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九章

66.防衛編⑥<敵と味方>

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「ニャー……(どうなってるんだコレ……)」

ふと、そんな言葉が口から洩れる。

エルーズバッハの頭領もかなり圧されているようだ。

「ニャー!!(何をボーっとしとるお前ら!さっさと応戦せんかい!!)」

今にも崩れそうな老体に鞭打って、必死に俺たちに指示を出している。

周りのC班の仲間も俺自身も全力で戦っているが、勝ち目が無い。

当たり前だ。

ただでさえ犬神との戦いも互角なのに、魔族が追い打ちをかけてくるなんて……。

そもそもこの夜中の襲撃は予想外。

所詮生まれたばかりともいえるような下っ端神の俺の出来ることなんて限られている。

ただでさえ準備が出来てないのに……。

心が折れそうになった時、滑るように俺の横に来たのはエルーズバッハだった。

「ニャー!(ひよるな若造!見ろ、魔族が無差別に攻撃しとるおかげで犬もだいぶ減ったぞ!)」

ハッと顔を上げると、確かにかなり犬が減っている。

「ニャーオン!(お待たせ!B班、加戦する!)」

左の方を見れば、そんな咆哮と共にテトラ・アニャビスも来た。

自分の神通力を確かめる。

まだ、戦える。

俺は再び体に神通力をほとばしらせた。

 ◆

「ニャーオン!(お待たせ!B班、加戦する!)」

……ちょっと格好つけて登場してみたけど、結構ヤバい状態だな。

さすがにこの時間帯に魔族が来ることの対策は組めて無かった。

んー、見た感じ、魔族が見境なく攻撃するおかげで犬も魔族も減ってきたな。

ただ、全員疲れて来たからか何匹か逃げてミーシャの部屋に向かったようだ。

念のため、A班にテレパシを送る。

《A班、聞こえるか?》
《はい!》

若干呑気なハロルドの声が聞こえてくる。

《あのな、何匹かそっちに行ったと思う。しっかりミーシャを守ってね》
《本当ですか?全然来ませんけど……。あ、来ました》

プツリと念話が切れる。

応戦に入ったんだろう。

ていうか、ハロルドの様子からして、あの偽物ドアすごい効果あるな。

斜め右から剣で切りかかってきた人型の犬を避けて、頭を蹴り倒す。

「ニャー!!!(さぁ猫神、あと少しだ!倒すぞ!!!)」

それから約二時間後、僕らはボロボロのへとへとになりながら、無事勝利を記した。

 ◆

ギリギリの勝利から、鬼のような睡眠に全ての戦士たちが入った頃。

私は自室の、エレナの病室でもハロルドの地下室とも繋がっていない、四つ目の扉に手を掛けた。

キィ……と軋むドアの向こう側にあるのは、沢山の木々。

「これで良かったのかよ、お前の方もダメージすごいだろ……」

石の上に腰かけ、唇を噛みながら魔族特有の黒い角を避けて髪をなでる男。

「いい、犬をつぶすのが最優先だからな」

その為ならなんだってする。

ただ、それだけだ。

「ただ、こんなことが魔族にばれたら大スキャンダルだな、魔王の三男、メイチェル・スワイトよ」

男……メイチェル・スワイトは極まりの悪そうな顔をして、私の顔を睨む。

「お前こそいいのかよ、猫神三将が一柱、クローデン・クラウスともあろう者が魔族と裏取引なんかしてて」
「貴様に言えたことではないだろう。あんなものに釣られて…」

クスクスと笑うと、メイチェル・スワイトは思春期の子供の様に顔を赤らめた。

「いいから!約束のブツは持ってきたんだろうな!?」
「十五枚だ。今回はよくやった」

警戒しているメイチェル・スワイトの差し出された右手に茶封筒を乗せる。

早速中身を出して確認するメイチェル・スワイトに

「次回の仕事はまた後日連絡する」

と言って、私は部屋に戻った。
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