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17.予告
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まじまじとカップケーキを見ていると、カップケーキの中に白い何かが入っているのが見えた。
摘まんで抜き出すと、どうやらそれは折り畳まれた紙らしい。
油が染み込んだ紙を指先で広げると、中には文字が。
『ナラギヒロトワカレテ』
奈良木ヒロと別れて?
いや、付き合ってないんだが。
というかカップケーキに食べれない物を仕込むなよ。
「うわぁっ!?」
ヒロの声に頭を上げると、高い金属音がした。
「どうした!?」
「こっ、これ…」と、床に落ちたそれを指差す。
見るとそこには、小さな紙切れと…カッターの刃。
「なんだこれ…?」
紙の切れ端をつかんで、持ち上げる。
『ワカレナイナラコロス』
…まじか。
明確な殺害予告だ。カッターの刃をハンカチで包んで拾い上げる。
私の方の紙と三つ合わせてポケットに押し込んだ。
よくある手だ。大抵は逆恨みだし、実害があるのはほんの一部。
だが、ヒロまで被害が及ぶとなると…。面倒だな。
するとヒロは不思議そうな顔をして私を見つめてきた。
「どうしたの、はるねちゃん。いつもなら『付き合ってない!』って怒鳴るとこでしょ?」
つい、ぽかんとする。いや、まぁ確かにそうだが…。
「お前、この状況でよくそんなこと言えるな」
笑えてきてしまった。
「だって、僕ははるねちゃんが好きだけど、まだ付き合ってないもん」
すごく真面目な顔をして私にそう言うヒロ。
「…そうだな、殺される義理がない。さぁ、残りのカップケーキを消費しよう」
私たちは笑って、カップケーキに手を伸ばした。
◆
その日、夜の八時頃に私たちは腹一杯になりながらカップケーキを全て食べきった。
「あー、おなかいっぱい!はるねちゃんはいつもあんななの?」
雨も降り止んで、私はヒロに送られながら帰路についた。
「まぁな。いつもは母さんと食べてるけど」
「ふうん…。何かちょっと妬けるなぁ…」
「僕だってもっと前から応援したかったー」と続ける。
「ていうか、本当に中学のジャージ借りちゃっていいのか?」
「うん、はるねちゃんの制服まだ湿ってるでしょ?」
ヒロの言う通り服はまだ若干湿って鞄に仕舞われている。
「んー…じゃあありがたく借りるな。明日返す」
「りょーかい!」と、ヒロが笑う。本っ当に犬っぽいな。
「でも、結局あのカッター入りカップケーキは誰がやったんだろうね?」
「そういうのが得意な知り合いに調べてもらう。一応ヒロは身の周りに気を付けろ」
無いとは思うが、本当に殺しに来るかもしれん。
「おっけー!はるねちゃんも気を付けてね!」
そう返事をしたところで、家の前につく。
「それじゃ、ここで」
「うん、また明日!」
家の扉が閉まるまで手を振るヒロに手を振り返して、私は家に帰った。
「ただいま~」
「おかえり~、今日遅かったじゃない」
リビングの方から声だけ返事をする母を気にしつつ二階の部屋から服をとってきて着ると、ヒロの運動着を洗濯機に放り込んで回した。
ハンガーに生乾きの制服をかけて、ポケットから携帯とカッター等の包まれたハンカチを出すと、たーこに電話を掛けた。
二コールでたーこが出る。
『おー、たこ三郎どうしたんだい!』
「誰がたこ三郎だ。急ぎの用事だ。頼めるか?」
数秒の沈黙。
『…何かあったんだね?もちろんだよ!』
「さすがたーこ様。じゃあ画像もあるから詳しいことはメールで」
『了解~!』
電話をプツリと切ってカメラモードをつける。
ハンカチで包んだカッターの刃と手紙の写真を撮って、メールに添付し、文面を興して送信した。
『犯人を見つけてほしい』というメッセージに『まかせて!』という頼もしい文章と共にタコの画像が送られてくるのも時間の問題だった。
摘まんで抜き出すと、どうやらそれは折り畳まれた紙らしい。
油が染み込んだ紙を指先で広げると、中には文字が。
『ナラギヒロトワカレテ』
奈良木ヒロと別れて?
