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第一章・思ってもみない結婚
11・決心
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「すみません…本当に」
自分でも自分の行動が理解できず困惑ぎみだが、失礼だっただろうと謝った。
先程まで泣きながら二人で抱き合い、それを見つめている直哉さん…という不思議な構図が出来ていた。
「涼さんは性格までお父さんに似てるね?感受性豊かで。」と伏木さんが笑ってくださり、怒ってないとホッとする。
それですっかり緊張が解けた私は、勧められるまま伏木さんの隣の席に座らせていただいた。
伏木さんはずっと笑顔で私を見ていて、それに私も笑顔を返す。
「さっきまで泣いてたと思ったら今度は笑って…忙しいですね?」と呆れたように直哉さんが言う。
私もそれは不思議に思う。まるで私の中の父の遺伝子がそうさせるのか?と思うほどだ。
昔、一度だけだが会った事があるから?
「今日は来てくれてありがとう。直哉との結婚の件、驚いただろう?急にすまなかったね…」と言って、今迄の経緯を話し始めた。
父と別れた伏木さんは、父と同じでその後奥様と知り合い結婚したそうだ。
そして直哉さんと優さんという息子二人に恵まれる。
そして二十年前、偶然父の会社の倒産の危機を知って自ら援助を申し出たそう…
父から借金を頼んだのではなくて良かった…本当に。
少しだけ気が軽くなった私に
「お父さんの経営が悪いんじゃなかったんだよ?重要な取引先の倒産でそのような状況になってしまったんだ…」と更に重要な真実を教えてくれる。
「お父さんは借用書をと言ったんだが、私自身のお金を使って援助したんだ、返して貰うつもりもなかった。だけどそれでは気が済まない…となって、遺言書という形で残すと言ってね。だけどそれは二人の間の冗談みたいなもので正式な遺言書じゃないんだ。それが結局、本当の遺言みたいになってしまうとは…」と辛い表情に。
それから何年かで本当に亡くなってしまった父──。
「だからね、涼さん。強制じゃないんだ…。だけど二人にはどうしても会ってみて欲しくて。そして二人が良かったら付き合って欲しいと。でもこんなの年寄りのお節介だったね…迷惑かけてすまない、本当に。」と伏木さんは頭を下げた。
そんな様子の伏木さんを見ていたら堪らずに…
「お節介じゃないです。私と直哉さんは本当に結婚を前提にお付き合いしているんです。迷惑だとは思っていないので大丈夫ですよ。」って言ってしまう。
…何て事言っちゃったんだ私は。バカだ…
それに直哉さんに返事すらしてないのに。
チラッと直哉さんを見たら…固まってる。マズい…
「おお!そうなのか?良かった!嬉しいなぁ。」
伏木さんが喜んでいらっしゃる…もう訂正は無理だよ。
ていうか、言っちゃった時点で訂正なんて出来ない。
それから大喜びの伏木さんが、夕食も是非に…と仰っしゃって有り難くご一緒させて頂いた。
ほぼ初めてお会いするのに凄く和やかな時間を過ごす事が出来た。
やっぱり…私、寂しかったのかも知れない。
両親が亡くなってから、こんな風に親のように温かな目で見られた事なかったから…
それから名残惜しい気持ちでお礼を言って、またお会いする約束をして伏木邸を後にした。
行きと同じで直哉さんに車で家まで送ってもらうことに。
「すいませんでした。勝手にあんな事を言ってしまって…怒ってらっしゃいますよね?」
少し走ったところで唐突に謝る。
直哉さんが私をじっと見ている。そして一旦車を端に寄せて止めた。
「怒ってません、全く。お礼を言いたいくらいです。あんな…あんな嬉しそうな父の顔、久しぶりに見ました!初めて┉と言ってもいいかもしれません。本当にありがとうございました。」と頭を下げた。
泣き笑いの感無量といった表情でそう言う直哉さんをじっと見ていたら…何かまた違う感情が湧いてくる。
私もしかして、ホントにもしかしたらだけど…好き、なんだろうか?
父親の為に自分を犠牲にしようとする人を。
全く気が進まない見合いをし、その相手に頭を下げて協力を頼み、父の笑顔で涙を流す…そんな人を?
