初めまして、幼馴染殿

10.地図

「たからさがしのちず？」

紙にはそう書いてある。

すると、ヒロが近付いてきて、

「あ、そうそう。それだけ僕ら何なのか分からないんだよね」

「母さんに聞くとニヤニヤされるし」と付け足してヒロが言った。

「でもこの『たからさがしのちず』って字はどう見ても大人の字だよな？」

クレヨンなのは変わらないが、随分しっかりした字だ。

「ほら、これとか滑り台の絵だよね？子供はこんなの書けないと思うなぁ…」

指差して言うヒロの顔が、私の顔の真横にある。

「近い！」

迷わず投げとばす。

ヒロは見事にさっき自分で運び込んだ布団などの山に落ちた。

「いてて…」と、頭をかきながら起き上がる。

「突然人を投げちゃダメだよ、はるねちゃん…。…ていうか、僕のこと男として意識してくれてるんだ？」

ニヤニヤした顔がすごくムカつく。

「んなわけあるか、ボケ」

紙をたたんで、鞄に入れながら私はそう言って立った。

向かうは玄関。もうヒロのことなんて知るか。

私の後ろをヒロが子犬のごとくついてくる。

「それじゃあ私は帰るからな。明日忘れ物するなよ」

靴を履き、玄関ドアに手を掛けながら言う。

「アイアイサー！あれ、地図はどうするの？」
「サーは男だ馬鹿。アレは私も調べてみる」

ドアの取っ手を押して出ようとすると、何故かヒロが背後から私に覆い被さるように立っていた。

「泊まってってもいいんだよ…」

耳に響く低音の声が近くでなった。

だが。

「このドア押戸だからそこにいても意味がないんだがな」

ドアはヒロの体重も加わって軽く開く。

『マジか』の表情で固まるヒロを放って私は部屋から出る。

「じゃあまた明日～」

と満面の笑みでドアを閉めた。

その日、やり返せたこともあり、私はご機嫌で帰路についた。のだが。

もちろん母に「キスした！？手ぇ繋いだ！？」と散々聞かれ、『手を繋いだ』というのはあながち間違ってはいなくて、真っ赤になったのも当たり前のことである。