いや、付き合ってないんだが。
というかカップケーキに食べれない物を仕込むなよ。
「うわぁっ!?」
ヒロの声に頭を上げると、高い金属音がした。
「どうした!?」
「こっ、これ…」と、床に落ちたそれを指差す。
見るとそこには、小さな紙切れと…カッターの刃。
「なんだこれ…?」
紙の切れ端をつかんで、持ち上げる。
『ワカレナイナラコロス』
…まじか。
明確な殺害予告だ。カッターの刃をハンカチで包んで拾い上げる。
私の方の紙と三つ合わせてポケットに押し込んだ。
よくある手だ。大抵は逆恨みだし、実害があるのはほんの一部。
だが、ヒロまで被害が及ぶとなると…。面倒だな。
するとヒロは不思議そうな顔をして私を見つめてきた。
「どうしたの、はるねちゃん。いつもなら『付き合ってない!』って怒鳴るとこでしょ?」
つい、ぽかんとする。いや、まぁ確かにそうだが…。
「お前、この状況でよくそんなこと言えるな」
笑えてきてしまった。
「だって、僕ははるねちゃんが好きだけど、まだ付き合ってないもん」
すごく真面目な顔をして私にそう言うヒロ。
「…そうだな、殺される義理がない。さぁ、残りのカップケーキを消費しよう」
私たちは笑って、カップケーキに手を伸ばした。
◆
その日、夜の八時頃に私たちは腹一杯になりながらカップケーキを全て食べきった。
「あー、おなかいっぱい!はるねちゃんはいつもあんななの?」
雨も降り止んで、私はヒロに送られながら帰路についた。
「まぁな。いつもは母さんと食べてるけど」
「ふうん…。何かちょっと妬けるなぁ…」
「僕だってもっと前から応援したかったー」と続ける。
「ていうか、本当に中学のジャージ借りちゃっていいのか?」
「うん、はるねちゃんの制服まだ湿ってるでしょ?」
ヒロの言う通り服はまだ若干湿って鞄に仕舞われている。
「んー…じゃあありがたく借りるな。明日返す」
「りょーかい!」と、ヒロが笑う。本っ当に犬っぽいな。
「でも、結局あのカッター入りカップケーキは誰がやったんだろうね?」
「そういうのが得意な知り合いに調べてもらう。一応ヒロは身の周りに気を付けろ」
無いとは思うが、本当に殺しに来るかもしれん。
「おっけー!はるねちゃんも気を付けてね!」
そう返事をしたところで、家の前につく。
「それじゃ、ここで」
「うん、また明日!」
家の扉が閉まるまで手を振るヒロに手を振り返して、私は家に帰った。
「ただいま~」
「おかえり~、今日遅かったじゃない」
リビングの方から声だけ返事をする母を気にしつつ二階の部屋から服をとってきて着ると、ヒロの運動着を洗濯機に放り込んで回した。
ハンガーに生乾きの制服をかけて、ポケットから携帯とカッター等の包まれたハンカチを出すと、たーこに電話を掛けた。
二コールでたーこが出る。
『おー、たこ三郎どうしたんだい!』
「誰がたこ三郎だ。急ぎの用事だ。頼めるか?」
数秒の沈黙。
『…何かあったんだね?もちろんだよ!』
「さすがたーこ様。じゃあ画像もあるから詳しいことはメールで」
『了解~!』
電話をプツリと切ってカメラモードをつける。
ハンカチで包んだカッターの刃と手紙の写真を撮って、メールに添付し、文面を興して送信した。
『犯人を見つけてほしい』というメッセージに『まかせて!』という頼もしい文章と共にタコの画像が送られてくるのも時間の問題だった。
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