氷のお城がそびえ立ち、その周りを彩るようにキラキラと雪の結晶が舞い落ちる。
そのスケールに瞳子は思わず息を呑んだ。
(素敵。まるで夢の国にいるみたい)
お城に近づくと、パーッと目の前の映像がお城の内部に変わった。
足を踏み入れるような感覚で、もう一歩前に歩み出る。
すると今度は、透明の螺旋階段が現れた。
階段を登るように視線を上げると、目に映る映像も天井へと変わっていく。
大きなクリスタルのシャンデリアに、瞳子はうっとりと両手を組んで見とれた。
繊細で美しく、圧倒される程綺麗な世界。
(本当に芸術的。感動で胸がいっぱいになる)
瞳子はいつまでも感嘆のため息をついていた。
隣の小ホールに行くと、細部まで忠実に再現された色々な形の雪の結晶が、あちこちに浮かんでいる。
その1つにそっと手をかざすと、詳しい説明文が現れた。
(あ、これって…)
それは瞳子が大河に渡した資料に書かれていたものだった。
(大河さん、採用してくれたんだ)
嬉しさにふふっと笑ってから、瞳子は1つ1つじっくり見て回った。
子ども達に人気のお絵描き投入エリアは、クリスマスのテーマで大きなツリーの映像だった。
皆、思い思いにプレゼントやサンタクロース、トナカイの絵を描いている。
このエリアは、クリスマスが終わると新年の富士山の映像に、そのあとはバレンタインデーに向けて、恋人達が愛のメッセージを投入出来るように様変わりする予定だった。
(みんなの笑顔が溢れて、幸せな空間だな。私、改めてアートプラネッツのミュージアムが大好き!)
瞳子は1人、幸せな気持ちで大河達の作り出す世界観に身を委ねていた。
ホーラ・ウォッチのイベントが無事に終わった翌日。
休む間もなく、アートプラネッツのオフィスではミーティングが行われていた。
ミュージアムのオープニングイベントは、12月15日。
例に漏れず、子ども達を招待したプレオープンの様子と、夜はレセプションパーティーが催される予定だった。
「大河のことだから、映像は既に完成してるだろ?ミュージアムショップの納品もほぼ完了。あとは内装のチェックだな。イベントの司会は、千秋さんと瞳子ちゃんの二人にお願いする。ってことでいいんだよね?瞳子ちゃん」
「はい、よろしくお願いいたします」
すると大河がじっとうつむいたまま、何かを思案し始める。
「どうした?大河」
「いや、うん…。その、本当にまた表舞台に立って平気か?噂の発端は、同じくミュージアムのレセプションパーティーだったし」
気遣うように大河に顔を覗き込まれて、瞳子は意外そうに首を傾げる。
「はい、もう大丈夫です。昨日のホーラ・ウォッチも無事に終えられましたし」
「それは、そうだが…」
大河は、昨日マスコミに追われていた事実は、瞳子には伝えていなかった。
なんとか未然に防げた為、インタビューされたり直接撮影されることはなかったが、もしかしてこの先また週刊誌に何か書かれるかもしれない。
用心して、司会は控えた方がいい、と言いたいところだが、そうすると昨日の事を話さなければならない。
瞳子を不安にさせたくないし、以前「くだらない噂話で大切な仕事を奪われたくない」と言い切った瞳子を応援したい。
(今回も、そばで見守るしかないか)
そう思っているうちに、いつの間にか話題は透が手掛けたクリスマスショーへと移っていた。
「今回のプロジェクションマッピングは、パークの中央広場にある噴水に投影するんだ。だから鮮明な映像や何かを具現化したものではなくて、カラフルな色の移り変わりとか、光の動きを音楽に合わせてある」
説明しながら透がオフィスのプロジェクターで投影した映像を皆で鑑賞する。
確かに色が変化したり、光が様々な形に目まぐるしく変わっていく映像は美しいが、瞳子は、どこかアートプラネッツらしくない気がした。
