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15.実食
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その目は悲しげに、捨てられた子犬のようになっていた。
もはや垂れ下がった犬耳と尻尾が見える。
「っ~!わかった、写真撮っていいから!ヒロ、お前も映れ!」
言った瞬間、花が咲くようにヒロが笑った。現金な奴だなぁ…。
ヒロは尻尾をパタパタ振りながら(そんな風に見える)私の元まで来た。
「はい、はるねちゃんこっちね!」
と、私の横に立ってカメラを構える。
「はいチーズ」の合図でシャッターが切られた。
ヒロが写真を確認している間にさっとカップケーキを取りに行く。
「ほらヒロ、もう満足しただろ。カップケーキ食べるぞ」
「はぁーい」
私はカップケーキを机の上に出しながら床に座った。
ヒロも向かいの床に座る。
「はい、いただきます」
「いただきます!」
横には、ゴミ分別のために可燃用とプラスチック類用の二種類のゴミ箱を用意。
二人の間には貰ったメッセージカード用の箱を置く。
「いいなヒロ?プラスチックの包みはこっち。カップケーキの皿とかはこっちの可燃。メッセージカードとかはここで、その他どうしたらいいかわからんものは相談しろ」
「アイアムマム!」
「よし、正解だ」
ヒロが言った通りに分別を進めていくのを見て、私も一つカップケーキに手を伸ばす。
手に取ったのは可愛らしい青色のリボンであしらわれたものだった。
メッセージカードに乗せられた丸文字に思わず顔がほころぶ。
『はるね先輩へ!船長役ステキでした!これからも応援してます!』
一読して箱の中に入れると、カップケーキを頬張った。
「うん、やっぱり美味いな」
「おいしいね!」
ヒロの方をみると、ヒロもまたカップケーキを食べている。
モゴモゴと口いっぱいに突っ込んで、今度はリスみたいだ。
「さぁ、この調子でどんどん食べるぞ!」
私は手元のカップケーキを頬張り、次のケーキを手に取った。
◆
それから、一時間半ほどした頃。
カップケーキ七十個中の五十一個目が今、ヒロの腹に消えた。
正直言って二人とも腹一杯だ。
「ねぇはるねちゃん。これ今日全部食べる必要あるかな…?」
水一杯のコップを私に渡して向かいにヒロが座る。
渡されたコップの水をぐいっと煽った。
「っはー。ヒロ、考えてみろ。九つクラスのある一学年で、一~四組でこれだぞ。明日は五~九組だぞ?」
言った瞬間、サーッとヒロの顔が青ざめる。
今日の感じのまま行くと、明日も同数来ると考えた方がいいだろう。
希望観測ならぬ絶望観測だ。
「さぁ、残り十九個、さっさと食うぞ!」
と、私はまた一個カップケーキを開ける。
ヒロもまた新しく一個手に取った。
「ん?何これ?」
その声にヒロの方をみると、手元には赤と白のリボンでごってごてにラッピングされたかなりサイズの大きいカップケーキがあった。
どうやら二つ入っているようだ。
「あ、これ、僕とはるねちゃんに一つずつあるみたい。えーっと…こっちがはるねちゃんかな?」
ポン、と手の上にカップケーキが乗せられる。
包みを開くと、ふわりと甘い香りがした。
中には『はるね先輩へ』とだけ書かれたカードが入っている。
一口頬張れば、芳ばしい紅茶の香りが広がる。
これ、本当に美味しいな。
もはや垂れ下がった犬耳と尻尾が見える。
「っ~!わかった、写真撮っていいから!ヒロ、お前も映れ!」
言った瞬間、花が咲くようにヒロが笑った。現金な奴だなぁ…。
ヒロは尻尾をパタパタ振りながら(そんな風に見える)私の元まで来た。
「はい、はるねちゃんこっちね!」
と、私の横に立ってカメラを構える。
「はいチーズ」の合図でシャッターが切られた。
ヒロが写真を確認している間にさっとカップケーキを取りに行く。
「ほらヒロ、もう満足しただろ。カップケーキ食べるぞ」
「はぁーい」
私はカップケーキを机の上に出しながら床に座った。
ヒロも向かいの床に座る。
「はい、いただきます」
「いただきます!」
横には、ゴミ分別のために可燃用とプラスチック類用の二種類のゴミ箱を用意。
二人の間には貰ったメッセージカード用の箱を置く。
「いいなヒロ?プラスチックの包みはこっち。カップケーキの皿とかはこっちの可燃。メッセージカードとかはここで、その他どうしたらいいかわからんものは相談しろ」
「アイアムマム!」
「よし、正解だ」
ヒロが言った通りに分別を進めていくのを見て、私も一つカップケーキに手を伸ばす。
手に取ったのは可愛らしい青色のリボンであしらわれたものだった。
メッセージカードに乗せられた丸文字に思わず顔がほころぶ。
『はるね先輩へ!船長役ステキでした!これからも応援してます!』
一読して箱の中に入れると、カップケーキを頬張った。
「うん、やっぱり美味いな」
「おいしいね!」
ヒロの方をみると、ヒロもまたカップケーキを食べている。
モゴモゴと口いっぱいに突っ込んで、今度はリスみたいだ。
「さぁ、この調子でどんどん食べるぞ!」
私は手元のカップケーキを頬張り、次のケーキを手に取った。
◆
それから、一時間半ほどした頃。
カップケーキ七十個中の五十一個目が今、ヒロの腹に消えた。
正直言って二人とも腹一杯だ。
「ねぇはるねちゃん。これ今日全部食べる必要あるかな…?」
水一杯のコップを私に渡して向かいにヒロが座る。
渡されたコップの水をぐいっと煽った。
「っはー。ヒロ、考えてみろ。九つクラスのある一学年で、一~四組でこれだぞ。明日は五~九組だぞ?」
言った瞬間、サーッとヒロの顔が青ざめる。
今日の感じのまま行くと、明日も同数来ると考えた方がいいだろう。
希望観測ならぬ絶望観測だ。
「さぁ、残り十九個、さっさと食うぞ!」
と、私はまた一個カップケーキを開ける。
ヒロもまた新しく一個手に取った。
「ん?何これ?」
その声にヒロの方をみると、手元には赤と白のリボンでごってごてにラッピングされたかなりサイズの大きいカップケーキがあった。
どうやら二つ入っているようだ。
「あ、これ、僕とはるねちゃんに一つずつあるみたい。えーっと…こっちがはるねちゃんかな?」
ポン、と手の上にカップケーキが乗せられる。
包みを開くと、ふわりと甘い香りがした。
中には『はるね先輩へ』とだけ書かれたカードが入っている。
一口頬張れば、芳ばしい紅茶の香りが広がる。
これ、本当に美味しいな。
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