初めまして、幼馴染殿

三月 深

文字の大きさ
上 下
17 / 20

17.予告

しおりを挟む
まじまじとカップケーキを見ていると、カップケーキの中に白い何かが入っているのが見えた。

摘まんで抜き出すと、どうやらそれは折り畳まれた紙らしい。

油が染み込んだ紙を指先で広げると、中には文字が。

『ナラギヒロトワカレテ』

奈良木ヒロと別れて?

いや、付き合ってないんだが。

というかカップケーキに食べれない物を仕込むなよ。

「うわぁっ!?」

ヒロの声に頭を上げると、高い金属音がした。

「どうした!?」

「こっ、これ…」と、床に落ちたそれを指差す。

見るとそこには、小さな紙切れと…カッターの刃。

「なんだこれ…?」

紙の切れ端をつかんで、持ち上げる。

『ワカレナイナラコロス』

…まじか。

明確な殺害予告だ。カッターの刃をハンカチで包んで拾い上げる。

私の方の紙と三つ合わせてポケットに押し込んだ。

よくある手だ。大抵は逆恨みだし、実害があるのはほんの一部。

だが、ヒロまで被害が及ぶとなると…。面倒だな。

するとヒロは不思議そうな顔をして私を見つめてきた。

「どうしたの、はるねちゃん。いつもなら『付き合ってない!』って怒鳴るとこでしょ?」

つい、ぽかんとする。いや、まぁ確かにそうだが…。

「お前、この状況でよくそんなこと言えるな」

笑えてきてしまった。

「だって、僕ははるねちゃんが好きだけど、まだ付き合ってないもん」

すごく真面目な顔をして私にそう言うヒロ。

「…そうだな、殺される義理がない。さぁ、残りのカップケーキを消費しよう」

私たちは笑って、カップケーキに手を伸ばした。

  ◆

その日、夜の八時頃に私たちは腹一杯になりながらカップケーキを全て食べきった。

「あー、おなかいっぱい!はるねちゃんはいつもあんななの?」

雨も降り止んで、私はヒロに送られながら帰路についた。

「まぁな。いつもは母さんと食べてるけど」
「ふうん…。何かちょっと妬けるなぁ…」

「僕だってもっと前から応援したかったー」と続ける。

「ていうか、本当に中学のジャージ借りちゃっていいのか?」
「うん、はるねちゃんの制服まだ湿ってるでしょ?」

ヒロの言う通り服はまだ若干湿って鞄に仕舞われている。

「んー…じゃあありがたく借りるな。明日返す」

「りょーかい!」と、ヒロが笑う。本っ当に犬っぽいな。

「でも、結局あのカッター入りカップケーキは誰がやったんだろうね?」
「そういうのが得意な知り合いに調べてもらう。一応ヒロは身の周りに気を付けろ」

無いとは思うが、本当に殺しに来るかもしれん。

「おっけー!はるねちゃんも気を付けてね!」

そう返事をしたところで、家の前につく。

「それじゃ、ここで」
「うん、また明日!」

家の扉が閉まるまで手を振るヒロに手を振り返して、私は家に帰った。

「ただいま~」
「おかえり~、今日遅かったじゃない」

リビングの方から声だけ返事をする母を気にしつつ二階の部屋から服をとってきて着ると、ヒロの運動着を洗濯機に放り込んで回した。

ハンガーに生乾きの制服をかけて、ポケットから携帯とカッター等の包まれたハンカチを出すと、たーこに電話を掛けた。

二コールでたーこが出る。

『おー、たこ三郎どうしたんだい!』
「誰がたこ三郎だ。急ぎの用事だ。頼めるか?」

数秒の沈黙。

『…何かあったんだね?もちろんだよ!』
「さすがたーこ様。じゃあ画像もあるから詳しいことはメールで」
『了解~!』

電話をプツリと切ってカメラモードをつける。

ハンカチで包んだカッターの刃と手紙の写真を撮って、メールに添付し、文面を興して送信した。

『犯人を見つけてほしい』というメッセージに『まかせて!』という頼もしい文章と共にタコの画像が送られてくるのも時間の問題だった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

お嬢様、お仕置の時間です。

moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。 両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。 私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。 私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。 両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。 新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。 私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。 海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。 しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。 海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。 しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。

カジュアルセックスチェンジ

フロイライン
恋愛
一流企業に勤める吉岡智は、ふとした事からニューハーフとして生きることとなり、順風満帆だった人生が大幅に狂い出す。

[R18] 激しめエロつめあわせ♡

ねねこ
恋愛
短編のエロを色々と。 激しくて濃厚なの多め♡ 苦手な人はお気をつけくださいませ♡

車の中で会社の後輩を喘がせている

ヘロディア
恋愛
会社の後輩と”そういう”関係にある主人公。 彼らはどこでも交わっていく…

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

孕ませねばならん ~イケメン執事の監禁セックス~

あさとよる
恋愛
傷モノになれば、この婚約は無くなるはずだ。 最愛のお嬢様が嫁ぐのを阻止? 過保護イケメン執事の執着H♡

マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子

ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。 Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。

処理中です...