洋平や吾郎も同じように感じたらしく、そんな皆の様子に、透は、心得てますとばかりに説明を始める。
「これだけだと物足りないでしょ?実は今回のショー、花火とのコラボなんだ」
「え、花火ですか?」
「そう。知ってる?ファイヤーワークマンって会社。俺達みたいに若手の5人組の会社なんだけどね。コンマ1秒単位まで音楽とシンクロさせた花火のショーを手掛けてるんだ」
「あ、夏のイベントでニュースになってた気がします」
「そう。プロ野球や音楽の野外フェスなんかで取り入れられて、一気に注目を集めたんだ。今回依頼されたテーマパークも、最初はうちだけしか考えてなかったけど、最近になって彼らとうちをコラボでやったらどうかって考えたみたい。こっちが断ることも出来るけど、俺はやってみたいんだよね、このコラボ。どう?引き受けてもいい?」
透が皆を見渡す。
「ああ、いいんじゃないか?新たな試みだな」
「うん。どんな化学反応が起こるか見てみたいし」
「ほんと?良かった。大河はどう?」
最後に皆が大河を振り返る。
大河も大きく頷いてみせた。
「透に任せたんだ。透のやりたいようにやればいい。楽しみにしてる」
「サンキュ!大河」
透はにっこりと嬉しそうに笑った。
◇
12月15日、いよいよアートプラネッツの新ミュージアム【六花~雪の芸術~】プレオープンの日がやってきた。
瞳子は朝から事務所で千秋と一緒に準備をしながら、早くもワクワクが止まらない。
「あー、楽しみ!大河さん、完成作を見せてくれなかったんですよね。だから私も見るのは今日が初めて。綺麗だろうなあ、雪の結晶!」
「ふふ、瞳子ったら。興奮し過ぎてセリフ飛ばないようにね」
「千秋さんがいてくれるから大丈夫!その時はお願いしますね」
やれやれと千秋は呆れたように笑った。
時間になり、二人は会場へと移動する。
今回は表参道にあるイベントホールを借りての開催だった。
「わあ、クリスマスムード満点ですね」
街は至るところにイルミネーションが飾られ、夜にライトアップされればさぞロマンチックな雰囲気だろうと、瞳子は胸を弾ませる。
「あら、会場も素敵な装飾ね。ホワイトクリスマスって感じで」
エントランスに足を踏み入れた千秋は、シャンパンゴールドとパールホワイトの二色使いでまとめられた内装をうっとりと見渡す。
「千秋さん、先に控え室に行っててください。私、少しだけ皆さんのお手伝いしてきます」
「はーい、行ってらっしゃい。アートプラネッツの瞳子さん」
千秋はおどけて、ヒラヒラと瞳子に手を振ってみせた。
◇
「やあ、アリシア。メリークリスマス!」
イベントスペースに行くと、マイクやスピーカーのセッティングをしていた透が、瞳子に気づいて笑顔を向ける。
「透さんったら。今日はクリスマスパーティーじゃないですよ?」
そう言いつつも、瞳子もメリークリスマス!と笑顔で返す。
「クリスマスパーティーか。仕事が落ち着いたらやりたいよね」
「いいですね。でも、落ち着きますか?仕事」
「うぐっ、それだな。クリスマスイブもクリスマス当日も仕事だった」
あはは!と瞳子は明るく笑う。
「でもそれもいいか。君と一緒に過ごせるからね。俺のテーマパークのショーも手伝ってくれるんだろう?アリシア」
「はい、もちろんです」
「良かった。君に最高にロマンチックなひとときをプレゼントするよ。楽しみにしててね」
透がウインクしてみせると、ガシッと後ろから吾郎が透の首に腕を回した。
「おいおい。大事な勝負の日にナンパするとは余裕だな」
「当たり前だろ?大河が仕上げた映像だ。完璧に決まってる」
そう言うと吾郎の腕を外し、じゃあ、またあとでね!アリシア、と手を挙げて軽い足取りで去っていった。
「まったくもう…。あいつすっかりアメリカンキャラが板についてきたな。透じゃなくて、トニーって呼ぼうか」
