上 下
31 / 108
第ニ章・幸せな結婚?

30・更なる真実

しおりを挟む
 急に内藤の家にやって来た私に、叔父は一瞬驚いたようだった。だけど私のただならない様子に気が付いてのことだろう…すんなりと迎え入れてくれた。

 「どうしたんだ?涼、こんな時間に…。何か、何かあったのか?」と心配気しんぱいげにそう言う。

 「叔父さん、夜分遅くすみません。私どうしても聞きたい事があるんです…。もしかして、お父さんと伏木さんとの事で私に伝えてない事って…ないですか?」その言葉に一瞬叔父の顔が強張こわばる。

 ──やっぱり…何かあるんだ!?

 「何か…私に隠してるんでしょうか?もしかして言っちゃいけない事なんですか?」

 私はそう聞いて緊張で息を呑む。そして…

 「この事はやっぱりお前にはショックかも知れないな。お前のお母さんの事を考えると…。実は兄さんは伏木さんの番…だったんだ。」

 ──えっ!番…だったの?別れてしまったけど、その時は既に番に…なっていた!?

 まるでパズルのピースがまるような気がした。

 ──番にはならない。そう言われたのは、これが原因かもしれないと…

 私の父と直哉さんの父、二人が番だった。だけどそれならオメガの父はアルファの母とは番にはなれなかった?永遠に…

 母はどれくらいの孤独だったんだろうか…恐らくは納得済で父と結婚したんだろうけども。
 だけどやっぱり父を愛していたんだろう…そのくらいの強い愛だったんだ。
 自分とは一生番になれない人を…愛する。

 ──まるで私のようだ…

 お母さん親子二代おやこにだいだね?って思って、フッと笑った…泣きながら。

 「お前はお母さんの事を考えてしまうだろうけど…兄さんも勇気のいる事だったと思うよ?番と別れるのは。一生一人になるって決まったようなものだからね。お母さんが居て、たまたまそうならなかっただけだ。伏木さんの方はアルファだからいくらでも番を作れるだろうけどなぁ…」

 ──そうだ。この事は確かにショックだけど、この事が私を殺したいほど憎い…ってなるだろうか?
 直哉さんの番にならないって理由にはなるけど…

 きっと私の知らない事がまだあるんだ…それは恐らく伏木の家での事なんだろう。
 そしてそれは優さんに関係があるんだ。
 そう考えていると…ふいに玄関の呼び出しベルが鳴る。

 ──もしや、このベルは…

 「涼、直哉さんだったらどうする?もしも嫌なら今日は居ないって言うか?会いたくないから帰って欲しいって言うか?」

 その叔父の言葉に一瞬迷う。どうしよう…

 「取り敢えず話をしてみろ!その方が良いと思う…俺は席を外すから。何かあって家に来たんだろう?そんな事を聞くほどなんだから」
 そう言って叔父は玄関に向かう。

 ──そうだね。優さんにあの件を聞いて来たのかは分からない。そうじゃないのだとしたら純粋に心配して…なんだから。

 「涼!やっぱりここに居たのか?帰ってきた気配があるのにお前居ないから…心配しただろ!」

 そう言って私の身体をぎゅっと抱き締めて来た直哉さん…
 そんな行動に安心してしまったら、また涙が出てきたろ
 もう嫌になる!なんて泣き虫になっちゃったんだろ?私。
 直哉さんに出逢って、そして愛してしまって…

 ──もしかしたら愛しちゃいけない人なのに…

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

初心者オメガは執着アルファの腕のなか

深嶋
BL
自分がベータであることを信じて疑わずに生きてきた圭人は、見知らぬアルファに声をかけられたことがきっかけとなり、二次性の再検査をすることに。その結果、自身が本当はオメガであったと知り、愕然とする。 オメガだと判明したことで否応なく変化していく日常に圭人は戸惑い、悩み、葛藤する日々。そんな圭人の前に、「運命の番」を自称するアルファの男が再び現れて……。 オメガとして未成熟な大学生の圭人と、圭人を番にしたい社会人アルファの男が、ゆっくりと愛を深めていきます。 穏やかさに滲む執着愛。望まぬ幸運に恵まれた主人公が、悩みながらも運命の出会いに向き合っていくお話です。本編、攻め編ともに完結済。

