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1・プロローグ

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 もう嫌だ!元々僕は、こんな人間だったろうか?こんなに弱くて後ろ向きの…違う!絶対に。

 結婚して二年。大企業の二代目社長の夫は、全てを僕に与えてくれる。使い切れないほどのお金と立派な住居。それに身の回りのこと全てをやってくれる使用人。おまけに社長夫人という社会的地位まで…

 だけど、これら何一つ僕が望んだものではなかったじゃないか?お金があっても使うところなどないし、家なんて2LDKくらがベストだろ?それに社長夫人なんて、僕には荷が重いよ。
 それにあの人は、僕が唯一望んだものは与えてはくれない…
 
 例え政略結婚で結ばれたとしても、時が愛を育ててくれるのだと思っていた…それが甘いと言われればそうなんだけどね。
 愛を除く全てを与えて、心は全く歩み寄ろうとしない夫との毎日に、僕は疲れ果てた…

 ──もう、離婚しよう。

 それがお互いにとって、ベストな選択だと思う。
 もうじきヒートがやってくる。その前に結論を出すべきだ!そうでなければ、またずるずると同じことの繰り返し。
 
 あの人への想いを断ち切ろう…そう思ってハッと気付く。
 夫を愛していない…そうずっと言い続けてきたのに、それなのか?結局は、心の底では求めてきたのだろう。愛し愛されることを…そう自覚して、フッと自嘲気味に笑う。
 
 『さようなら』今夜そう言おう。もう僕は限界なんだ!そう決心して、夫を待ち構えた…それなのに何で?

 「しずねたん♡あいしてるぅ~」

 その辺の芸能人も顔負けの端正な顔を、真っ赤にして僕にそう愛を告白している。

 ──何だと!?正気か?

 いつも完全無欠で何においても完璧な夫。それなのにこれは何だと、呆然として友貴哉を見つめた…
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