吾郎のボヤキに瞳子も思わず吹き出す。
「確かに合ってるかも!トニー」
「いや、やめよう。ますますつけ上がりそうだからな。それより瞳子ちゃん、控え室にいなくていいの?」
「その前に、ミュージアムショップの様子と、ゲストにお配りするノベルティとクッキーの確認をしたくて」
「ええー?そんな、いいのに。瞳子ちゃんは今日は司会に専念してくれれば」
「ううん、私が気になるだけなんです。ちょっとだけ見てきますね」
瞳子は吾郎と別れて、エントランスの横のショップコーナーを覗いた。
「わあ、素敵!」
雪の結晶をモチーフにした商品が、綺麗にディスプレイされている。
全て瞳子が手配した物だったが、こうして店頭に並ぶとなんだか感慨深くなる。
「このネックレス、可愛いよね。彼におねだりしてみようかな」
「私もー。代わりにこのペアのマグカップは私がプレゼントしよう」
販売員の女の子達が、商品を並べながら楽しそうに話している。
(私もあとで爆買いしちゃおう!もう、ここからここまでって、セレブ買いよ。ぐふふっ)
瞳子は思わず不気味にほくそ笑む。
次は、ノベルティとアイシングクッキーの確認に、受付のテーブルに向かった。
ここでもスタッフの女の子達が、
「可愛いねー!このクッキー」
「私も欲しいなー」
と笑顔で準備をしていた。
(うん、想像以上の出来栄え。良かった)
早くゲストの反応が見たいなと、瞳子はウキウキしながら控え室へと歩き始めた。
◇
「皆様、本日はアートプラネッツ 体験型ミュージアムの新作プレオープンイベントにようこそお越しくださいました」
いよいよイベントが始まった。
瞳子は千秋と並んでマイクを握る。
「今回のミュージアムのテーマは【六花~雪の芸術~】。天からの手紙とも言われる雪、1つとして同じものはないと言われる雪の結晶。アートプラネッツが手掛け、芸術へと昇華させた雪の世界を、どうぞ心ゆくまでお楽しみください」
多くのマスコミのカメラを前に、瞳子は臆することなく笑顔で語りかけた。
大河の挨拶とテープカットのあと、いよいよミュージアムはオープン。
子ども達が歓声を上げながら中へと入って行った。
「わあ、なんて綺麗…」
メインホールには氷のお城がそびえ立ち、その周りを彩るようにキラキラと雪の結晶が舞い落ちる。
そのスケールに瞳子は思わず息を呑んだ。
(素敵。まるで夢の国にいるみたい)
お城に近づくと、パーッと目の前の映像がお城の内部に変わった。
足を踏み入れるような感覚で、もう一歩前に歩み出る。
すると今度は、透明の螺旋階段が現れた。
階段を登るように視線を上げると、目に映る映像も天井へと変わっていく。
大きなクリスタルのシャンデリアに、瞳子はうっとりと両手を組んで見とれた。
繊細で美しく、圧倒される程綺麗な世界。
(本当に芸術的。感動で胸がいっぱいになる)
瞳子はいつまでも感嘆のため息をついていた。
隣の小ホールに行くと、細部まで忠実に再現された色々な形の雪の結晶が、あちこちに浮かんでいる。
その1つにそっと手をかざすと、詳しい説明文が現れた。
(あ、これって…)
それは瞳子が大河に渡した資料に書かれていたものだった。
(大河さん、採用してくれたんだ)
嬉しさにふふっと笑ってから、瞳子は1つ1つじっくり見て回った。
子ども達に人気のお絵描き投入エリアは、クリスマスのテーマで大きなツリーの映像だった。
皆、思い思いにプレゼントやサンタクロース、トナカイの絵を描いている。
このエリアは、クリスマスが終わると新年の富士山の映像に、そのあとはバレンタインデーに向けて、恋人達が愛のメッセージを投入出来るように様変わりする予定だった。
(みんなの笑顔が溢れて、幸せな空間だな。私、改めてアートプラネッツのミュージアムが大好き!)
