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十章

78.ここからは仲間として

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「話は飛んで昨夜のことだ。王妃殿とマシマは、エレナを仲間に引き入れたいと言ったらどうする?」
「「もちろん反対「ですが?」だが?」

ずいぶんと速い返答にミーシャの表情が固まる。

「だろうな、…だからだ。我が国に伝わる方法をとった」

様子をうかがうようにこちらを見ている王妃殿とマシマ。

ミーシャが蛇に睨まれたカエルのように固まっている。

「いわゆる主従契約だ。契約すれば、従者は主に逆らうことができなくなる。昨夜していたのはミーシャとエレナの主従契約だ」

ミーシャに、エレナを呼んでみろ、と声をかける。

ミーシャは神妙に頷くと

「エレン、私の傍に来て」

とエレナの居る部屋の扉に声をかけた。

すぐに扉が開き、エレナが現れた。

そのまま扉から一番離れたところに居るミーシャのもとまで行き、傅く。

「エレナは今、ミーシャに逆らうことはできん。確かめたいのなら己の目で確かめると良いさ」

手にもったティーカップを傾けて、少し冷めた紅茶に口をつける。

エレナがミーシャに逆らうか知りたいのなら、ミーシャに『反抗するな』と命令させて腕の一本でも切り落としてみればいい。

まぁそれでもミーシャの神通力を与えてもらえば切られた箇所などすぐ治るだろうが。

マシマと王妃様は互いに目配せをしてから、私の目をじっと見つめる。

「…嘘、ではないのだろうな。この様子では」
「でしょうね」

深くため息をつく二人。

「わかってもらえて助かるよ。それでだが…」
「わかっています。彼女をミーシャの側仕えに、でしょう?」

呆れたように言うマシマ。

まさか勘付かれているとは。

「敵であるエレナを再び傍に置くことで、相手を混乱させる。ミス・クロウの好みそうな手だな」

ニヤリと笑って王妃殿が言う。

これは、驚いた。

「…では、その様に願いたい。良いかな?」

予測が出来ているなら、結論も出ているだろう。

私がそう問うと

「あぁ、構わないよ」
「有事の際には肉の壁にするだけですから」

と涼しい顔をして厳しいことを言う王妃殿とマシマにエレナが震えている。

これもまた運命だな、と考えつつ無事にまとまりきったエレナの引き入れに思わず笑みがこぼれた。

「さぁ、ミーシャは力を消耗しているだろうし、自分の部屋に戻って休養に入るといい。詳しいことはまた今度の機会にするとしよう」

そう言って席を立つ。

「でしたらエレナ、いいえ、戻ってくるのならエレンね。今から私が一から教育し直しましょう」
「あぁそうだ。私もエレンに聞きたいことがいくつかあってなぁ。同行するよ」

笑ってるはずの二人の表情にエレナはぴしりと固まると、助けを求めるようにミーシャの方を見た。

だがミーシャは

「あー…ごめん、いってらっしゃい!」

とエレナに手を合わせる。

もちろん、主の命令は絶対だ。

エレナは

「ああぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

と濁声を上げながら二人に連れ去られていった。

「…じゃあ私もこれで」

と、ミーシャもそれについて部屋を出ていく。

あっという間に部屋には静けさが戻った。

「さて、あとは…」

旧友はいつまで眠りこけている気なのだろう。

うまいこと誤魔化しておいた、というのを伝えなければ。

きっと半分以上ホントのことじゃん!と怒られるに違いない。

そうほくそ笑みつつ、テトラの居る、エレナの寝室だった部屋のドアノブに手を掛ける。

「テトラ、」

中に入り、そう声を掛ける。

テトラは私が部屋を出たときと変わらずソファの上で眠っていた。

「起きろ、テトラ」

と軽く揺さぶるとのっそりと首を上げ、大きくあくびをするテトラ。

「ニャー?(ふわぁ、クローデン…?おはよう、僕どれだけ寝てた…?)」
「かなり寝てたぞ。マシマと王妃殿に説明をしておいたんだが…。……?」

テトラの様子がなにかおかしい。

何度も立ち上がろうとしては転んで、立ち上がろう転んでを繰り返している。

「ニ、ニャーオ……!(ね、ねぇどうしようクローデン…、前足が動かない…!)」
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