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この日、ガイル・バドラーは
サイラスに呼ばれて皇后キャロルが
密談に使用する温室に来ていた。
侍女や護衛騎士達は離れた所で
ガイルを見ていた。
サイラスが来た

「待たせてしまってすまない」

「いえ」

侍女が寄り茶を入れると再び離れた

「さぁ何から話しをしたらいいものか」

「わかっています。皇女殿下の事ですね」

「なぁガイル……」

「話しますよ」

「そうか、頼む」

「もう勘づいていると思いますが
アリーリア皇女殿下は前世の記憶が
あるのですね。俺にもあります」

「……それで?」

「俺は初代皇帝エドアルドです」

沈黙の中に異様な空気が流れる

「はははっ…そんなにハッキリと
言われると拍子抜けるな
正直に理解が追いつかないよ」

「そうですよね。
俺だって理解するのに時間がかかりましたから」

「何故アリーは死んだ?
どうして2人は蘇ったんだ?
わからない事が多すぎて戸惑うよ」

「今、俺に言えるのは
アリーにも前世の記憶があるって事
だけです」

「何故そう思った」

「俺を見て気を失ったからですよ」

「はぁ…そうか
で、ガイルはこれからどうしたいんだ
僕は君たちの経緯を知らないから
君たちとどう向き合えばいいのか
わからないんだ」

「話しますよ。時が来たらですが…」

「ふぅ、そうか
ならば待つしかないな」

サイラスは温室の天井を見上げながら
これは長期戦になりそうだな。
そう思いながら覚悟を決めた。


アリーリアはガイルと顔を合わせてから
眠りについていた。
既に1週間以上過ぎていた
両陛下は何度も話し合いを重ねた後
アリーリアに前世の記憶がある事以外を
王族に仕える護衛騎士や専属侍女
そして執事や秘書官に話す事を決め
大神官も同席して
「アリーリアは初代皇帝の妃の
生まれ変わりだ」
と告げた

周囲は驚きの声をあげて困惑したが
皆、改めて忠誠を誓い嵌合令に従った

アリーリアは深い夢の中に沈んでいる

「ここは…会議室よね、
何で私がここに居るのかしら?」

エドアルドは机に積み上げられた書類に
目を通しながら緊張した表情を見せている

大きなテーブルに広げられているのは
地図だ
アリーリアはそっと地図を覗き込んだ

「これは」

シャルパドからサーバに向かう矢印が
見えた

「まさか…」

アリーリアがエドアルドを見た時

扉が開いた

「失礼致します
準備が整いました。すぐに攻め込めます」

アリーリアも知っている
騎士団長のアガサ侯爵だった

「駄目よ…戦だなんて…何でよ」

アリーリアの声が届くはずも無く
夢は途切れた。

しばらくすると次の夢の様だった

髪を伸ばし後ろで長髪を結んだ
エドアルドがいる

「エド…」

疲れた表情のエドアルドは何かを
見つめている。

「話しかけているの?」

エドアルドの隣に立つと話しかけて
いたのは小さな額に描かれていた
アリーリアの肖像画だった

「?  何でよ…私に何が言いたいのよ」

戸惑うアリーリアは再び眠りについた

「うっ」

アリーリアが目覚めたのはガイルに
会ってから10日も過ぎた後だった

「お目覚めですか?
無事で何よりでございます」

目の前にパシーがいて
すぐに水を出してくれた

「ゆっくりお飲みくださいませ
10日も眠られていたのですよ」

「え?」

「後ほど両陛下にお目覚めをお伝えしますので
もう少しお休みください」

パシーはアリーリアの身体を拭く為の
準備を始めるとミュアを呼び
スープとジュースを運ぶ様に指示を出し
身体を拭き着替えを手伝ってくれた

そんなに長く眠っていたなんて…
それに…あの夢は何だったのかしら?

前世の、アリーリアが居ない前世の夢
アリーリアの知らない出来事

夢が何を伝えているのか
アリーリアはまだわかっていなかった。


アリーリアが眠っていた時
ガイルは大聖堂に出向いていた。

アリーリア…
やはり君には許してもらえないかな?
死を選ぶ程に失望させてしまったの
だから。
けれど俺は君の側で守りたいんだ…
君を追いかけた事も罪なのかな

ガイルが懺悔する姿を静かに見ていた
大神官はそっとその場を後にした。

アリーリアが目覚めた翌日には
家族で食事が出来る様になっていた

けれどアリーリアは異変を感じている

「あの、お母様…
私が眠っていた間に何かありましたか」

「ん?みんな心配していたわよ」

嫌、そうじゃなくて…
何というか…視線?空気?なのよね

「そうですよね申し訳ありませんでした」

「元気になって良かったわ。ふふっ」

……やっぱりなんか変
そう思ったが笑顔で誤魔化した

部屋に戻ったアリーリアは侍女達を
廊下に出すとエミーを呼んだ

「エミー」

「はい」 サッとアリーの前に現れた

「ねぇエミー、私が眠っている間に
何があったのかな?」

「両陛下が専属を集めアリーリア様が
先代アリーリア王妃殿下の生まれ変わりだと
伝えられました。
ですがこの件に関して皇帝命により
口外禁止となっております」

「え?ちょっと
エミー私に話して大丈夫なの?」

「私はアリーリア皇女殿下の影
私の主君は皇女殿下でございます」

「そ、そうだったわね?
もういいわ。ありがとう」

エミーは礼をすると消えた

アリーリアはエミーが消えた壁を
見ながらため息をついた。
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