瞳子は1人、幸せな気持ちで大河達の作り出す世界観に身を委ねていた。
17
お気に入りに追加
44
あなたにおすすめの小説
西谷夫妻の新婚事情~元教え子は元担任教師に溺愛される~
雪宮凛
恋愛
結婚し、西谷明人の姓を名乗り始めて三か月。舞香は今日も、新妻としての役目を果たそうと必死になる。
元高校の担任教師×元不良女子高生の、とある新婚生活の一幕。
※ムーンライトノベルズ様にも、同じ作品を転載しています。
【R18】らぶえっち短編集
おうぎまちこ(あきたこまち)
恋愛
調べたら残り2作品ありました、本日投稿しますので、お待ちくださいませ(3/31)
R18執筆1年目の時に書いた短編完結作品23本のうち商業作品をのぞく約20作品を短編集としてまとめることにしました。
※R18に※
※毎日投稿21時~24時頃、1作品ずつ。
※R18短編3作品目「追放されし奴隷の聖女は、王位簒奪者に溺愛される」からの投稿になります。
※処女作「清廉なる巫女は、竜の欲望の贄となる」2作品目「堕ちていく竜の聖女は、年下皇太子に奪われる」は商業化したため、読みたい場合はムーンライトノベルズにどうぞよろしくお願いいたします。
※これまでに投稿してきた短編は非公開になりますので、どうぞご了承くださいませ。
【R18】清掃員加藤望、社長の弱みを握りに来ました!
Bu-cha
恋愛
ずっと好きだった初恋の相手、社長の弱みを握る為に頑張ります!!にゃんっ♥
財閥の分家の家に代々遣える“秘書”という立場の“家”に生まれた加藤望。
”秘書“としての適正がない”ダメ秘書“の望が12月25日の朝、愛している人から連れてこられた場所は初恋の男の人の家だった。
財閥の本家の長男からの指示、”星野青(じょう)の弱みを握ってくる“という仕事。
財閥が青さんの会社を吸収する為に私を任命した・・・!!
青さんの弱みを握る為、“ダメ秘書”は今日から頑張ります!!
関連物語
『お嬢様は“いけないコト”がしたい』
『“純”の純愛ではない“愛”の鍵』連載中
『雪の上に犬と猿。たまに男と女。』
エブリスタさんにて恋愛トレンドランキング最高11位
『好き好き大好きの嘘』
エブリスタさんにて恋愛トレンドランキング最高36位
『約束したでしょ?忘れちゃった?』
エブリスタさんにて恋愛トレンドランキング最高30位
※表紙イラスト Bu-cha作
【R18】両想いでいつもいちゃいちゃしてる幼馴染の勇者と魔王が性魔法の自習をする話
みやび
恋愛
タイトル通りのエロ小説です。
「両想いでいつもいちゃいちゃしてる幼馴染の勇者と魔王が初めてのエッチをする話」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/902071521/575414884/episode/3378453
の続きです。
ほかのエロ小説は「タイトル通りのエロ小説シリーズ」まで
壁の花令嬢の最高の結婚
晴 菜葉
恋愛
壁の花とは、舞踏会で誰にも声を掛けてもらえず壁に立っている適齢期の女性を示す。
社交デビューして五年、一向に声を掛けられないヴィンセント伯爵の実妹であるアメリアは、兄ハリー・レノワーズの悪友であるブランシェット子爵エデュアルト・パウエルの心ない言葉に傷ついていた。
ある日、アメリアに縁談話がくる。相手は三十歳上の財産家で、妻に暴力を働いてこれまでに三回離縁を繰り返していると噂の男だった。
アメリアは自棄になって家出を決行する。
行く当てもなく彷徨いていると、たまたま賭博場に行く途中のエデュアルトに出会した。
そんなとき、彼が暴漢に襲われてしまう。
助けたアメリアは、背中に消えない傷を負ってしまった。
乙女に一生の傷を背負わせてしまったエデュアルトは、心底反省しているようだ。
「俺が出来ることなら何だってする」
そこでアメリアは考える。
暴力を振るう亭主より、女にだらしない放蕩者の方がずっとマシ。
「では、私と契約結婚してください」
R18には※をしています。
所詮は他人事と言われたので他人になります!婚約者も親友も見捨てることにした私は好きに生きます!