出来損ないのオメガは貴公子アルファに愛され尽くす エデンの王子様

冬之ゆたんぽ
BL
旧題:エデンの王子様~ぼろぼろアルファを救ったら、貴公子に成長して求愛してくる~ 二次性徴が始まり、オメガと判定されたら収容される、全寮制学園型施設『エデン』。そこで全校のオメガたちを虜にした〝王子様〟キャラクターであるレオンは、卒業後のダンスパーティーで至上のアルファに見初められる。「踊ってください、私の王子様」と言って跪くアルファに、レオンは全てを悟る。〝この美丈夫は立派な見た目と違い、王子様を求めるお姫様志望なのだ〟と。それが、初恋の女の子――誤認識であり実際は少年――の成長した姿だと知らずに。 ■受けが誤解したまま進んでいきますが、攻めの中身は普通にアルファです。 ■表情の薄い黒騎士アルファ(攻め)×ハンサム王子様オメガ(受け)

推しの完璧超人お兄様になっちゃった

紫 もくれん
BL
『君の心臓にたどりつけたら』というゲーム。体が弱くて一生の大半をベットの上で過ごした僕が命を賭けてやり込んだゲーム。 そのクラウス・フォン・シルヴェスターという推しの大好きな完璧超人兄貴に成り代わってしまった。 ずっと好きで好きでたまらなかった推し。その推しに好かれるためならなんだってできるよ。 そんなBLゲーム世界で生きる僕のお話。

孕めないオメガでもいいですか?

月夜野レオン
BL
病院で子供を孕めない体といきなり診断された俺は、どうして良いのか判らず大好きな幼馴染の前から消える選択をした。不完全なオメガはお前に相応しくないから…… オメガバース作品です。

嫌われ者の僕はひっそりと暮らしたい

りまり
BL
 僕のいる世界は男性でも妊娠することのできる世界で、僕の婚約者は公爵家の嫡男です。  この世界は魔法の使えるファンタジーのようなところでもちろん魔物もいれば妖精や精霊もいるんだ。  僕の婚約者はそれはそれは見目麗しい青年、それだけじゃなくすごく頭も良いし剣術に魔法になんでもそつなくこなせる凄い人でだからと言って平民を見下すことなくわからないところは教えてあげられる優しさを持っている。  本当に僕にはもったいない人なんだ。  どんなに努力しても成果が伴わない僕に呆れてしまったのか、最近は平民の中でも特に優秀な人と一緒にいる所を見るようになって、周りからもお似合いの夫婦だと言われるようになっていった。その一方で僕の評価はかなり厳しく彼が可哀そうだと言う声が聞こえてくるようにもなった。  彼から言われたわけでもないが、あの二人を見ていれば恋愛関係にあるのぐらいわかる。彼に迷惑をかけたくないので、卒業したら結婚する予定だったけど両親に今の状況を話て婚約を白紙にしてもらえるように頼んだ。  答えは聞かなくてもわかる婚約が解消され、僕は学校を卒業したら辺境伯にいる叔父の元に旅立つことになっている。  後少しだけあなたを……あなたの姿を目に焼き付けて辺境伯領に行きたい。

βの僕、激強αのせいでΩにされた話

ずー子
BL
オメガバース。BL。主人公君はβ→Ω。 αに言い寄られるがβなので相手にせず、Ωの優等生に片想いをしている。それがαにバレて色々あってΩになっちゃう話です。 β(Ω)視点→α視点。アレな感じですが、ちゃんとラブラブエッチです。 他の小説サイトにも登録してます。

初夜の翌朝失踪する受けの話

春野ひより
BL
家の事情で8歳年上の男と結婚することになった直巳。婚約者の恵はカッコいいうえに優しくて直巳は彼に恋をしている。けれど彼には別に好きな人がいて…? タイトル通り初夜の翌朝攻めの前から姿を消して、案の定攻めに連れ戻される話。 歳上穏やか執着攻め×頑固な健気受け

【完結】運命の番に逃げられたアルファと、身代わりベータの結婚

貴宮 あすか
BL
ベータの新は、オメガである兄、律の身代わりとなって結婚した。 相手は優れた経営手腕で新たちの両親に見込まれた、アルファの木南直樹だった。 しかし、直樹は自分の運命の番である律が、他のアルファと駆け落ちするのを手助けした新を、律の身代わりにすると言って組み敷き、何もかも初めての新を律の名前を呼びながら抱いた。それでも新は幸せだった。新にとって木南直樹は少年の頃に初めての恋をした相手だったから。 アルファ×ベータの身代わり結婚ものです。

処理中です...