──私とは番にならないと宣言する人を…
自分でも自分の行動が理解できず困惑ぎみだが、失礼だっただろうと謝った。
先程まで泣きながら二人で抱き合い、それを見つめている直哉さん…という不思議な構図が出来ていた。
「涼さんは性格までお父さんに似てるね?感受性豊かで。」と伏木さんが笑ってくださり、怒ってないとホッとする。
それですっかり緊張が解けた私は、勧められるまま伏木さんの隣の席に座らせていただいた。
伏木さんはずっと笑顔で私を見ていて、それに私も笑顔を返す。
「さっきまで泣いてたと思ったら今度は笑って…忙しいですね?」と呆れたように直哉さんが言う。
私もそれは不思議に思う。まるで私の中の父の遺伝子がそうさせるのか?と思うほどだ。
昔、一度だけだが会った事があるから?
「今日は来てくれてありがとう。直哉との結婚の件、驚いただろう?急にすまなかったね…」と言って、今迄の経緯を話し始めた。
父と別れた伏木さんは、父と同じでその後奥様と知り合い結婚したそうだ。
そして直哉さんと優さんという息子二人に恵まれる。
そして二十年前、偶然父の会社の倒産の危機を知って自ら援助を申し出たそう…
父から借金を頼んだのではなくて良かった…本当に。
少しだけ気が軽くなった私に
「お父さんの経営が悪いんじゃなかったんだよ?重要な取引先の倒産でそのような状況になってしまったんだ…」と更に重要な真実を教えてくれる。
「お父さんは借用書をと言ったんだが、私自身のお金を使って援助したんだ、返して貰うつもりもなかった。だけどそれでは気が済まない…となって、遺言書という形で残すと言ってね。だけどそれは二人の間の冗談みたいなもので正式な遺言書じゃないんだ。それが結局、本当の遺言みたいになってしまうとは…」と辛い表情に。
それから何年かで本当に亡くなってしまった父──。
「だからね、涼さん。強制じゃないんだ…。だけど二人にはどうしても会ってみて欲しくて。そして二人が良かったら付き合って欲しいと。でもこんなの年寄りのお節介だったね…迷惑かけてすまない、本当に。」と伏木さんは頭を下げた。
そんな様子の伏木さんを見ていたら堪らずに…
「お節介じゃないです。私と直哉さんは本当に結婚を前提にお付き合いしているんです。迷惑だとは思っていないので大丈夫ですよ。」って言ってしまう。
…何て事言っちゃったんだ私は。バカだ…
それに直哉さんに返事すらしてないのに。
チラッと直哉さんを見たら…固まってる。マズい…
「おお!そうなのか?良かった!嬉しいなぁ。」
伏木さんが喜んでいらっしゃる…もう訂正は無理だよ。
ていうか、言っちゃった時点で訂正なんて出来ない。
それから大喜びの伏木さんが、夕食も是非に…と仰っしゃって有り難くご一緒させて頂いた。
ほぼ初めてお会いするのに凄く和やかな時間を過ごす事が出来た。
やっぱり…私、寂しかったのかも知れない。
両親が亡くなってから、こんな風に親のように温かな目で見られた事なかったから…
それから名残惜しい気持ちでお礼を言って、またお会いする約束をして伏木邸を後にした。
行きと同じで直哉さんに車で家まで送ってもらうことに。
「すいませんでした。勝手にあんな事を言ってしまって…怒ってらっしゃいますよね?」
少し走ったところで唐突に謝る。
直哉さんが私をじっと見ている。そして一旦車を端に寄せて止めた。
「怒ってません、全く。お礼を言いたいくらいです。あんな…あんな嬉しそうな父の顔、久しぶりに見ました!初めて┉と言ってもいいかもしれません。本当にありがとうございました。」と頭を下げた。
泣き笑いの感無量といった表情でそう言う直哉さんをじっと見ていたら…何かまた違う感情が湧いてくる。
私もしかして、ホントにもしかしたらだけど…好き、なんだろうか?
父親の為に自分を犠牲にしようとする人を。
全く気が進まない見合いをし、その相手に頭を下げて協力を頼み、父の笑顔で涙を流す…そんな人を?
──私とは番にならないと宣言する人を…
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