ユウ
恋愛
辺境伯爵令嬢のリーゼロッテは幼馴染と婚約者に悩まされてきた。
幼馴染で親友であるアグネスは侯爵令嬢であり王太子殿下の婚約者ということもあり幼少期から王命によりサポートを頼まれていた。
婚約者である伯爵家の令息は従妹であるアグネスを大事にするあまり、婚約者であるサリオンも優先するのはアグネスだった。
王太子妃になるアグネスを優先することを了承ていたし、大事な友人と婚約者を愛していたし、尊敬もしていた。
しかしその関係に亀裂が生じたのは一人の女子生徒によるものだった。
貴族でもない平民の少女が特待生としてに入り王太子殿下と懇意だったことでアグネスはきつく当たり、婚約者も同調したのだが、相手は平民の少女。
遠回しに二人を注意するも‥
「所詮あなたは他人だもの!」
「部外者がしゃしゃりでるな!」
十年以上も尽くしてきた二人の心のない言葉に愛想を尽かしたのだ。
「所詮私は他人でしかないので本当の赤の他人になりましょう」
関係を断ったリーゼロッテは国を出て隣国で生きていくことを決めたのだが…
一方リーゼロッテが学園から姿を消したことで二人は王家からも責められ、孤立してしまうのだった。
なんとか学園に連れ戻そうと試みるのだが…
よくある婚約破棄なので
おのまとぺ
恋愛
ディアモンテ公爵家の令嬢ララが婚約を破棄された。
その噂は風に乗ってすぐにルーベ王国中に広がった。なんといっても相手は美男子と名高いフィルガルド王子。若い二人の結婚の日を国民は今か今かと夢見ていたのだ。
言葉数の少ない公爵令嬢が友人からの慰めに対して放った一言は、社交界に小さな波紋を呼ぶ。「災難だったわね」と声を掛けたアネット嬢にララが返した言葉は短かった。
「よくある婚約破棄なので」
・すれ違う二人をめぐる短い話
・前編は各自の証言になります
・後編は◆→ララ、◇→フィルガルド
・全25話完結
ほらやっぱり、結局貴方は彼女を好きになるんでしょう?
望月 或
恋愛
ベラトリクス侯爵家のセイフィーラと、ライオロック王国の第一王子であるユークリットは婚約者同士だ。二人は周りが羨むほどの相思相愛な仲で、通っている学園で日々仲睦まじく過ごしていた。
ある日、セイフィーラは落馬をし、その衝撃で《前世》の記憶を取り戻す。ここはゲームの中の世界で、自分は“悪役令嬢”だということを。
転入生のヒロインにユークリットが一目惚れをしてしまい、セイフィーラは二人の仲に嫉妬してヒロインを虐め、最後は『婚約破棄』をされ修道院に送られる運命であることを――
そのことをユークリットに告げると、「絶対にその彼女に目移りなんてしない。俺がこの世で愛しているのは君だけなんだ」と真剣に言ってくれたのだが……。
その日の朝礼後、ゲームの展開通り、ヒロインのリルカが転入してくる。
――そして、セイフィーラは見てしまった。
目を見開き、頬を紅潮させながらリルカを見つめているユークリットの顔を――
※作者独自の世界設定です。ゆるめなので、突っ込みは心の中でお手柔らかに願います……。
※たまに第三者視点が入ります。(タイトルに記載)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる