初めまして、幼馴染殿

三月 深

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14.帰宅

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 「帰る!」

通学カバンとカップケーキいっぱいの紙袋、ついでにヒロ(付属のカバン付き)を持って教室を出る。

「えっと…君、ごめんね。少し急いで帰らなきゃいけなくなったから、また今度お話聞かせてもらえるかな?」
「は…はひ…」

頷いてくれた少女に礼を言って連絡先(ヒロのもの)を渡すと、私はヒロを引きずって下駄箱まで移動した。

「ヒーロー!起きろー!」

ぺしぺしと頬を叩くと、ヒロが「ん…む…」と目を開けた。

「あれ…はるねちゃん…?あの女は?」

起き抜けにそんなことを言うと、突然ハッとして

「はるねちゃん!あいつになにかされてない!?」

などと言い出す。しっかりと掴まれた肩から手をはずしつつ、私は立ち上がる。

「あのなぁヒロ。後輩の女の子に『女』とか『あいつ』とか言ってるとシメるぞ?」

握った拳をかざして見せる。と、ヒロも立ち上がった。

折り畳まれた長身が伸びて、私の前にでかい壁ができる。

「いいよ。はるねちゃんになら、殴られても」
「キモい」

覆い被さるヒロの腹にお望み通り拳をくれてやる。

「いって…。ほんっとはるねちゃんはフラグクラッシャーだなぁ…」

よろよろと歩きながらも何故かニコニコしている。

変態だ、変態。

靴を履いて、校舎の外に出た。

「ほら、帰るぞ!」
「ちょっと待ってよ~!」

私より女らしい声を出す変態と共に、私は家に帰ろうとしたのだが…。

  ◆

「大変だったねー、はるねちゃん。はい、タオル」
「あぁ、ありがとう」

ここはヒロの家。私たちは下校途中、酷く雨に降られた。

私は折りたたみ傘を持っていたがヒロは持っておらず、さらにカップケーキを死守したため、結局二人ともびしょ濡れになった。

仕方なく、一番近いヒロの家に転がり込んだわけだ。

「荷物は適当に置いちゃっていーよー」
「あぁ、わかった」

そこそこ濡れてしまったカバンをタオルで拭うと、壁に沿わせて置いた。

着替えを…と思ったが、週末でもないのでカバンの中に体操着などは入っていない。

仕方なくヒロに

「すまんが、着替えたいから服を貸してくれんか」

声をかける。

と、「えっ!?」と大音量の声が帰ってきた。

「どうした、ゴキブリでも出たか?」
「い、いや、そういうわけじゃないけど…」

ヒロは少しダンボールの中を漁ると「こっ、これでどう?」と紺色の服を差し出す。

「あぁありがとう」

「お、俺、部屋の外に出てるね!」とヒロが出て行ってしまったので、そこで着替える。

紺色の服をひらくとどうやらそれは中学校のジャージらしい。

ヒロは中学校時代も長身だったらしく、かなりぶかい。

着替え終わったところで「はるねちゃーん、入ってい~?」と声がかかった。

「いいぞ」と応えると、遠慮がちにドアが開いた。

ちらっとヒロが顔を覗かせる。

と思ったら、今度はスマホらしきものが出てきて…カシャッと鳴る音と光がはしった。

「お前、今写真撮ったろ?」

眉にシワを寄せて声をかけると、すごすごとスマホを持ったヒロが出てきた。

「写真撮るの…ダメ?」

クゥーン…と子犬の鳴き声の効果音でもつきそうな顔をするヒロ。

とても、それはもうとてもダメと言いづらい。だが…

「ダメだ。後で消しとけよ」

ていうか、こんな格好の写真なんぞ要らんだろ。

そう思ってヒロを見ると…。




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