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第四章・新たな生活

49・知らぬ間に

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 「りょうママ、きょうはおでかけなんだよね?」
 今日のお出かけを心待ちにしていた柚子は、うずうずした様子でそう聞いてくる。

 「今日ね、明良さんの会社へ行くよ!きっと沢山お友達も来てるんじゃないかな?仲良くなれるといいね!」

 「わぁ~たのしみ!みんなでおでかけも、うれしい~」

 柚子はすっかりと興奮している。私はそんな様子の柚子に笑顔を向けながら、準備を急いだ。

 ──もうそろそろ、明良さん呼びにくるかな?

 「おーい!涼さん、柚子ちゃん。もう行くよ~」
 明良さんのその声に、はーい!って返事をしながら二人で離れの家を出る。

 「おじさんとおばさん、本当に来なくて良かったんですか?代わりに部外者の私と柚子が来ちゃっていいのかな…」

 明良さんの職場のイベントに向かう車内で、気になって聞いてみる。

 「全然大丈夫です!というか、一緒に来てくれて有り難いんですよ。俺、独身だし一人で参加もし辛いんです。家族を連れてこちらに転勤になった人達が多いから尚更…。父ちゃんと母ちゃんは今朝になったら急に人が多い所行きたくないって…酷すぎません?」と明良さんは苦笑いする。

 それには明良さんには悪いが、沢井さん夫婦らしいなって思って笑いが出る。

 「おじちゃん、おばちゃんもきてほしかったー!」
 そんな事を言う柚子に、明良さんは笑顔で顔を見合わせて、だよね~って。

 「大丈夫なら良かったです。柚子は凄く今日を楽しみにしていたので。ところで今日はどういったイベントの内容なんですか?」

 何も聞かないままここまで一緒に来てしまったが、今更ながら気になって聞いてみた。

 「今日は新事業に携わった人達だけの慰労の会なんです。食べ物の屋台なんかもあるし、ゲームコーナーもありますからね。柚子ちゃん喜ぶんじゃないか?って思って!それから本社の方からも何人か来ているらしくて、アピールの意味もあるんじゃないですかね?」

 本社の方が?って思ったけど、結婚していた間に会社の方で個人的に仲良くさせていただいた人は居なかったし…だからきっと大丈夫。

 会場に着いて、3人で車を降りる。
 家族連れや、若い人から年配の方まで沢山の人が来ている。
 それで新事業がかなり規模の大きなものなんだと分かる。

 「涼さん、柚子ちゃん。まず受付をしないといけないので。一緒に来て貰えますか?」
 それにハイ!もちろんって返事して、柚子は明良さんと手を繋いで歩いて行く。

 「一応、俺の家族という事で受付させて下さいね。そうすると食事券とかゲームの参加券とかもらえますから。えーっと、沢井明良、涼、柚子っと。」

 わっ!なんか連名で記入したら本当の家族みたいだって思って、ちょっと照れちゃうな…

 そう思う私をよそに、明良さんは何食わぬ顔で受付をすませ、柚子と一緒に早速お目当てのゲームコーナーへと駆け出す。

 「ふふっ、二人共子供みたいだ!」
 思わず笑ってしまって、2人の後を追いかける。

 それから屋台でお昼を食べたり、社屋を見学させてもらったり、明良さんの同僚の方の子供達と遊んだりしながら楽しい時間を過ごした。

 柚子はこんなお出掛けは初めてでよほど楽しかったのだろう、すっかりはしゃいでしまって最後には明良さんの腕の中で、うつらうつらしだす。
 それでそうっと車に運んでそのまま会場を後にした。


 私は全く知らなかったが、そんな私達の様子をじっと見ていた人がいた…。その人は受付に近付いて今日参加した人達の名簿を確認する…

 ──沢井…涼、柚子…?

 
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